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第72話
しおりを挟む弓使いのキーフが罪を告白したのち、その場で王様から禁固刑を言い渡されて数人の兵士に連れられていったわけだが、事後処理はまだ残っていた。
それはもちろん、決闘で俺たちのパーティー『聖域の守護者』に敗北した、『神々の申し子』パーティーのバルドたちの処分についてだ。
「余は正直、バルドらに関してはパーティー解散という処分だけでなく、最も重い刑、すなわち死罪にするべきだと思うのだが……ラウルよ、お主はどう思う?」
「「「ひいぃっ……」」」
王様が俺に投げかけてきた言葉で、バルド、シェリー、エミルの三人が一斉に体を震わせる。
それだけのことをしてきたんだから覚悟くらいはできてるのかと思いきや、三人とも死刑だけは避けたがってるのが見え見えだった。特にバルドは赤い目をグルグルと動かしていて、怯えているというより逃げる機会をしきりに窺っている感じだった。この状況ではどうしたって不可能だが。
今、この三人の命は俺の掌の上にあるといっても過言じゃない。つまり、いつでも簡単に握り潰すことができるわけだが、俺の答えはもう決まっていた。
「王様、たとえ相手が親の仇であろうと、俺のスタンスは変わりません。パーティー解散だけでなく、妨害行為に対して重い刑罰を科すのは当然としても、命だけは助けてやるべきです」
「そうか……。まあお主ならそう申すだろうと予測はしておったが、余は心配なのだ。またやつらが逆恨みでもして、何か良からぬことを企てはしないかとな……」
「王様、それも含めての罰だと思います」
「む……? それも含めての罰というのは、一体どういうことなのだ? わけを説明してみよ」
「はい。彼らをここで死罪にするのは簡単ですが、最後まで反省することもなく終わりです。でも、生かすことで反省する可能性は僅かでも生まれますし、何よりこの先には想像以上の葛藤や苦悩が待っています。それを味わわせることこそが最大の罰かと」
「なるほどな……。さすがはラウル、この国で最高の治癒使いなだけあって、少しでも可能性があるならと、極悪なやつらをも改心させようとしておるわけだな。本当に慈悲深い男だ……」
「いえ、王様。そんなことはないですよ。改心するかどうかを決めるのは彼らのほうですから。そもそも治癒術というのは、治癒をする側だけが一方的になせるものではありません。彼らがそれを望む方向になれば、手を貸しても――」
「――いい加減、黙れってんだよっ、ラウルウウゥゥッ!」
「「「「「ザワッ……」」」」」
群衆がどよめく。俺と王様の会話中に大声で割り込んできたのは、ロープで縛られたバルドだった。
「貴様如きが、僕を改心させるだと……? 笑わせるな……。残念ながら、僕はこの通り正常だ。今ここで僕を許せば、いずれ必ず復讐してやる。僕を生かしたことを死ぬまで後悔させてやるぞおおぉっ――!」
「――ええいっ、何をしておる、その大罪人をさっさと黙らせぬか!」
「「「「「はっ!」」」」」
「ぶぎっ! ぶげえっ!? ごふっ! ぎぎぎいぃっ! ぐぎゃあああああああぁっ……!」
王命を受けた兵士たちによってこれでもかと殴られ、血まみれになってようやく気絶するバルド。
彼はまもなく、がっくりと項垂れたシェリーやエミルとともに、兵隊に引き摺られるようにして連行されていった。それを追いかける群衆から罵声や石を浴びせられながら。
「ラウルよ、心配はいらぬ。やつらは極刑を免れたとしても、心から反省する様子がなければ一生監獄で暮らし、想像を絶する苦痛を背負い続けることになるであろう」
「…………」
「ん、ラウル、そんなに胡乱な顔つきをして、どうしたというのだ……?」
「あ、いえ、王様。なんでもありません……」
さっき、バルドの背中に黒い影のようなものが見えた気がしたんだが、目を擦ったあとで二度見したら消えていたし、おそらく気のせいだろう。
「――ふわわぁ~」
「はっ……」
急に欠伸が聞こえてきて俺は肝を冷やした。どうやらファムが起きてきたらしい。
「む? ラウルよ、今、妙に可愛らしい欠伸が聞こえてきたような?」
「あ……そ、それは俺ですよ、王様。疲れると、たまにああいう高い声が出ちゃうんです」
「ふむ……」
なんとかごまかせたようだ。危なかった……。
「むにゃ……ぱぱぁ、ままぁ、みんなだいしゅき……」
懐を覗き込むと、目を瞑った状態のファムがそんな甘い寝言を囁いてきた。なんだ、一度起きたと思ったらまた寝ちゃったのか。
ただ、この分だともうすぐ目覚めそうだから、そろそろ宿舎へ戻ったほうがよさそうだな。
それにしても、ほんの少しだけファムの体が大きくなってる気がする。この子の姉も体が人間並みに大きかったし、このまま順調に成長すればいずれあんな感じになるのかもしれない。
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