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第69話
しおりを挟む「――あ……」
俺は思わず天を見上げる。
あれだけ滝の如く降り注いでいた豪雨が、気付けばピタリとやんでいるのがわかった。
ただの偶然だとは思うものの、まるで神様までもが耳を澄まし、往生際の悪いバルドたちの言い分を聞きたがっているかのようだ。
そんな奇妙な状況下、王様がロープで縛られたバルドたちのもとへやってきた。
「バルド、シェリー、エミルよ。本来ならば、敗北したお主らにもう用はないのだが、ルエスがああ申しておるゆえ、特別に話くらいは聞いてやることにした。ありがたく思うがいい」
「は、ははあぁっ、王様ぁ、ありがたき幸せぇっ……!」
「王様ぁ、ありがたいです……!」
「……王様……素敵……」
「お礼なら寛大なルエスたちに申せ。あと……お主らの話を聞く前にだな、余から一つ、忠告させてもらうことがある……」
「「「はい……?」」」
「あれだけ素晴らしい仲間同士の絆をルエスたちに見せてもらい、いたく感動したあとだけに、もし今回もどうしようもない言い訳をするようなら、断じて余が許さぬ。覚悟しておくがいい!」
「「「……」」」
王様の雷よりも強烈な一喝。これにはさすがのバルドたちも青白い顔で震え上がっていたが、それでも彼らの執念たるや、怨霊の如く引き下がろうとする気配さえない。その中でも、特にバルドは悪霊に憑依されたんじゃないかと思えるほど目つきが異様だった。
「お、王様あぁっ……! こ、こんなことは言いたくないのですがあぁっ……僕らは間違いなく、ルエスたちに嵌められたのですうぅっ……!」
「嵌められただと? バルドよ、その確証はあるのだろうな……?」
「は、はひぃっ……! ぼ、僕がまさにあとほんの少しで勝利しようというとき、こちらへ向かって何者かの手により短剣が投げられました。あの卑劣極まりない妨害行為こそが、負けそうになったルエスたちの陰謀であることの確かな証拠かと……!」
「「「「「ザワッ……」」」」」
あまりに身勝手なバルドの言い分に対し、周囲が俄かに色めき立つのがわかる。俺自身深い溜め息が飛び出したし、ルエスたちも顔をしかめたり舌打ちしたりして露骨に不快感を示していた。
短剣のことを言うんだったら、その前に飛んできた矢についても触れるべきだろうと。それに関しては都合が悪いのか無視するわけだから、バルドは人を苛立たせる才能がありすぎだ。それも王様の御前で。
「いやいや、待つのだ、バルドよ……。それを言うのであれば、短剣より先に矢が放たれ、ルエスの膝に突き刺さった件についてはどう説明するのだ? しかも、その際はどう見てもお主が劣勢だったではないか!」
さすが王様。あの激しい雨が降り注ぐ悪条件の中で、しかも一瞬の出来事だから見逃してもおかしくないのによく見ている。
さて、バルドはこれに対してどう弁明する……?
「……あ、あの矢に関しても、明らかに僕を狙ったものです! それに劣勢っていっても、こっちは防御しながら様子を窺ってただけですし、そのタイミングでたまたま、図体だけはでかいルエスに当たったわけで……」
なるほど、やっぱりそういう言い訳で来たか。だが、それはこっちも想定済みだってことで、俺は王様とバルドの会話に割って入ることに。
「王様、お話し中のところ邪魔して申し訳ありません。これから自分たちが潔癖であることの証明をしてみせます」
「おお、ラウルよ、証明できるのか。さすがはこの国随一の治癒使い。抜かりないな」
「ははっ……」
こんなときにもお世辞を言える余裕があるなんて、本当に王様は器が広すぎる。
そこで俺が杖を左手に持ち替えるとともに高々と掲げて合図を出すと、待ってましたとばかり、一組のパーティーが群衆の中から姿を見せ、こちらへと歩いてきた。
よしよし、こちらが望むプレゼントもちゃんと用意してるのがわかる。やはり、彼らに重要な仕事を任せたのは正解だったな。
バルドたちを本当の意味で打ちのめす準備はこれで完了した……。
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