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アフターストーリー
アフターストーリー第6話 皇弟の意外すぎる素顔
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「それ名前なのか?」
「そうだよ。可愛くない?毛玉。ピッタリな名前じゃない」
「まあ、好きにしろ。どうせ明日までだ」
「でも驚いたわ。バロン様が聖獣の保護と普及活動してるなんて」
それにマリオンは「あー、叔父上は・・」と口を開くと、バロンについて話し始める。
マリオンによると、バロンはその年齢と既に皇太子としてマリオンがいる為、皇家とは距離を置き、好き勝手して生きていた。そして彼が行き着いた人生の選択が、聖獣の保護と普及活動を目的としたブリーダーだった。
聖獣は魔獣にもなる危険な存在としてみる者もいたが、バロンは聖獣が魔獣にならない方法を編み出した。そして、いまエルメの膝の上にいるのは、聖獣の中でも大人しい種類の兎獣(とじゅう)だ。ウサギのような見た目の兎獣は、その昔はどこにでもいる珍しくない聖獣だった。しかし、その毛と長い前歯目当てに乱獲され、今ではその姿を見られるのは一部の地域だけだ。
バロンは主にこの兎獣を保護し、また繁殖させ、彼曰く“犯罪級の可愛さ”の普及活動に勤しんでいた。そして普及活動として、飼いやすいよう兎獣を小型化した上で、飼ってくれる里親を探していた。
さらにバロンの主張は、“この子たちが帝国内で広く飼われ、人々の心を癒やせば、自然と憎しみや争いは減り、我がガイアール皇家は安泰”だそうだ。
帝国内で暗躍する“聖獣癒やし作戦”や“聖獣が魔獣に変化しないようにする”とか“その小型化”とか、次々にマリオンの口から語られる話にエルメは、驚きを隠さない。
(そんなに簡単なの?生命って・・・実は怪しい動物実験とかしてないよね?・・・いやいやぁ、まさかまさかだよぉ。そう言えば、さっき“五日間のお試し”とか、言ってたよね。まさに、ブリーダーの鑑じゃん!でもマリオンの反応見たら、絶対に里親失格じゃない?寧ろ、向こうからお断りされる案件だよ)
「バロン様がそんな想いを持ってるなんて、素敵ね。でもあの見た目で聖獣を愛する優しい性格。それなのに、まだ結婚してないなんて、信じられない」
「あー、それは・・・まあ、明日行けば分かる・・・いいか?驚くなよ。本当の叔父上を知っても・・」
マリオンの気になるセリフにエルメが聞くが、マリオンは「行けばわかる」と返すだけだった。
そしてその夜、マリオンのエルメとの肌の触れ合いは、毛玉によって邪魔をされ、翌朝のマリオンの機嫌が悪いのは想像に難くないのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(えっと・・・・これは幻聴?あれは錯覚?)
そう戸惑っているのは、エルメだ。彼女の視線の先には、兎獣に囲まれるバロンの姿があった。そしてバロンは穏やかな笑顔を浮かべ、兎獣に話し掛けている。
「おー、よしよしよしよし・・今日も可愛いねえ。あー、可愛すぎて、私は胸がいっぱいだよ~。おお、そうかそうか・・・撫でてほしいのか。どれどれ・・うわ、こら、みんな待ってくれよ。順番だぞ。ちゃんと撫でてやるから・・おー、そうだそうだ。いい子だね~」
バロンは溶けそうな笑顔で何十匹もいる兎獣を撫で回し、押し寄せる小さな生き物の対応に追われている。そしてその大量の兎獣に身体を押し倒され、埋まってしまった。
(何あれ!?何あれ!?何あれ!?まるでム○ゴロウ!!)
