幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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22話 風

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「「「「「はぁ、はぁ……」」」」」

 102階層まで突入したウォーレンたち一行だったが、砂漠のマップを昼間から延々と歩き続けたことで今では夕闇に染まりつつあり、その表情もまた一様に沈んでいた。

「みんな……僕もそうだし疲れてるだろうけど、頑張るんだ。いずれ必ず、第二マップの塔は見つかる……」

 そう力なく呟く魔術師ウォーレンの目はやはり虚ろだった。周囲が暗くなるだけでなく、所々で発生している砂塵も相俟って視界が極端に悪くなってきたからだ。

「ウォーレン、わかってるさ。それにしても……カイル、あんたには心底失望したよ」

「えぇっ……?」

「あんたの索敵スキルの範囲がもっと広ければ、二つ目のマップは当然モンスターの種類が違うんだからすぐ見つけられただろうに」

「しょ、しょうがねえじゃん、セシアちゃん。俺の索敵スキルなんて明瞭度が売りでよ、範囲についちゃそこまで広くねえんだし……」

「男の子は言い訳しないの! あの無能のリューイみたいになりたいの?」

「うぐっ。あんな惨めなやつにはなりたくねえよ。アリーシャちゃん……俺、傷を負ったから回復術で慰めて……」

「もー、カイルったらぁ……あ……」

 回復術師のアリーシャがはっとした顔になる。

「そうだ、レビーナは何か探知できるような道具とかないの?」

「アリーシャさん、私はあくまでも戦闘系なので、そういうのはないです、すみません」

「相変わらず使えない子ね」

「……すみません」

 錬金術師レビーナが補助術師セシアに謝罪するも、彼女のほうを一切見ようともしなかった。

「こういうとき、リューイなら何か便利なの発明してくれそうなのに――あっ……」

「「「「……」」」」

 アリーシャの発言を機に、気まずそうに黙り込むウォーレンたち。

「ご、ごめん、みんなっ。今考えるとリューイもほんのちょっとくらい役に立ってたところはあったのかなあって――」

 そのとき、風の悪戯とばかりに突風が吹き、彼らは砂にまみれることとなった。

「うぐっ……げほっ、げほっ……く、口の中にっ。げほおっ……!」

「目、目に入っちゃった……!」

「お、俺なんてどっちもだ……ぢくしょう!」

「けほっ、けほっ! もーやだぁ……!」

「ごほっ、ごほっ……ぺっ、ぺっ……! なんで、なんで私がこんな目に……」

 ウォーレンたちを取り巻く空気は、ただただ悪くなるばかりであった……。



 ◇◇◇



「お嬢様ったら、まったくもう……。みなさん、本当に心配したんですよ!?」

「しょ、しょうがないじゃない! 草原の中に隠れるつもりだったけど、気持ちよすぎたからそのまま寝ちゃっただけよ、ふんっ!」

「……」

 またしてもルディお嬢様の逆切れが炸裂しちゃってるな。

 それでも全然雰囲気が悪くならないのはちゃんと理由があって、そんな彼女の『もう山の中は飽きたわ!』という希望で夜の草原に移したばかりのサラのおばあちゃんの家の中、軒下でまったりとみんなでお茶を飲んでるからだろう。

 それだけじゃなくて景色も最高で、一方はどこまでも続くような草原、もう一方ではなんとも雄々しい山を見渡せることもあり、何度見ても清々しい気持ちにさせてくれるものだった。これが箱庭の中だなんて本当に信じられない……ってことで、俺は風を発生させる装置を新たに発明することにした。

 俺が誕生させたのは小さな竜巻風のホムンクルスで、これを野に放つだけでいい。『ずっと微風を送り続けるように』、とかそういう命令とかもできるが今回はしなかった。なるべく自然な風になるよう、自由に遊ばせてやるというわけだ。

「おおう、リューイ氏、風を発生させるホムンクルスですか。これはなんとも涼しいですねえ」

「ああん、サラ気持ちいいー」

「はうー、気持ちいいですう」

「お、おでも……」

「さすがリューイ様、素晴らしいわねっ」

「ですね。もうご主人様と呼ばせていただきます!」

「ちょ、ちょっと! クレア、泥棒猫するつもり!?」

「ち、違います! お嬢様と区別をつける意味で……!」

「あはは……って――」

 まずい、ホムンクルスまで興奮したのか強い風を送ってきた。

「「「「――きゃっ!?」」」」

「「「おおぅ……」」」

 俺、リューイ、ワドルの男性陣の声が被るのも仕方のない話で、女性陣のものが色々捲れて、隠している部分が丸出しになった瞬間だった……。
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