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第3章
第168話 リリス14歳 癒しの声
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ちょこんと立っているメイルは、金色の瞳をリリスに向けていた。その存在に気付いたディファナが馬鹿にするような笑みを浮かべて言った。
「おやっ。お前は私の言い付けを守れなかった出来損ないの聖獣じゃないの。何しに来たの?お前如きが何かできると思ってるの?まったく笑止千万だね」
言葉の分からないメイルは、ディファナの言葉に反応することなくリリスから視線を外さない。リリスとネージュも突然姿を現したメイルを見つめ、動かなかった。メイルに相手にされないディファナは少し苛立った様子で再び口を開きかけたその時、ヘンリーたちも驚く行動をメイルがした。突然、鳴きだしたのだ。
ヒュールルルル・・・ヒュールルルルル・・・ヒューールルル・・
その声は、とても澄み切った声だった。そして夜の闇に沈む森に響き渡った。ヘンリーたちは初めて聞いたメイルの声に思わず聞き惚れている。その鳴き声は止むことなく、続いた。
ディファナは忌々しそうな視線をメイルへ向けた。そして「止めなさいっ!鬱陶しいのよっ!」と叫ぶと、メイルへ魔法を放った。しかしその魔法が届くより先にヘンリーの身体がメイルの前で壁となった。ディファナが叫んだ時に嫌な予感がしたヘンリーの咄嗟の行動だった。ヘンリーは思わず目を瞑り、魔法の衝撃を覚悟した。しかし、それはやって来なかった。恐る恐る目を開けると、目の前にユラユラと揺れるベールのような壁があった。メイルが発動した防御壁だった。メイルを見ると、変わらず鳴いていた。
「メイル、守ってくれたんだね。ありがとう」
ヘンリーはそうお礼を言うと、笑顔と優しい眼差しをメイルへ向けた。
「このっ・・出来損ないがっ!」
先程までの余裕は消え、怒りにワナワナと体を震わせたディファナが再び魔法を放とうとした時、悶える声が辺りに響いた。
うぅぅ・・あぁぁぁ・・・
声の主はリリスだった。顔を歪ませ、苦しそうに頭を抱えている。ヘンリーは彼女に駆け寄ろうとする。しかし防御壁に遮られ、動かことができない。スタイラスとアシュリーに目をやると、二人は呆然とリリスを見ていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(誰の声?・・苦しい・・・・頭が・・・痛い・・割れそう・・・・・この声・・のせいね・・・誰よ・・・・)
あぁぁぁぁ・・うぁぁ・・・
(お願い・・やめて・・・・ホントに苦しい・・・聞きたく・・ない・・・私・・壊れちゃう・・・)
くぅぅ・・・・うぅぅぅぅぅわぁぁ・・
(この声・・嫌だ・・・本当にやめて・・・・嫌・・・・・・・でも・・・聞かなくちゃ・・いけない・・・逃げたら・・・いけない・・気がする・・心がそう・・言ってる・・・誰?・・私を呼んでるのは・・・・)
ヒュールルル・・ルルルヒュールル・・・
(呼んでる・・・この声が私を・・呼んでる・・・きれいな声・・心が・・・・洗われる・・満たされてく・・・私・・・・・・帰らなくちゃ・・・)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「リリィ!」
「リリス嬢戻ってこい!」
ヘンリーたちが叫ぶ中、リリスの様子に変化が。苦しそうな表情が徐々に緩んできた。
「そうだよ!リリィ!みんな待ってるから戻っておいで!」
そして程なくして、彼女の瞳には生気が、頬には赤みが戻ってきた。
「・・・・・あぁぁ・・・ぁ・・私・・・何して・・・ヘンリー・・」
そう呟いたリリスはヘンリーと視線が交差する。「リリィ・・良かった・・・」と声にしたヘンリーは大きく息を吐いた。
