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第3章
第177話 リリス14歳 闘いの末に
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私たちの目の前で土の球体に囚われた魔女が幼子のように泣いていた。
「ごめんなさぁい・・・もう悪いことしないから、許してぇぇ」
どうしてこうなったのか・・それは遡ること一時間前・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
外が静かになったことに気付いたアルミーダが、結界を解いた。満足気な顔で佇むアルバスと視線を交わしたリリスは、彼に走り寄る。
「先生!お怪我はありませんか?ディファナは?」
リリスの問いにアルバスは微笑むと、顔を横へ向けた。その視線の先には、土の球体があった。リリスが中を覗くと、ディファナが座り込んでいる。リリスと目線が合った彼女は睨みつけると、悪態をつき始めた。
「化け物!魔女は私じゃない!お前だ!・・お前はおかしい!変だ!お前に関わると、みんな不幸になるんだ!」
「いい加減にしろっ!!」
その声にリリスが振り返ると、皆を引き連れて後からやって来たヘンリーが怒りをあらわにしていた。それから、一瞬で甘い雰囲気をまとった彼はリリスの腰に手を回し引き寄せると、頬に軽くキスを落とした。突然のキスに驚いたリリスは、頬に手を当てヘンリーの顔を見る。その表情は、驚きと恥ずかしさでいっぱいだった。「みっ、みんながいるのに・・」と口をパクパクさせている。そんな彼女の様子を気にすることなく、ヘンリーは再び怒りのオーラを纏うと、ディファナに言った。
「いつまでそうやって意地を張ってるんだ?みんなを不幸にしてるのは、お前だろう。寂しいんだろう。さっき自分で認めたじゃないか」
「うるさい、うるさい、うるさーい!認めてない!そんな事、私は絶対に認めない!」
ディファナの反論を聞き流したヘンリーが、さらに言葉を続ける。
「愛する人に先に逝かれたんだろう?寂しくてアルミーダさんにちょっかいを出していたんだろう?」
僅かに眉を釣り上げたアルミーダが「なんだい・・お前、好きな人が居たのかい?」と聞いた。それにディファナは答えず、後ろを向いた。何とも子供のような態度に皆は苦笑している。そんな中、アルバスが口を開いた。
「なぜ彼女に執拗に絡んできたんだ?聖獣をけしかけたり、意味深な手紙まで残して」
ディファナは後ろを向いたままピクリともせず、何も言わない。小さくため息をついたリリスが口を開いた。
「あっ、それならさっき彼女から聞かされました。どうやらアルミーダさんを見ていて、私の存在を偶然見つけたようです。それで・・私の中にある前世の魂に気付いたと。
私は生まれ変わりで、前世の女の子が大好きだった物語に出てくる登場人物の悪役令嬢だそうです・・・ミズキ・・それが前世での私の名前です。これは前世の自分に会って教えてもらいました」
リリスの口から紡ぎ出される言葉にヘンリーたちは頷き、そして新たな真実に驚いた。そしてアルバスと顔を見合わせたアルミーダが言った。
「まさか前世の魂だったとはねえ。魂が二重には見えたが、前世とは・・・いやいや・・驚いた」
「えぇ、本当に。私が夢で見ていたのは、前世の自分と大好きだった物語の話みたいで・・・」
アリーナも次々と聞かされる話の内容に驚きを隠さなかったが、それより狼狽えていたのはエリーゼだった。横にいるアリーナが支えていなければ、倒れていたかもしれない。今日は彼女にとって、忘れたくても忘れられない一日になっただろう。
そしてリリスは球体を覗き込み、ディファナに話しかけた。
「あの・・アルミーダさんの店に置いた手紙はどういう意味なの?」
・・・・・
微動だにせず、リリスの言葉を無視するディファナにアルミーダが声を荒げる。
「ディファナッ!いい加減にしなっ!魔女とは崇高な存在であるべき・・昔からそう言われてただろ。今のお前は、魔女の資格を剥奪されても文句は言えないよ!」
「えっ!?魔女って、資格制なんですか?」
「いいや、魔女とは資格を与えられてなるもんじゃぁないが、魔女の中で不適合と烙印を押された者は一切の魔力を失う。この世に生を受けてから、魔力を武器に、そしてそれを拠り所に生きてきたんだ。魔力を失う・・それは魔女にとって死を意味するんだよ・・・」
