13 / 20
第13話 ついに開いたおすすめルート!
しおりを挟む
不本意ながら、王子ルートに両足を突っ込んでいる状態のメリルは、その王子から逃げるため、旅行に来ていた。屋敷にいては、またオーランドの電撃訪問を食らう可能性があったからだ。何としてもこれ以上の深入りは避けたいメリルは、リーベルトの提案に「行く!」と即答した。そして今回の旅の目的は、もう一つあった。実はこちら目的の方が重要だった。
それは2日前に遡る。
部屋で読書をしていたメリルに外出から帰ってきたリーベルトが、突然提案してきた。旅行に行くぞと・・・
突然の話にメリルが理由を聞くと、ついに隣国王子ルートが始まると言う。
「それは本当なの?」
『ああ、間違いないぞ。ネズミ仲間が教えてくれたんだ。今年のヌノリア地方の月祭りが3日後にあるてっな』
リーベルトの話にメリルは「ヌノリア地方の月祭り?」と首を傾げたが、エリーは「まぁ!」と主と正反対の反応を見せる。メリルの反応にリーベルトは、ため息をついた。
『ルーは、知らないのか?結構有名な祭りのはずだぞ』
「そうですよ、お嬢様!ヌノリアの月祭りと言ったら、数年に一度の奇跡の祭りと言われてる貴重な催しなんですよ」
「あー、あれね。思い出したわ。数年に一度だから、忘れてたのよ」
思い出したフリのメリルは、疑いの目を受けつつ「それで?そのお祭りと隣国の王子がどう結びつくのよ」と尋ねる。そして、その疑問に答えるため、リーベルトはゆっくりと語りだした。
ヌノリア地方というのは、ここデュラハン王国の南の端にあった。王都から馬車で丸一日の距離だ。その国境は、隣国マレフィク王国に接しており、リーベルトオススメのルートは、このマレフィクの王子ルートだった。そして、リーベルトによると三日後にある珍しい月祭りを王子が訪れ、ヒロインと偶然出会いこのルートがスタートするそうだ。
「そういえば今更なんだけど、もし・・もしもよ、ルトのおすすめ通りに上手くいったら、私はマレフィクの王子妃になるってことよね」
『何だよ。不安なのか?それとも不満なのか?』
「違うわよ。私なら妃だろうが、王様だろうが、怖いものはないわ。ただそうなったら、この国にはいられないなって思っただけよ」
「お嬢様、王様は流石に無理ですよ」
『いや、エリー。分からないぞ。ルーなら、マレフィクの王を差し置いて、周囲が気付く前に治世してるかもしれないぞ』
「やだもう・・・二人してなによ。私だって立場はわきまえるわよ。ただ、王子や王が不甲斐なかったら、治めてみるのも悪くないわね」
『ルーが治める国は、楽しそうだよな』
「フフッ・・実はちょっと自信あるのよね」
そんな会話を繰り広げたメリルたちは、翌日には王都をたち、翌日にはヌノリアに到着した。流石に貴重な祭りとあって、街は人で溢れていた。宿は偶然にもエリーの知り合いがこの街に別邸を所有しており、そこに泊まることになっていた。
別邸に到着したメリルたちは、リーベルトを囲んで早速作戦会議を開く。何と言っても、明日に迫った重要な日。失敗は許されない。
エリーは「お嬢様のためなら!」と鼻息が荒い。そしてリーベルトは『やっと俺の腕の見せ所だな』とやる気満々だ。さらに当のメリルは、至って冷静に見える。しかし、彼女はここへきて心に葛藤を抱えていた。
リーベルトから唯一自分が幸せになれる道だと勧められたこの道が本当に幸せなのだろうかと・・
これ以外の道は不幸になると思い込んでいたが、誰の手も取らない選択をすれば、実はメリル自身が思う幸せを掴むことができるのではないかと・・
ゲームの強制力なんてものは、ないのかもしれないと・・
実際にオーランドのルートは、ゲーム以外のことが起こっており、彼女が迷うのも無理はなかった。しかし、やる気充分の二人を前にそれを明かせるほど、メリルは空気が読めない人間ではない。メリルは胸に生まれたこの想いを抱えたまま、明日を迎えるのだった。
いよいよ迎えた当日、祭りのメインは月が昇る夜だったが、出会いはその前、日中だ。朝からメリルは、エリーの手によって磨かれていた。張り切るエリーにメリルは言う。
「エリー、そんなに頑張らなくてもいいわよ」
「何をおっしゃるんですか。お嬢様を磨き上げるのは、私の役目であり、楽しみでもあるんですよ。それに王子様との出会いが待っていると分かっているのに、手を抜く侍女なんておりませんよ」
メリルは内心ため息をつくと、大人しく従うことに決めた。そして「できました!」と満足気なエリーのセリフが聞こえると、そこにはいつもより数段美しく磨かれた公爵令嬢メリルが出来上がっていた。
リーベルトにお披露目すると『・・悪くねえな』と照れる様子を見せた。何故、リーベルトが照れるのか謎だったが、メリルは「それじゃあ、行くわよ・・こういう時は、何て言うのが盛り上がるかしら」と言う。するとリーベルトは、エリーの鞄から顔を出し、言った。
