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第三章 魔法学園

冷え冷えの正体とは

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ホープに聞かれてセーラは少し考えるように右手を頬にあてる。

「う~ん、今のマリーの様子を見ていたらそんな事はなさそうですけれどもやはり一声かけたほうがよろしいと思いますよ。」

セーラはホープの目を覗き込みながら優しく言ってくれた。

「分かった。こっそり食べない。ちゃんと言うよ。マリーもう一口食べていい?」

うなずくとホープは私の側でパクッと口を動かした。
やっぱり何も感じないけど?

首をかしげる私にみんなはあきれているみたいだ。

「まぁこの魔力量の多さもあってこその聖女ということかもしれませんわね。」

「だから、聖女じゃないってば。」

「ホープもせいじゅじゃないよ。ホープ冷え冷えたちにあれこれ足されたりしてこうなったから。」

尻尾をぶんっと振ってホープは言う。

「さっきから言ってる冷え冷えってなあに?」

「冷え冷えは美味しそうな髪をしてるけど全然美味しくなくて冷え冷えなの。いつも笑ってるのに中は冷たくて、メガネの人とムキムキの人とガリガリの人と一緒にホープを作ったの改良したって言ってたよ。」

「その冷え冷えって…」

私は飲んでいた紅茶にミルクを入れて見せた。

「こんな色の髪をした人?」

ホープはコクっとうなずく。

「そうそう、こんな色。その人がロベリアって子を連れてったよ。風の綱でぐるぐるにして。」

私たちは顔を見合わせ頷き合った。
どうやらロベリアは偽ニリーナに連れ去られたらしい。

「もう学園外に逃げられているかしら。ニリーナ様がいらしてるからまだ学園の結界をくぐり抜けていないかもしれません。急いで探しましょう。」

アスターさんが先頭に立って部屋を飛び出そうとする。

「あっ、待って。」

ホープはアスターさんのドレスの裾をパクッとくわえた。

「ロベリアって子は異空間に放り込まれたと思う。気配がないもん。冷え冷えの気配の一部はまだあるよ。
ここにね、ゆっくり近づいてきてる」

「近づいてきてる?」

思わず悲鳴のような声をあげてしまった。
だってなんだかホラーっぽいんだもん。しかも一部ってどういうこと?

「冷え冷えの魔力をくっつけた人が近づいてきてるんだよ。その人は知らないみたいだけどその人が見るものが冷え冷えに伝わってるの。」

「ちょうどいいわ。その方にくっついている魔力をいただきましょう。上手くいけばネズミの足取りを追えますわ。」

アスターさんが少し悪そうな笑みを浮かべている。舌なめずりをする猫が思い浮かんだのは私だけじゃないはずだ。

それからみんなでヒソヒソ話し合い私とホープ、セーラ、イライザは念のためアスターさんの私室に隠れた。

人の部屋をジロジロ見たら失礼だけど、私室も可愛らしさはあまりなくクリーム色のカーテンに本棚、机、姿見や鏡台もみんなシンプルで使いやすそうな品ばかりだった。

鏡台に置かれた髪飾りやバッグがなければソリーさんの部屋だと思ったかもしれない。

のんきにそんな事を考えていた時、小さくノックの音が聞こえた。

「どうぞお入りになって。」

アスターさんの声に続いて扉が開く音がした。靴音が部屋に入ってくる。

「お茶会の最中に失礼いたします。
ご家族の方からお手紙が届いていらっしゃいましたのでお持ちいたしました。」

「まぁ、ありがとう。」

軽い衣擦れの音に続いてカタンッと音がした。

「あら、まぁ大丈夫。」

「た、大変失礼いたしました。いえ、お嬢様のお手をわずらわせるわけには。」

「気にしないで、さぁ。大丈夫?怪我はないかしら?」

「はい。ありがとうございます。」

「あら、曲がってしまったわね。さぁ、これでいいわ。」

「あぁ、そんな。本当に申し訳ありません。ありがとうございます。」

「いいのよ気にしないで。つまづく事くらい誰だってあるわ。」

部屋にやってきた人物はどうやら侍女の方だったらしい。
息をひそめて聞き耳をたてる私たちには気づかなかった様子で何度もお礼を言いながら彼女は出て行った。

足音が遠ざかっていったのを確認して私たちはそっとリビングルームに戻る。

「手に入れましたわ。」

そこには満面の笑みを浮かべたアスターさんがビー玉のようなものを掲げながら待ち構えていた。
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