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第3章
第170話 リリス14歳 覚醒2
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竜巻をかわし、再び炎の竜巻を起こそうとするリリス。しかしそれはできなかった。なぜならディファナが出した黒い魔物が襲ってきたからだ。更にディファナは、黒い矢も放ってきた。ネージュが向かってくる魔物を相手にする。しかし次々と襲ってくる魔物の数にネージュだけでは対応しきれず、リリスたちにも飛びかかってきた。飛んでくる矢と獣を避けるが、これではあっという間に体力を奪われてしまう。リリスはヘンリーたちの側まで下がると、地面に手を付け「ダージス!」と口にした。すると大地から炎の壁が現れた。さらに立ち上がり、手をかざすとその前に防御壁を作り上げた。リリスたちを囲うように作られた壁に触れた敵は、次々と消えていく。その様子を見ていたアシュリーが壁を見上げる。それは高く厚く燃えていた。
「防御壁なんていつ使えるようになったのさ」
「本当だよ。僕だって、まだ無理。魔力もすごいし、リリィには驚かされてばかりだ」
「夢中にやったから、よく分からないの。自分でも驚いてる。でもネージュとメイルのおかげなのは確かね」
そう言ってリリスは足元の聖獣へと微笑んだ。
「それより・・・」
そう言ったスタイラスの視線の先には、ディファナが立っていた。壁を挟んで対峙する両者。ディファナは射抜くような眼差しを向けている。「ここからどうする?」とアシュリーが皆を見回し、聞いた。
「先生たちが来るまで、この中に居られるならそうしたいことろだけど、無理かも・・」
その言葉の通りディファナは右手を上げ、大きな黒い塊を作っている。そしてあっという間にそれをこちらへ投げてきた。塊が壁にぶつかる衝撃がこちらの空気を震わせる。壁と塊は、拮抗しているようだった。リリスは目を閉じ、壁に手をかざすと、集中し始めた。彼女の手から魔力が壁へと注がれているのが分かる。そのせいか黒い塊は、徐々に小さくなっていた。しかしディファナも負けてはいられない。次々と黒い塊を壁へと投げてきて、壁よりも塊のほうが圧倒し始めた。その様子に「逃げるか?」とスタイラスが聞く。アシュリーが「どこに?」と質問を返す。
「みんなで一斉に自分のできる最大魔法をディファナに向けて放つっていうのは?」
少し思案したヘンリーが提案する。スタイラスたちが顔を見合わせたその時、リリスがひとこと言った。
「あっ、壊れるっ」
そのセリフの後すぐに壁にはヒビが入り、黒い塊が迫ってきた。そしてあっという間にリリスたちを守っていた炎は消え去り、壁は粉々に砕け散った。リリスたちの目前に黒い塊が迫る。ヘンリーは前に立つリリスの腕を掴むと、後ろへ強引に引き彼女の身体を押した。
みんなから離れてしまう中、リリスはヘンリーへと手を伸ばす。しかし彼は微笑むだけで、その手を取らなかった。大好きな彼から遠ざかるリリスの瞳にヘンリー、スタイラス、アシュリーの姿が映る。その表情は皆優しい笑顔だった。
「ダメ・・・ 」
彼らに迫る黒い塊にリリスは心臓がギュッと掴まれる感覚を感じた。溢れる涙で視界がぼやける中、彼女は精一杯の魔力を振り絞り、塊へ魔法を放つ。その反動でリリスの身体は地面の上へと叩きつけられた。痛む身体を起こそうとした時、魔法がぶつかりあった衝撃波が襲ってきた。
「きゃっ・・」
再び地面に身体を打ち付けるリリス。意識が朦朧とするが、ヘンリーたちの無事を確かめようと顔を上げる。そして彼らのいた方を見ると、ディファナが笑って立っていた。
「みんな・・・」
そう呟いたリリスが視線をディファナの足元へ向けると、そこにヘンリーたちの身体が横たわっていた。リリスはその光景に一瞬で心臓が萎縮するような感覚に襲われ、呼吸が荒くなる。
(嘘・・・ヘンリー・・スタイラス様・・・アシュリー様・・・・守れなかったの・・・私が巻き込んだ・・私が・・みんなを・・・・巻き込んだ・・)
「フフッ・・馬鹿よね。自分の身より貴女を助けるなんて。惚れた弱みってやつ?でもさぁ、死んじゃったらおしまいなのにね」