『隣国王子ルートスタート!』
それは2日前に遡る。
部屋で読書をしていたメリルに外出から帰ってきたリーベルトが、突然提案してきた。旅行に行くぞと・・・
突然の話にメリルが理由を聞くと、ついに隣国王子ルートが始まると言う。
「それは本当なの?」
『ああ、間違いないぞ。ネズミ仲間が教えてくれたんだ。今年のヌノリア地方の月祭りが3日後にあるてっな』
リーベルトの話にメリルは「ヌノリア地方の月祭り?」と首を傾げたが、エリーは「まぁ!」と主と正反対の反応を見せる。メリルの反応にリーベルトは、ため息をついた。
『ルーは、知らないのか?結構有名な祭りのはずだぞ』
「そうですよ、お嬢様!ヌノリアの月祭りと言ったら、数年に一度の奇跡の祭りと言われてる貴重な催しなんですよ」
「あー、あれね。思い出したわ。数年に一度だから、忘れてたのよ」
思い出したフリのメリルは、疑いの目を受けつつ「それで?そのお祭りと隣国の王子がどう結びつくのよ」と尋ねる。そして、その疑問に答えるため、リーベルトはゆっくりと語りだした。
ヌノリア地方というのは、ここデュラハン王国の南の端にあった。王都から馬車で丸一日の距離だ。その国境は、隣国マレフィク王国に接しており、リーベルトオススメのルートは、このマレフィクの王子ルートだった。そして、リーベルトによると三日後にある珍しい月祭りを王子が訪れ、ヒロインと偶然出会いこのルートがスタートするそうだ。
「そういえば今更なんだけど、もし・・もしもよ、ルトのおすすめ通りに上手くいったら、私はマレフィクの王子妃になるってことよね」
『何だよ。不安なのか?それとも不満なのか?』
「違うわよ。私なら妃だろうが、王様だろうが、怖いものはないわ。ただそうなったら、この国にはいられないなって思っただけよ」
「お嬢様、王様は流石に無理ですよ」
『いや、エリー。分からないぞ。ルーなら、マレフィクの王を差し置いて、周囲が気付く前に治世してるかもしれないぞ』
「やだもう・・・二人してなによ。私だって立場はわきまえるわよ。ただ、王子や王が不甲斐なかったら、治めてみるのも悪くないわね」
『ルーが治める国は、楽しそうだよな』
「フフッ・・実はちょっと自信あるのよね」
そんな会話を繰り広げたメリルたちは、翌日には王都をたち、翌日にはヌノリアに到着した。流石に貴重な祭りとあって、街は人で溢れていた。宿は偶然にもエリーの知り合いがこの街に別邸を所有しており、そこに泊まることになっていた。
別邸に到着したメリルたちは、リーベルトを囲んで早速作戦会議を開く。何と言っても、明日に迫った重要な日。失敗は許されない。
エリーは「お嬢様のためなら!」と鼻息が荒い。そしてリーベルトは『やっと俺の腕の見せ所だな』とやる気満々だ。さらに当のメリルは、至って冷静に見える。しかし、彼女はここへきて心に葛藤を抱えていた。
リーベルトから唯一自分が幸せになれる道だと勧められたこの道が本当に幸せなのだろうかと・・
これ以外の道は不幸になると思い込んでいたが、誰の手も取らない選択をすれば、実はメリル自身が思う幸せを掴むことができるのではないかと・・
ゲームの強制力なんてものは、ないのかもしれないと・・
実際にオーランドのルートは、ゲーム以外のことが起こっており、彼女が迷うのも無理はなかった。しかし、やる気充分の二人を前にそれを明かせるほど、メリルは空気が読めない人間ではない。メリルは胸に生まれたこの想いを抱えたまま、明日を迎えるのだった。
いよいよ迎えた当日、祭りのメインは月が昇る夜だったが、出会いはその前、日中だ。朝からメリルは、エリーの手によって磨かれていた。張り切るエリーにメリルは言う。
「エリー、そんなに頑張らなくてもいいわよ」
「何をおっしゃるんですか。お嬢様を磨き上げるのは、私の役目であり、楽しみでもあるんですよ。それに王子様との出会いが待っていると分かっているのに、手を抜く侍女なんておりませんよ」
メリルは内心ため息をつくと、大人しく従うことに決めた。そして「できました!」と満足気なエリーのセリフが聞こえると、そこにはいつもより数段美しく磨かれた公爵令嬢メリルが出来上がっていた。
リーベルトにお披露目すると『・・悪くねえな』と照れる様子を見せた。何故、リーベルトが照れるのか謎だったが、メリルは「それじゃあ、行くわよ・・こういう時は、何て言うのが盛り上がるかしら」と言う。するとリーベルトは、エリーの鞄から顔を出し、言った。
『隣国王子ルートスタート!』
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
263
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる