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アフターストーリー
アフターストーリー第14話 じゃじゃ馬再び
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「誰!?」
立ち上がったエルメの瞳に映るのは、こざっぱりとしたシャツにパンツ姿の男のような格好の女だった。長い髪を後ろで雑にまとめ、深く被った帽子から見える瞳は、赤く不気味に光っている。
(赤い目・・こっちか災いは!)
「どっちが癒やしの乙女?」
エルメの質問には当然答えず、女は楽しくて仕方ない様子で質問する。
(狙いは、アリスか・・・相手は一人。それに女なら、何とかなるかも!?)
エルメは覚悟を決めると、悠然とした貫禄を纏い、女に告げた。
「私が癒やしの乙女です。この子と私の友人は、逃してください。そうしてくれるなら、大人しく付いていきます」
エルメの言葉を聞いたアリスが「エッ・・」と口を開くが、エルメはそんな彼女を抱きしめ、言葉を止める。
「いい?この子を連れて逃げなさい・・反論はなし!私は、子供の頃から多少の武術は叩き込まれてるから、大丈夫よ。だからアリスは、マリオン様にこの事を伝えて。アリスのこと、信じてるから・・出来るわね?」
アリスは当然躊躇するが「・・・分かりました。私、全力で走ります!」と覚悟を決めた声色で頷いた。「よし!いい子。それじゃあ、そんないい子のアリスには、これをあげる」と言い、アリスの手に握らせたのは、一本のナイフだった。「えっ!?エルメ様!?どこからこんなものを!?」と軽くパニクるアリスの頬にそっと触れる。
「何、ゴチャゴチャやってる!!」
「友人との別れの時間もくれないのですか?そんなに急かさなくても・・じゃあね、アリス」
エルメは抱きしめる温もりを離すと、アリスへ微笑みを向けた。そして、アリスに背を向け、女へ向かって歩き出す。その背中を見送るアリスは、エルメから託された任務を全うすべく少年の手を固く握りしめると、走り出した。
徐々に遠くなる足音にエルメはホッと安堵すると、女に質問を投げかける。
「どこへ連れて行くのですか?雇い主は誰なの?」
「行けば分かるわよ」
「貴女ひとりなのですか?大胆な作戦決行の割には、少ないわね」
「私は、一匹狼なのよ。使えないヤツと組んでも、足を引っ張られるだけだからね。一人でも私は強いわよ。今まで、しくじった仕事はないからね」
「へえ、そうなの・・それじゃあ、今日は初めての失敗記念日になるわねっ!!!」
エルメは、言い切ると同時にナイフで女に斬りかかった。ナイフに多少の手応えがあったエルメが女を見ると、シャツの袖が切れている。
(失敗か・・この距離で避けきるなんて、強いって言葉は嘘じゃないみたいね)
「あー、もう何て事してくれるのよ。まさかナイフを隠し持ってるとはねぇ。このシャツ、限定デザインでお気に入りだったのよ。癒やしの乙女ってのは、じゃじゃ馬だったの!?」
不敵な笑みを浮かべる女のセリフに、エルメの胸にマリオンの姿が浮かぶ。
(じゃじゃ馬・・ マリオンにも最初そう言われたわね)
浮かんだ懐かしい思い出にエルメは、フッと笑いを漏らす。そんなエルメの余裕な様子に、女は「何が可笑しい!?自分の状況分かってるの!?」と強がる言葉の裏に焦りを見せた。
「あら、心配してくれるの?十分すぎるくらいに、理解してるわ。貴女が狙ってるのは、癒しの乙女でしょう?生憎、その目的は果たせそうにないわよ。だって、私は癒やしの乙女じゃないもの。だから今日は貴女の失敗記念日になるって、教えてあげたじゃない」
「はっ!?癒やしの乙女じゃない?だって、さっき・・・」
「もう、貴女が素直で助かったわ。本当の癒やしの乙女は、逃げたあの子よ。あー、追いかけても無駄よ。今頃、私の夫が見つけてるだろうからね。貴女も逃げたほうがいいわよ。私の夫を怒らせると、もうそれはそれは怖いから」
「アンタ!一体誰なのよ!!??」
女の発狂にも近い叫び声が辺りに響く。そして、エルメは堂々とした雰囲気を一瞬で纏うと、告げた。
「私?私は、ここガイアール帝国皇太子妃よ!」
風で長い髪をたなびかせ、ナイフを片手に立つエルメの姿は、陽の光を浴びて美しさを増していた。
立ち上がったエルメの瞳に映るのは、こざっぱりとしたシャツにパンツ姿の男のような格好の女だった。長い髪を後ろで雑にまとめ、深く被った帽子から見える瞳は、赤く不気味に光っている。
(赤い目・・こっちか災いは!)
