幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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16話 両極端

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 あれから俺は特殊な鎮静剤を投げ、みんなを落ち着かせてから朝食を済ませたあと、ルディとクレアを箱庭に残して2階層への石板に触れたところだった。周囲の景色が徐々に変わり、腰高の草原へと変化していく。

「お、次は草原ですか」

「わー、草のベッドみたい。きれーい」

「はわわ、本当ですねぇ」

「おで、眠くなりそう……」

「いやいや、ワドルは充分寝ただろ?」

「うぅ……」

 1階層のマップも、それまで俺たちがいた箱庭も山の中だったこともあり、一転して視界が開けた感じがして気持ちよかったが、ここから先のモンスターは人を見かけたら襲ってくるアクティブタイプが多いので注意が必要だ。

 長閑な景色に騙されやすいが、このマップが腰高の草原なのは理由があって、草むらの中には凶悪なバッタのモンスター、ビッグローカストが大量に隠れていてこれが非常に厄介なのだ。

 人の子供ぐらいの大きさで飛び跳ねるスピードがとても速く、草原に紛れて奇襲のように体当たりをしてくるため、相手が膨大な数であることを考えればまともに食らったら途轍もないダメージを受けることになる。

 もちろん、そこはシグが索敵スキルで知らせてくれるわけだが、わかっていてもそのスピードは避けるのが難しいほどだし、茂みの中にはグラスウェポンと言われる植物型モンスターが多数紛れ込んでて、足に絡みついてくるので避けることが極めて難しくなるのだ。

 ワドルの無尽蔵の体力と俺の特製回復ポーションがあればそれでも普通に耐えられると思うが、高い飛翔力を持つバッタたちの攻撃範囲は広く、攻撃する対象も無差別なので、もしワドルが動きを封じられればこっちに襲い掛かってきた場合に対応できなくなる可能性がある……ってなわけで、俺は特殊な除草剤を撒くことにした。

「みんな、除草剤の準備をするからちょっと待ってて」

「「「「了解っ……!」」」」

 ちなみにこの除草剤は元パーティー時代にも散布したわけなんだが、当たり前のようにスルーされたことを覚えている。錬金術師ならできて当然、みたいな空気だった。俺の除草剤は威力抜群なんだけどなあ。それをわざわざ言えばひけらかしてるように思われるから黙ってたんだ。

 さあ、準備完了だ。『アンチストロング』もそうだが、こうしたものは出来立てホヤホヤのほうが効き目があるんだ。

「「「「――おおっ……!」」」」

 シグたちが歓声を上げる。特殊な除草剤を投薬してやると、あっという間に半径50メートルほどまである草原を一気に枯らしてしまった。ただ、それでも草むらとともに植物型モンスターのグラスウェポンはすぐ復活してしまうが、自分の除草剤なら1分くらいは維持できる上、広範囲だから問題ない。

「さあ、みんな行こうか――」

「――す、凄いっ! さすがリューイ氏!」

「ほんとぉ! リューイさん愛してる!」

「はうぅ、リューイさん素敵ですうぅ……」

「お、おで、リューイさんみたいになりたい……」

「は、ははっ……」

 まさかこんだけ褒められるなんて、俺としてはもう照れ笑いするしかなくなる。前のパーティーとは全然違うしまるで蜂蜜漬けにされてるみたいだが、気分は悪くなかった。

 俺たちの周囲に居座っていた草の塊がごっそり消えたことでバッタも見つけやすく、しかも除草剤で飛翔力も体力も弱ってるのでサクサク倒せるというおまけつき。

「うおおおおおおおっ! バッタども来かかってこい! 俺様が相手だああぁぁっ!」

「おるぁあああああっ! 焼きイナゴにして食ってやるですううぅぅぅっ!」

 ワドルとアシュリーの絶叫が響き渡る中、視界が変わっていく。

 おいおい、もうボス部屋行きかよ。体感だが、まだこのマップに来て10分くらいしか経ってないはずだぞ? いくらなんでも早すぎだろ……。
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