幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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32話 脱出

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 あれから、俺たちはたった三日で洞窟シリーズの4階層から10階層まで一気にやってきた。

 思えばあっという間ではあったが、似たような景色がずっと続くっていうのは結構来るものがあったな……。

 ここは最初から最後まで明るい光の洞窟。これが最後の洞窟マップで、いつものようにタンク役のワドルが集めた大量のモンスターを俺たちで掃討し、ボス部屋へと視界が移り変わっていく。

『――フシュウウゥゥッ……』

 魔法陣から出現したのは、光属性のボス――ウォルオーウィスプ――だ。

 それまで薄暗いボス部屋だったのが、これでもかと光で満たされて目がチカチカしてくる。この10階層に出てくる球体モンスター、プラズマーたちをそのままくっつけましたみたいなボスモンスターで、傲慢なまでの眩さに加えて、威圧するかのように膨張した姿がそこにはあった。

「リューイ氏、頼みましたよ」

「リューイさん、お願いっ」

「オラァッ、リューイッ、とっととやりやがれですう!」

「リューイよ、俺様のあとは任せたぞ! ハッハッハ!」

「あ、ああ。あとは俺がやるよ」

 ちなみに、アシュリーとワドルの人格が変わったのはこの階層がスタートしてからなので、元の性格に戻る前にボスと対峙したということになる。未だかつてない驚異的なスピードでここまでやってきたってことだ。

 さらに、こうして俺だけにボスを任せる状況になっているのは、最早壁役さえ必要がなくなっているからなんだよな。

『アンチストロング』はただでさえ強力なものだったが、それに飽き足らず改良を重ねてつい最近発明した劇薬『アンチストロングDX』によって、ボスを倒すスピードは格段に跳ね上がっていたんだ。

「食らえっ!」

「「「「おおっ……!」」」」

 シグたちが驚嘆するのも無理はない。ボスが俺たちのほうに向かって一歩踏み出したと思ったときには既に倒してしまったからだ。たった5回の投薬で済んだから、これはサービスステージのヒトデを除いたら回数的にも新記録だ。

「いやー、さすがリューイ氏。これでようやく長かった洞窟シリーズが終わるわけですねえ……」

「ほんとぉ。洞窟はもうヤダ……」

「はうぅ、暗いし怖かったですうぅ」

「お、おでも……」

「あはは……」

 みんな、ボスを倒した喜びもあるんだろうが、どっちかっていうとこれで窮屈な洞窟シリーズからようやく抜け出せることのほうが嬉しかったみたいだ。俺もだが……。



 ◇◇◇



「「「「「……」」」」」

 100階層大広間の一角に設置されたウォーレンたちのテント内にて、彼らを包み込む空気は重くなるばかりであった。

 彼らは前回の反省を生かして充分な休息を取ったのち、95階層から100階層まで最速攻略を目指してボス部屋巡りを敢行したわけだが、どれも平凡すぎる結果に終わったためだ。

「――ちょ、ちょっと俺、気分転換にその辺散歩でもしてくるわ……」

「では私も失礼しますね」

 逃げるようにそそくさとテント内から立ち去る盗賊カイルと錬金術師レビーナ。

「あ、私もーっ!」

「あ、あたしも……」

「……」

 回復術師アリーシャと補助術師セシアも気まずそうに続き、その場にただ一人残されたのはリーダーの魔術師ウォーレンのみであり、重い空気を象徴するかのようにうずくまったまま微動だにせず、声を発することすらなかった。

(何故だ、何故だ、何故なんだあぁ……。僕たちは今までと変わらないことをやってきたはず。なのにどれも平凡なタイムだった。だとしたら……い、嫌だ。リューイが有能なはずがない。あいつは無能だ。間違いなく……100%無能なんだ! なのに、この結果はどう考えても何かおかしい。呪われてるとしか――)

「――お、おい、ウォーレン、大変だ!」

「……なんだ、もう戻ってきたのか、カイル。また誰かに振られちゃった?」

「いや、そんなんじゃねえ! 本当に大変なんだ!」

「……え?」

 この世の終わりのようにカイルが血相を変えているのを見てきょとんとするウォーレン。

「ど、どうしたんだよ、カイル?」

「いいから早く来てくれ! みんなもそこにいる!」

「……」

 只事ではないと感じたのか、ウォーレンが我に返った様子で立ち上がった。
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