幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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28話 不協和音

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 103階層への石板前、ウォーレンたちはしばらく放心した様子で体の向きすら変わらなかったが、まもなくパーティーメンバーの一人、錬金術師レビーナのほうに吸い寄せられるかのように視線が集まることとなった。

「え……な、なんですか、みなさん。もしかして私が悪いって言いたいんですか……?」

「い、いや、レビーナ、別にそういうわけじゃ――」

「――ウォーレン……もうこの際だからはっきり言っておやり! レビーナ、あんたが悪いんだよ。この疫病神っ!」

「姉さんやめてくれよ!」

「セシアちゃんやめなって!」

「やめてよ、セシアさん!」

「離しなっ! ペナルティなんか関係ない。仕置きしなきゃ気が済まないんだよ! だって、この子が来るまではボスなんてすぐ倒せてたじゃないか! それなら元凶は誰なのかはっきりしてるじゃないのさっ!」

 ウォーレン、カイル、アリーシャの三人がかりでもセシアの勢いは止められない様子で、右手を振り上げたままじりじりとレビーナのほうに近付いていたが、詰め寄られている当人はうつむいたままその場を一歩たりとも動こうとはしなかった。

「それならはっきりと言わせてもらいますね。私は一切悪くないと思います」

「「「「えっ……?」」」」

「だってそうじゃないですか。そもそも私がいなくてもみなさんは『ボスキラー』って呼ばれてたわけですよね? それとも、追い出したリューイって人より私のほうが無能だって言いたいんですか……?」

「「「「……」」」」

 レビーナの理路整然とした物言いに対し、メンバーは一様に困惑した顔を見合わせるだけで、彼女に反論できる者は誰もいなかった。

「――そ、そうだよ、みんな、レビーナは悪くない……」

「ウォーレン、そう簡単に言うけどね……じゃあ一体なんでこんなことになったっていうのさ!」

「そ、それは……い、いや、そんなはずは……」

 ブツブツと呟いたあと、はっとした表情で何度も首を横に振るウォーレン。その顔色は死体のように青ざめていた。

「ウォーレン、どうしたの……?」

「お、おい、具合でも悪いのか? どうしちまったんだよ、ウォーレン」

「あ、いや、なんでもない。も、もしかしたら、100階層以降のボスがやたらと強いだけかもしれないって思って。そこの対策ができてないだけなんじゃないかと……」

「対策、ねえ。ほかに何かいい手立てがあるようにも見えなかったけど――」

「――じゃあ……じゃあ姉さんは何故なのかわかるのか!? それくらいしか思い浮かばないじゃないか!」

 ウォーレンが激昂した様子でセシアに詰め寄り、その場に異様なムードが立ち込める。

「そ、そんなに興奮するんじゃないよ、ウォーレン。あたしが悪かったからさ……。てか、とんなときでも常に冷静沈着でいられるのがあんたの一番の長所じゃないのかい……?」

「そ、そうだよ、ウォーレン。リーダーがこういうときにしっかりしなきゃ……」

「そ、そうそう! ウォーレン、頼りにしてんだからよ」

「そうですよ。格好いいリーダーさんに戻ってください……」

「くっ……み、みんな……すまない。僕が悪かった……って、そうだ、その手があった……」

「「「「えっ……?」」」」

「一度100階層に戻って、戦ったことのあるボス巡りで自分たちの実力を確かめてみたらどうかなって。それで全部はっきりする」

「「「「あっ……!」」」」

「みんな、異論はないよね?」

「そうね……確かに、頭を冷やす意味でもそのやり方のほうがいいかもしれないわ」

「うんうん、そこで同じように戦ってみたら何が原因かわかっちゃうね」

「な、なんか怖えなあ。てか俺、散財しまくってんだが……」

「カイルさん、それなら私が少しサポートしますよ」

「あ、ありがてえ、レビーナちゃん……」

 こうして、ウォーレンたちは100階層へと戻るべく螺旋階段を降り始めたが、一つのパーティーには見えないほど彼らの足並みはバラバラであった……。
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