外れスキル【転送】が最強だった件

名無し

文字の大きさ
27 / 50

第二七話 勝負

しおりを挟む

 俺は覚悟を決めて、祭壇の影から【転送】によってカトリーヌの後方に回った。

「――何やつ!」

 一気に間合いを詰めて殴りかかるも、思ったより彼女の反応が速くてかわされた。というか、その際に足が縺れて転んでしまった。長い間眠っていただけあって、かなり筋力が低下しているようだ。当たり前のことなのに計算に入れてなかった。しくじった……。

「う、嘘……」

 なのに、カトリーヌが攻撃してこない。それどころか真っ青になって戦意喪失気味の様子。

 一体何故……って、そうか。俺が永眠していたはずのファルナスだからだ。ただ、身内であればすぐにそれが別人だと気付くだろう。そうなったら本当に終わってしまう。

 俺は【転送】を展開させ、呆然と突っ立っている彼女の真横に移動する。硬直時間もすぐに終わり、顎目がけて肘を斜めに振り下ろす。頼む頼む頼む、当たってくれ……。

「――っ!」

 ダメだ。普通にかわされてしまった……。

「ファルナス様が私を攻撃するはずがありません。何者か……。悪霊ならば出ていきなさい!」

 カトリーヌの目に敵意が宿るのがわかる。まずいな。この悪い流れを早急に変えなくては……。

「――はっ……」

 カトリーヌの足元に小さな火が現れたと思ったら、その背後にいたエリンの姿が忽然と消えた。これは、もしかして彼女の魔術とスキルによるものか……?

「くっ、どこに……」

 火もすぐ消えたが、このラストチャンスを生かさないはずがない。既に俺はカトリーヌの背後に【転送】し、硬直時間も消化していた。

「うっ……」

 振り返った彼女の顎先に俺の拳が掠り、目から光が消えるのがわかる。これだけ有利な状況でもぎりぎりだった。本当に恐ろしくなるほど反応が速いやつだ……。

「……ふう」
「あ……」

 消えた場所からエリンがほっとした顔で出てきた。姿を消すことはできても、そこから移動はできないっぽいな。

「エリン、おかげで助かったよ。まさか魔術が使えるなんてな」
「て、照れるのだ……。でも、魔術鍛錬1だから大したことはないぞ?」
「1か……」

 だからすぐ消えちゃったんだな。でも体術や剣術に比べると敷居が高いんだよな。最も才能が必要とされる分野だと言われている。

「あと、消えてたけどどんなスキルを使ったんだ?」
「あれは【空気】っていうスキルだっ」
「【空気】か……」
「見たいか、見たいかあ? ふふっ」
「……み、見たい」
「ならば特別に見せてやるのだ!」

 エリンが意気揚々とタブレットを取り出す。聞いたことないが、いかにも外れっぽいスキルだな。まあこの際だから、どんな効果なのか見せてもらうことにしよう。

 スキルの名称【空気】

 種類:特殊系

 精神力の消費:小

 効果:自身のみ、姿を消すことができる。その間は一切動けなくなる。また、解除するまであらゆる干渉を受け付けない。

 評価:Fランク

 ……なるほどなあ。確かにどう見ても外れスキルだが、精神力が持つ間は無敵状態になれるわけだ。今思えば、エリンがリンチされてもあの程度の怪我で済んだのって、もしかしたらこれのおかげでもあるのかもな。

「ふぅ。安心したら、なんだか眠くなってきたのだ……ふわあ」

 ……エリンの大きな欠伸を見てるとこっちまで眠くなってくる。そういやもう深夜どころの時間帯じゃないな。宿に戻るか……って、エリンのやつまで寝ちゃったわけだが……。これって、もしかして今起きてるの俺だけ……?



 ◇◇◇



「なあ、ケイス。本当にいいのか? こんなの連れてきちゃってよ」

【転送】を駆使して宿に戻る頃には、今もベッドでお休み中のエリンとカトリーヌを除いてみんな起きていた。

「ファルナスの中身が別人だって思われてる以上、放置すると色々まずいだろ」
「そりゃそうだがよ……」
「ルザーク……女好きのお前にとっちゃ歓迎だろ? どう見ても美少女だし」
「いや、俺はこういう重そうな女、どうも苦手だ。こんなのと付き合って、もし浮気でもしたらそれこそ殺されちまうぜ……」

 ……なるほど。確かに言われてみればそんな感じもする。ルザークは重いのが苦手なんだな。さすがに遊んでるだけある。

「なあ、ミケちゃんもそう思うよな?」
「……そ、そうですね」
「……」

 ルザークに話を振られたミケだったが、いつもみたいに元気がなくて、笑顔もどこかぎこちなかった。

 どうしちゃったんだろうな。一応これまでの事情は話したんだが、勝手に俺が体を乗っ取ったからいじけてる可能性もありそうだ。よし、ここは誠実に謝罪しとくか……。

「ちょっくら煙草吸ってくる」
「お、おいルザーク」

 ルザークがあっという間に部屋から出て行ってしまった。さてはあいつ、気を遣いやがったな。

 どうやら俺とミケが相思相愛だと勘違いしてるらしい。道理で俺の前じゃ尻を触らなかったわけだ。てか普通に謝ろうとしてたのに、これじゃ余計に緊張しちゃうだろ……。

「……み、ミケ」
「はい」
「……その、なんだ。許可なくお前の体を乗っ取ったのは、少しは悪かったと思ってる。すまん!」
「……え?」
「……ん?」

 しばらく二人で固まってしまった。なんだ? ミケのやつ、きょとんとしてるんだが……。

「私……その分楽をしてしまったので、それでケイスさんやルザークさんに申し訳なく思っていたんです……」
「そ、それでか……」
「はい……。ごめんなさいをするタイミングを狙っていたら、逆に謝られちゃいました……私の負けです」
「……どんな勝負だ」
「へへ……」

 すっかりいつもの明るいミケに戻っていた。この性格の良さ、本当にシルウとは真逆だな……。

「――う……」

 おっ、カトリーヌが目覚めそうだ。この子を説得して仲間にできれば大きいし、これからが本当の勝負になる。

「よーし。ミケ、ルザークを呼んできてくれ。俺はエリンを叩き起こす」
「あ、はーい!」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...