「・・死・・・・」
アルミーダの言葉に重い空気が皆の間を流れた。
「ごめんなさぁい・・・もう悪いことしないから、許してぇぇ」
どうしてこうなったのか・・それは遡ること一時間前・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
外が静かになったことに気付いたアルミーダが、結界を解いた。満足気な顔で佇むアルバスと視線を交わしたリリスは、彼に走り寄る。
「先生!お怪我はありませんか?ディファナは?」
リリスの問いにアルバスは微笑むと、顔を横へ向けた。その視線の先には、土の球体があった。リリスが中を覗くと、ディファナが座り込んでいる。リリスと目線が合った彼女は睨みつけると、悪態をつき始めた。
「化け物!魔女は私じゃない!お前だ!・・お前はおかしい!変だ!お前に関わると、みんな不幸になるんだ!」
「いい加減にしろっ!!」
その声にリリスが振り返ると、皆を引き連れて後からやって来たヘンリーが怒りをあらわにしていた。それから、一瞬で甘い雰囲気をまとった彼はリリスの腰に手を回し引き寄せると、頬に軽くキスを落とした。突然のキスに驚いたリリスは、頬に手を当てヘンリーの顔を見る。その表情は、驚きと恥ずかしさでいっぱいだった。「みっ、みんながいるのに・・」と口をパクパクさせている。そんな彼女の様子を気にすることなく、ヘンリーは再び怒りのオーラを纏うと、ディファナに言った。
「いつまでそうやって意地を張ってるんだ?みんなを不幸にしてるのは、お前だろう。寂しいんだろう。さっき自分で認めたじゃないか」
「うるさい、うるさい、うるさーい!認めてない!そんな事、私は絶対に認めない!」
ディファナの反論を聞き流したヘンリーが、さらに言葉を続ける。
「愛する人に先に逝かれたんだろう?寂しくてアルミーダさんにちょっかいを出していたんだろう?」
僅かに眉を釣り上げたアルミーダが「なんだい・・お前、好きな人が居たのかい?」と聞いた。それにディファナは答えず、後ろを向いた。何とも子供のような態度に皆は苦笑している。そんな中、アルバスが口を開いた。
「なぜ彼女に執拗に絡んできたんだ?聖獣をけしかけたり、意味深な手紙まで残して」
ディファナは後ろを向いたままピクリともせず、何も言わない。小さくため息をついたリリスが口を開いた。
「あっ、それならさっき彼女から聞かされました。どうやらアルミーダさんを見ていて、私の存在を偶然見つけたようです。それで・・私の中にある前世の魂に気付いたと。
私は生まれ変わりで、前世の女の子が大好きだった物語に出てくる登場人物の悪役令嬢だそうです・・・ミズキ・・それが前世での私の名前です。これは前世の自分に会って教えてもらいました」
リリスの口から紡ぎ出される言葉にヘンリーたちは頷き、そして新たな真実に驚いた。そしてアルバスと顔を見合わせたアルミーダが言った。
「まさか前世の魂だったとはねえ。魂が二重には見えたが、前世とは・・・いやいや・・驚いた」
「えぇ、本当に。私が夢で見ていたのは、前世の自分と大好きだった物語の話みたいで・・・」
アリーナも次々と聞かされる話の内容に驚きを隠さなかったが、それより狼狽えていたのはエリーゼだった。横にいるアリーナが支えていなければ、倒れていたかもしれない。今日は彼女にとって、忘れたくても忘れられない一日になっただろう。
そしてリリスは球体を覗き込み、ディファナに話しかけた。
「あの・・アルミーダさんの店に置いた手紙はどういう意味なの?」
・・・・・
微動だにせず、リリスの言葉を無視するディファナにアルミーダが声を荒げる。
「ディファナッ!いい加減にしなっ!魔女とは崇高な存在であるべき・・昔からそう言われてただろ。今のお前は、魔女の資格を剥奪されても文句は言えないよ!」
「えっ!?魔女って、資格制なんですか?」
「いいや、魔女とは資格を与えられてなるもんじゃぁないが、魔女の中で不適合と烙印を押された者は一切の魔力を失う。この世に生を受けてから、魔力を武器に、そしてそれを拠り所に生きてきたんだ。魔力を失う・・それは魔女にとって死を意味するんだよ・・・」
「・・死・・・・」
アルミーダの言葉に重い空気が皆の間を流れた。
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