ディファナはそう言うと、ヘンリーの髪を掴んだ。引き上げられた彼の整った顔は、黒く汚れており、無表情だった。
側にいたネージュがディファナに飛びかかるが、魔女の視線を受けるとその体は弾き飛ばされた。飛ばされた体は木に体を打ち付けると、地面に落ち、ぐったりとした。
(嗚呼・・・なんてこと・・私のせい・・・違う、ディファナのせい・・・でも巻き込んだのは私・・・・でも・・ディファナが・・)
リリスの中で何かが引き裂かれた瞬間だった。
「防御壁なんていつ使えるようになったのさ」
「本当だよ。僕だって、まだ無理。魔力もすごいし、リリィには驚かされてばかりだ」
「夢中にやったから、よく分からないの。自分でも驚いてる。でもネージュとメイルのおかげなのは確かね」
そう言ってリリスは足元の聖獣へと微笑んだ。
「それより・・・」
そう言ったスタイラスの視線の先には、ディファナが立っていた。壁を挟んで対峙する両者。ディファナは射抜くような眼差しを向けている。「ここからどうする?」とアシュリーが皆を見回し、聞いた。
「先生たちが来るまで、この中に居られるならそうしたいことろだけど、無理かも・・」
その言葉の通りディファナは右手を上げ、大きな黒い塊を作っている。そしてあっという間にそれをこちらへ投げてきた。塊が壁にぶつかる衝撃がこちらの空気を震わせる。壁と塊は、拮抗しているようだった。リリスは目を閉じ、壁に手をかざすと、集中し始めた。彼女の手から魔力が壁へと注がれているのが分かる。そのせいか黒い塊は、徐々に小さくなっていた。しかしディファナも負けてはいられない。次々と黒い塊を壁へと投げてきて、壁よりも塊のほうが圧倒し始めた。その様子に「逃げるか?」とスタイラスが聞く。アシュリーが「どこに?」と質問を返す。
「みんなで一斉に自分のできる最大魔法をディファナに向けて放つっていうのは?」
少し思案したヘンリーが提案する。スタイラスたちが顔を見合わせたその時、リリスがひとこと言った。
「あっ、壊れるっ」
そのセリフの後すぐに壁にはヒビが入り、黒い塊が迫ってきた。そしてあっという間にリリスたちを守っていた炎は消え去り、壁は粉々に砕け散った。リリスたちの目前に黒い塊が迫る。ヘンリーは前に立つリリスの腕を掴むと、後ろへ強引に引き彼女の身体を押した。
みんなから離れてしまう中、リリスはヘンリーへと手を伸ばす。しかし彼は微笑むだけで、その手を取らなかった。大好きな彼から遠ざかるリリスの瞳にヘンリー、スタイラス、アシュリーの姿が映る。その表情は皆優しい笑顔だった。
「ダメ・・・ 」
彼らに迫る黒い塊にリリスは心臓がギュッと掴まれる感覚を感じた。溢れる涙で視界がぼやける中、彼女は精一杯の魔力を振り絞り、塊へ魔法を放つ。その反動でリリスの身体は地面の上へと叩きつけられた。痛む身体を起こそうとした時、魔法がぶつかりあった衝撃波が襲ってきた。
「きゃっ・・」
再び地面に身体を打ち付けるリリス。意識が朦朧とするが、ヘンリーたちの無事を確かめようと顔を上げる。そして彼らのいた方を見ると、ディファナが笑って立っていた。
「みんな・・・」
そう呟いたリリスが視線をディファナの足元へ向けると、そこにヘンリーたちの身体が横たわっていた。リリスはその光景に一瞬で心臓が萎縮するような感覚に襲われ、呼吸が荒くなる。
(嘘・・・ヘンリー・・スタイラス様・・・アシュリー様・・・・守れなかったの・・・私が巻き込んだ・・私が・・みんなを・・・・巻き込んだ・・)
「フフッ・・馬鹿よね。自分の身より貴女を助けるなんて。惚れた弱みってやつ?でもさぁ、死んじゃったらおしまいなのにね」
ディファナはそう言うと、ヘンリーの髪を掴んだ。引き上げられた彼の整った顔は、黒く汚れており、無表情だった。
側にいたネージュがディファナに飛びかかるが、魔女の視線を受けるとその体は弾き飛ばされた。飛ばされた体は木に体を打ち付けると、地面に落ち、ぐったりとした。
(嗚呼・・・なんてこと・・私のせい・・・違う、ディファナのせい・・・でも巻き込んだのは私・・・・でも・・ディファナが・・)
リリスの中で何かが引き裂かれた瞬間だった。
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