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第三章 魔法学園

封印の裏事情

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のんちゃんの説明を聞いて私はため息をついた。
なんだかやるせない。

古くからあった悪しき風習、一人の小さな欲からはじまった村の衰退。
それに巻き込まれた無関係の人間。

「彼女が色々な人を惑わせたのは許されないことだけど…」

のんちゃんは私の呟きにニッと笑った。

「マリーはそう感じるだろうと思った。だから彼女を倒すとかじゃなくて彼女をこの世界に呼び寄せたものに責任とって引き取ってもらおうと思うんだよね。」

「それが異形の主…竜の封印を解いてってこと?」

「そう。聖女も書いてるし師匠の見解から見てもそうなんだけど竜は封印されたわけじゃない。
過ごしやすい場所に移動させただけで。」

「じゃあ何で封印なんていう話に?」

のんちゃんは顔をしかめてヒラッと足を組んだ。

「人間側…まぁ王国側の都合だね。

魔の森はリトアとイシェラの境にあって希少なものに溢れてる。
両国ともこれ以上荒らされるのを良しとしなかったんだろうなぁ。

だからあの森には恐ろしい異形の主が封印されている。さらにその封印を守り森を復活させるために神聖な生き物とされるヴェルフィアウルフたちが暮らす。人間は決してあの森に近づいてはいけない。

そう国から言い渡されたらしい。

辺境で国から放置されていたあの地にスリジェ辺境伯家が作られ土地と森を守り、隣国の介入の有無も見張るようになったのはその時からだよ。」

「でもその後リトアとイシェラで戦争が起きたよね?あの時も森の一部が燃えてしまったって習ったし最近もヴェルフィアウルフの密猟が…
よく考えたらのんちゃんもニリーナ様の訓練か何かで森に入ってたしあまり守られてないんじゃ…」

のんちゃんは組んでいた足を解いてテーブルごしに身を乗り出してきた。

「俺が訓練で入ってたのは森の再生に関わる方面だから。まぁ、バレたら咎められることには変わりないけど。
でも戦争や密猟はどれも偽ニリーナが関わってる。
あの森に異空間を開く入り口があるからね。森を荒らしたりヴェルフィアウルフの力を集めたりすれば入り口を破壊できると思っているらしい。」

「そうまでして…そもそも何で竜は彼女をこの世界に呼び寄せたんだろう?」

「あの竜はこの世界の誕生とともに生まれこの世が朽ち果てるまで生き続けると言われている。
果てしない時間の中で力が弱まる時も強まる時もある。
何千年も休まない時もあれば何百年も眠り続ける時もある。

師匠の話じゃ眠りにつく前はたくさんの力を貯め込むものらしい。
ちょうど森が乱獲騒ぎで荒れた時にその時期が来てしまったから竜は何とかして力を得ようと無意識に彼女を呼び寄せてしまったらしい。」

「人一人じゃそんなにたくさんの力にならないんじゃない?」

「いや、この地に全く存在しなかった者だからね。異質なものが加われば地はそれを順応させようと膨大な力を発揮する。彼女がその力に飲み込まれなかったのは竜に守られたからだ。
それでももとはなかった魔力を得たりして影響を受けてる。

さらに竜と離されて守りの力も弱まってきて彼女自身に綻びが生まれ始めてるんだよ。だからさっさと竜に引き取ってもらわなきゃ。」

「異質な者…じゃあ私たちも?」

のんちゃんはジッと私を見てからうなずいた。

「うん。俺たちやアリアドネ妃、他にもいるかもしれない記憶を持った転生者たちは竜が呼び寄せてるんだと思う。この地に新たに産まれた身体に魂だけ呼び寄せれば転移ほどの影響はないだろうし、土地の力は高まるから。それでも俺たちの魔力量が異常に高いのは地の影響もあるんじゃないかと思うんだけどね?」

「竜が復活したら私たちも何か変わってしまうのかな?」

急に怖くなって私は両手を膝の上でギュッと握った。

のんちゃんはいつのまにか立ち上がって私の隣に膝まずき膝に握り込んだ両手を優しく開いて握ってくれる。

「何も起こらないとは残念だけど断定できない。
でも何があっても俺がマリーを、有希を守るから。」

暖かい手にホッとして私はのんちゃんに笑顔を向けた。
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