その時「ネージュが・・」というアシュリーの声に目線を向けると、ネージュの真っ黒な姿は消え去り、元の白い毛並みの姿に戻っていた。
気が付くと、いつの間にかメイルの鳴き声は止んでいた。
「おやっ。お前は私の言い付けを守れなかった出来損ないの聖獣じゃないの。何しに来たの?お前如きが何かできると思ってるの?まったく笑止千万だね」
言葉の分からないメイルは、ディファナの言葉に反応することなくリリスから視線を外さない。リリスとネージュも突然姿を現したメイルを見つめ、動かなかった。メイルに相手にされないディファナは少し苛立った様子で再び口を開きかけたその時、ヘンリーたちも驚く行動をメイルがした。突然、鳴きだしたのだ。
ヒュールルルル・・・ヒュールルルルル・・・ヒューールルル・・
その声は、とても澄み切った声だった。そして夜の闇に沈む森に響き渡った。ヘンリーたちは初めて聞いたメイルの声に思わず聞き惚れている。その鳴き声は止むことなく、続いた。
ディファナは忌々しそうな視線をメイルへ向けた。そして「止めなさいっ!鬱陶しいのよっ!」と叫ぶと、メイルへ魔法を放った。しかしその魔法が届くより先にヘンリーの身体がメイルの前で壁となった。ディファナが叫んだ時に嫌な予感がしたヘンリーの咄嗟の行動だった。ヘンリーは思わず目を瞑り、魔法の衝撃を覚悟した。しかし、それはやって来なかった。恐る恐る目を開けると、目の前にユラユラと揺れるベールのような壁があった。メイルが発動した防御壁だった。メイルを見ると、変わらず鳴いていた。
「メイル、守ってくれたんだね。ありがとう」
ヘンリーはそうお礼を言うと、笑顔と優しい眼差しをメイルへ向けた。
「このっ・・出来損ないがっ!」
先程までの余裕は消え、怒りにワナワナと体を震わせたディファナが再び魔法を放とうとした時、悶える声が辺りに響いた。
うぅぅ・・あぁぁぁ・・・
声の主はリリスだった。顔を歪ませ、苦しそうに頭を抱えている。ヘンリーは彼女に駆け寄ろうとする。しかし防御壁に遮られ、動かことができない。スタイラスとアシュリーに目をやると、二人は呆然とリリスを見ていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(誰の声?・・苦しい・・・・頭が・・・痛い・・割れそう・・・・・この声・・のせいね・・・誰よ・・・・)
あぁぁぁぁ・・うぁぁ・・・
(お願い・・やめて・・・・ホントに苦しい・・・聞きたく・・ない・・・私・・壊れちゃう・・・)
くぅぅ・・・・うぅぅぅぅぅわぁぁ・・
(この声・・嫌だ・・・本当にやめて・・・・嫌・・・・・・・でも・・・聞かなくちゃ・・いけない・・・逃げたら・・・いけない・・気がする・・心がそう・・言ってる・・・誰?・・私を呼んでるのは・・・・)
ヒュールルル・・ルルルヒュールル・・・
(呼んでる・・・この声が私を・・呼んでる・・・きれいな声・・心が・・・・洗われる・・満たされてく・・・私・・・・・・帰らなくちゃ・・・)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「リリィ!」
「リリス嬢戻ってこい!」
ヘンリーたちが叫ぶ中、リリスの様子に変化が。苦しそうな表情が徐々に緩んできた。
「そうだよ!リリィ!みんな待ってるから戻っておいで!」
そして程なくして、彼女の瞳には生気が、頬には赤みが戻ってきた。
「・・・・・あぁぁ・・・ぁ・・私・・・何して・・・ヘンリー・・」
そう呟いたリリスはヘンリーと視線が交差する。「リリィ・・良かった・・・」と声にしたヘンリーは大きく息を吐いた。
その時「ネージュが・・」というアシュリーの声に目線を向けると、ネージュの真っ黒な姿は消え去り、元の白い毛並みの姿に戻っていた。
気が付くと、いつの間にかメイルの鳴き声は止んでいた。
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