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21話 誘発
しおりを挟む「うおおおおおおおおぉぉぉっ! あらゆるものをなぎ倒してやる! 俺様を舐めるなあああぁぁぁっ!」
「「「「うわあああぁぁっ!」」」」
ワドルの背中越しに急に視界が開けてきたかと思うと、俺たちは草原の中に投げ出されていた。
……な、なんだこりゃ。これってもしかして、山の中を一周してまた戻ってきた形なのか? 倒れ込んだ拍子に元に戻った様子のワドルを含め、みんな呆然と周りを見渡していた。
「あ、あの、リューイ様方……?」
「「「「「あ……」」」」」
誰かが俺たちを不思議そうに覗き込んでると思ったら、ルディに仕えるメイドのクレアだった。
「――と、こういうわけなのです!」
「「「「「はあ……」」」」」
クレアから事情を聴き、俺たちの徒労感に溢れた溜息が被る。
ルディたちは山の中で鬼ごっこをしていて、やがて草原を見つけたルディがそこに入り込んだらしく、クレアも追いかけてきたものの彼女の気配が途切れてしまったため途方に暮れているというものだった。
「リューイ様……一体、お嬢様はこの草原のどこにおられるのでしょう? わたくしめは心配で心配で……」
「い、いや、クレア、ここにはモンスターなんていないし、普通に無事でいるんじゃ?」
「いえっ! 気配が途切れてしまったということは、つまり気を失っておられるということです!」
「じゃあ、隠れたまではよかったけど疲れて寝ちゃったんじゃ?」
「その可能性も考えられますが、もしかしたら転んでしまい、打ちどころが悪いがためにそのまま危篤状態になっている可能性もっ! ぐすっ……なのでわたくしめは不安で不安でっ……!」
「……」
クレアが涙ぐんで必死に訴えてる。この子、相当な心配症だな。どう考えてもそこまで深刻な事態じゃないと思うが……。まあ確かにこの草原はかなり広いし辺りも暗くなってきた上、俺の作った探知機でも細かい場所まではわからないが、それでもこの人数でしらみつぶしに探せばいずれ見つかるだろう。
「クレア。みんなで手分けして探せばいいんだし問題ないよ」
「は、はいっ、ありがとうございます! ですが、なるべく慎重にお願いしますね。走り回ったりしてもしお嬢様を踏んづけてしまったら、わたくしめは気を失うどころか、ショックの余り魂がこの世から追放されてしまいます――」
「「「「――あ……」」」」
「え?」
おいおい、クレアが禁止ワードを使っちゃったよ。
「追放、だぁ……? ざっけんじゃねえですう! 鬼ごっこ上等ですうぅ! お望み通りただの肉塊に変えてやるですううううぅぅっ……!」
バフを使って草原を切り裂くように走り出すアシュリー。ヤバイな。もしあの勢いでぶつかったら本当にタダじゃ済まなそうだ。
「あ、あんな勢いだと困ります! は、早くあの方より先にお嬢様を見つけなくては!」
アシュリーに負けじとクレアも猛然と駆け出したわけだが、彼女も結構危ないんじゃないかと……って、俺たちも傍観してないで探さないとな。
多分どこかで隠れてる間に寝てそうだってことで、俺はある装置を新たに発明することにした。簡単に言うと広範囲に渡る集音器なんだが、ただ無暗に音をかき集めるだけではノイズが混じって意味不明なものになってしまう。
そこで、思念草で作られた特製のフィルターを集音器に装着し、イメージした人の寝息以外を完全にシャットダウンする一方で、目的の音が聞こえたときはより鮮明に聞こえるようにした。
「――くーくー……」
「おっ……」
完成したばかりの集音器を手に歩き始めた途端、早速寝息が聞こえてきた。案外早かったなと思って近付くと、アシュリーが気持ちよさそうに寝ていた。まああれだけ走ってたら、体力無尽蔵のワドルじゃあるまいしそりゃ疲れるか。
そのあと、俺はサラ、シグ、クレア、ワドルの順番で寝息の主を立て続けに発見することになったわけだが、ようやく目的のルディを発見したときには、既に草原は闇に包まれていた。なんか俺まで誘われるように眠くなってきたな……。
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