バロンの意外すぎる姿に驚くエルメに、マリオンが「言っただろう?叔父上の本当に姿を知っても、驚くなと」と囁いた。
そして、エルメとマリオンの姿に気付いたバロンが兎獣を優しく押し退け、歩いてくる。その姿は一目で上等だと分かるシャツとパンツに大量の毛を付けている。とても皇弟には見えない。
「おー、来たか!」
「驚かないんですね」
「お前がこの子を返しに来ると、分かっていたからな。寧ろ予想より遅いぐらいだ」
「何故、返されると分かっていて置いていったんですか」
「あー、それは一応、祝いの品を贈ったぞという既成事実をだな、作っておこうと思ってな」
「何ですか、それ・・」
そんな会話の横でエルメは、ウズウズしていた。
(触りたい・・あのモフモフに埋まりたい・・)
そして我慢出来なくなったエルメは、会話に割り込み、バロンに尋ねる。
「あの・・あの子たちに触っても、よろしいでしょうか?」
エルメのお願いにバロンは「ああ、構わん」と待ってましたとばかりに許可を出す。そんなバロンの返事が言い終わらないうちに、エルメの足はモフモフの聖地へ動き出す。そしてモゾモゾと動く毛玉の山に身体を埋めた。
「そうだよ。可愛くない?毛玉。ピッタリな名前じゃない」
「まあ、好きにしろ。どうせ明日までだ」
「でも驚いたわ。バロン様が聖獣の保護と普及活動してるなんて」
それにマリオンは「あー、叔父上は・・」と口を開くと、バロンについて話し始める。
マリオンによると、バロンはその年齢と既に皇太子としてマリオンがいる為、皇家とは距離を置き、好き勝手して生きていた。そして彼が行き着いた人生の選択が、聖獣の保護と普及活動を目的としたブリーダーだった。
聖獣は魔獣にもなる危険な存在としてみる者もいたが、バロンは聖獣が魔獣にならない方法を編み出した。そして、いまエルメの膝の上にいるのは、聖獣の中でも大人しい種類の兎獣(とじゅう)だ。ウサギのような見た目の兎獣は、その昔はどこにでもいる珍しくない聖獣だった。しかし、その毛と長い前歯目当てに乱獲され、今ではその姿を見られるのは一部の地域だけだ。
バロンは主にこの兎獣を保護し、また繁殖させ、彼曰く“犯罪級の可愛さ”の普及活動に勤しんでいた。そして普及活動として、飼いやすいよう兎獣を小型化した上で、飼ってくれる里親を探していた。
さらにバロンの主張は、“この子たちが帝国内で広く飼われ、人々の心を癒やせば、自然と憎しみや争いは減り、我がガイアール皇家は安泰”だそうだ。
帝国内で暗躍する“聖獣癒やし作戦”や“聖獣が魔獣に変化しないようにする”とか“その小型化”とか、次々にマリオンの口から語られる話にエルメは、驚きを隠さない。
(そんなに簡単なの?生命って・・・実は怪しい動物実験とかしてないよね?・・・いやいやぁ、まさかまさかだよぉ。そう言えば、さっき“五日間のお試し”とか、言ってたよね。まさに、ブリーダーの鑑じゃん!でもマリオンの反応見たら、絶対に里親失格じゃない?寧ろ、向こうからお断りされる案件だよ)
「バロン様がそんな想いを持ってるなんて、素敵ね。でもあの見た目で聖獣を愛する優しい性格。それなのに、まだ結婚してないなんて、信じられない」
「あー、それは・・・まあ、明日行けば分かる・・・いいか?驚くなよ。本当の叔父上を知っても・・」
マリオンの気になるセリフにエルメが聞くが、マリオンは「行けばわかる」と返すだけだった。
そしてその夜、マリオンのエルメとの肌の触れ合いは、毛玉によって邪魔をされ、翌朝のマリオンの機嫌が悪いのは想像に難くないのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(えっと・・・・これは幻聴?あれは錯覚?)
そう戸惑っているのは、エルメだ。彼女の視線の先には、兎獣に囲まれるバロンの姿があった。そしてバロンは穏やかな笑顔を浮かべ、兎獣に話し掛けている。
「おー、よしよしよしよし・・今日も可愛いねえ。あー、可愛すぎて、私は胸がいっぱいだよ~。おお、そうかそうか・・・撫でてほしいのか。どれどれ・・うわ、こら、みんな待ってくれよ。順番だぞ。ちゃんと撫でてやるから・・おー、そうだそうだ。いい子だね~」
バロンは溶けそうな笑顔で何十匹もいる兎獣を撫で回し、押し寄せる小さな生き物の対応に追われている。そしてその大量の兎獣に身体を押し倒され、埋まってしまった。
(何あれ!?何あれ!?何あれ!?まるでム○ゴロウ!!)
バロンの意外すぎる姿に驚くエルメに、マリオンが「言っただろう?叔父上の本当に姿を知っても、驚くなと」と囁いた。
そして、エルメとマリオンの姿に気付いたバロンが兎獣を優しく押し退け、歩いてくる。その姿は一目で上等だと分かるシャツとパンツに大量の毛を付けている。とても皇弟には見えない。
「おー、来たか!」
「驚かないんですね」
「お前がこの子を返しに来ると、分かっていたからな。寧ろ予想より遅いぐらいだ」
「何故、返されると分かっていて置いていったんですか」
「あー、それは一応、祝いの品を贈ったぞという既成事実をだな、作っておこうと思ってな」
「何ですか、それ・・」
そんな会話の横でエルメは、ウズウズしていた。
(触りたい・・あのモフモフに埋まりたい・・)
そして我慢出来なくなったエルメは、会話に割り込み、バロンに尋ねる。
「あの・・あの子たちに触っても、よろしいでしょうか?」
エルメのお願いにバロンは「ああ、構わん」と待ってましたとばかりに許可を出す。そんなバロンの返事が言い終わらないうちに、エルメの足はモフモフの聖地へ動き出す。そしてモゾモゾと動く毛玉の山に身体を埋めた。
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