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第70話
しおりを挟む「よお、ラウルッ! 言われた通り、私たちが怪しいやつをばっちり捕まえてきたぜ。やっぱ慧眼だなっ!」
「ぐぐっ……」
S級パーティー『暗黒の戦士』のリーダー、ダリアが見知らぬ男の首根っこを片腕だけで掴んでやってきた。武器を扱う職の中では最もパワーを要するといわれる両手斧使いらしく、相変わらずの怪力っぷりだ。
そんな彼女が捕らえているあの男こそ、ルエスに矢を放った弓使いの妨害要員だろう。
「「「っ……」」」
彼の姿を見るなり、バルドたちが一様にしまったという顔で目を背けたことからも間違いない。
決闘が始まる前のこと、俺はあらかじめダリアたちに接触し、周辺に怪しい人物がいたら捕まえてほしいと頼んでおいたんだ。もしなんらかの妨害行為があれば、それ相応の行為でやり返してほしいとも。
「ラウルの旦那、あっしの短剣投げの腕、見てくれやしたか!」
短剣使いのセインが、したり顔で袖を捲し上げる素振りを見せる。もしあれがなかったら勝負はどうなっていたかわからなかっただけに、その卓越した投擲の技術に助けられた格好だ。
「でも……捕まえたの、自分だから……」
静かな口調で胸を張ってみせる大鎌使いのリシャール。へえ、彼女が捕まえたのか。さすが、短気ですばしっこくて体が先に動くタイプなだけある。
「いやいや、やつを捕まえることができたのはな、この森のどのあたりに潜んでおるのか、わしが目星をつけていたのが大きいじゃろうて!」
どうやら治癒使いのオズの貢献も大きかったらしい。異変を察知する力こそ、サポート役の最大の長所だからな。
これには王様もご満悦の様子で、何度もうなずきつつ拍手をするほどだった。
「さすがはラウル。余が見込んでいるだけあって抜かりがない。この弓使いが全てを洗いざらい白状すれば、どっちのパーティーが嘘をついているのかはっきりするわけだな!」
「「「……」」」
その一方で、バルドたちは刺客が捕まったことで観念したのか、すっかり大人しくなっている。
あとはこの弓使いを拷問し、誰から指示を受けたのか、陰謀の黒幕を吐かせるだけで全てが片付くって寸法だ。
「うーし。あとは私に任せてくれ。真実を全部吐くまでこいつを痛めつけてやるぜ!」
「う、うぅ……」
ダリアが弓使いの目前で拳を包み込み、ポキポキと小気味よい音を鳴らし始める。凄い迫力だ。この男が何も言いたくなくても、彼女から拷問されたらひとたまりもないだろう。
「……ま、待ってくれ。わかった、吐く……。だが、その前に喉が渇いたから、水を……ほんの少しだけでいいので、水を飲ませてほしい……」
男が弱り顔でそう懇願してきた。もう参ってしまったか。ダリアがいかにも残念そうに舌打ちするのが印象的だった。
「そうか、あいわかった。誰か、こやつに水を――」
「――あ、王様、えっと……俺の懐に水筒があるから、できればその水を飲ませてもらえないでしょうか……」
王様の声を遮り、男が妙なことを要求してきた。
水なんてどれも大して変わらないだろうに、なんでわざわざ自分の水筒を……って、待てよ? まさか……。
「それを飲ませちゃダメだっ!」
兵士が男の懐から水筒を取り出し、今まさに飲ませようとしていたとき、既に駆け寄っていた俺はギリギリのタイミングで取り上げる格好になった。よかった、間に合った……。
「ラウルよ、そのように慌てるとは、お主らしくないな。一体どうしたというのだ?」
「王様、この水筒の水を飲ませてはいけません。これには毒が入っています。つまり、自害しようとしたんです」
「なっ、なんだと……。それは誠なのか……!?」
「……ち、畜生……」
弓使いがさも悔しそうに項垂れるのが、これが毒入り水筒であることの何よりの証だった。
「頼む、早く俺を殺してくれ……」
「お主は誰かに指示されてやったのだろう? なんでそこまでして犯人を庇おうとするのだ?」
「…………」
怪訝そうな表情を浮かべる王様の質問に対し、男はしばらくの間無言だったが、まもなく諦めたのかおもむろに話し始めるのだった。
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