「どっちが癒やしの乙女?」
エルメの質問には当然答えず、女は楽しくて仕方ない様子で質問する。
(狙いは、アリスか・・・相手は一人。それに女なら、何とかなるかも!?)
エルメは覚悟を決めると、悠然とした貫禄を纏い、女に告げた。
「私が癒やしの乙女です。この子と私の友人は、逃してください。そうしてくれるなら、大人しく付いていきます」
エルメの言葉を聞いたアリスが「エッ・・」と口を開くが、エルメはそんな彼女を抱きしめ、言葉を止める。
「いい?この子を連れて逃げなさい・・反論はなし!私は、子供の頃から多少の武術は叩き込まれてるから、大丈夫よ。だからアリスは、マリオン様にこの事を伝えて。アリスのこと、信じてるから・・出来るわね?」
アリスは当然躊躇するが「・・・分かりました。私、全力で走ります!」と覚悟を決めた声色で頷いた。「よし!いい子。それじゃあ、そんないい子のアリスには、これをあげる」と言い、アリスの手に握らせたのは、一本のナイフだった。「えっ!?エルメ様!?どこからこんなものを!?」と軽くパニクるアリスの頬にそっと触れる。
「何、ゴチャゴチャやってる!!」
「友人との別れの時間もくれないのですか?そんなに急かさなくても・・じゃあね、アリス」
エルメは抱きしめる温もりを離すと、アリスへ微笑みを向けた。そして、アリスに背を向け、女へ向かって歩き出す。その背中を見送るアリスは、エルメから託された任務を全うすべく少年の手を固く握りしめると、走り出した。
徐々に遠くなる足音にエルメはホッと安堵すると、女に質問を投げかける。
「どこへ連れて行くのですか?雇い主は誰なの?」
「行けば分かるわよ」
「貴女ひとりなのですか?大胆な作戦決行の割には、少ないわね」
「私は、一匹狼なのよ。使えないヤツと組んでも、足を引っ張られるだけだからね。一人でも私は強いわよ。今まで、しくじった仕事はないからね」
「へえ、そうなの・・それじゃあ、今日は初めての失敗記念日になるわねっ!!!」
エルメは、言い切ると同時にナイフで女に斬りかかった。ナイフに多少の手応えがあったエルメが女を見ると、シャツの袖が切れている。
(失敗か・・この距離で避けきるなんて、強いって言葉は嘘じゃないみたいね)
「あー、もう何て事してくれるのよ。まさかナイフを隠し持ってるとはねぇ。このシャツ、限定デザインでお気に入りだったのよ。癒やしの乙女ってのは、じゃじゃ馬だったの!?」
不敵な笑みを浮かべる女のセリフに、エルメの胸にマリオンの姿が浮かぶ。
(じゃじゃ馬・・ マリオンにも最初そう言われたわね)
浮かんだ懐かしい思い出にエルメは、フッと笑いを漏らす。そんなエルメの余裕な様子に、女は「何が可笑しい!?自分の状況分かってるの!?」と強がる言葉の裏に焦りを見せた。
「あら、心配してくれるの?十分すぎるくらいに、理解してるわ。貴女が狙ってるのは、癒しの乙女でしょう?生憎、その目的は果たせそうにないわよ。だって、私は癒やしの乙女じゃないもの。だから今日は貴女の失敗記念日になるって、教えてあげたじゃない」
「はっ!?癒やしの乙女じゃない?だって、さっき・・・」
「もう、貴女が素直で助かったわ。本当の癒やしの乙女は、逃げたあの子よ。あー、追いかけても無駄よ。今頃、私の夫が見つけてるだろうからね。貴女も逃げたほうがいいわよ。私の夫を怒らせると、もうそれはそれは怖いから」
「アンタ!一体誰なのよ!!??」
女の発狂にも近い叫び声が辺りに響く。そして、エルメは堂々とした雰囲気を一瞬で纏うと、告げた。
「私?私は、ここガイアール帝国皇太子妃よ!」
風で長い髪をたなびかせ、ナイフを片手に立つエルメの姿は、陽の光を浴びて美しさを増していた。
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