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序章 星に願いを
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「あら、また、お外を見ていたの?」
看護師の池田さんです。
ミイちゃんが、振り向きました。
雪のような白い肌に、白いうさぎの帽子がよく似合っています。
「きょうは、だれも、あそんでいないよ」
うさぎの顔が淋しそうです。
「北風さんが、びゅーびゅー吹いているからかな?」
「ふーん、ミイちゃんなら、さむくても、おそとであそぶのに……」
池田さんの口元がほころびます。
「子どもは風の子って言うものね」
「そうだよ! かぜの子、げんきな子」
ミイちゃんが、言葉に節を付けて歌い出しました。
「じゃあ、もっと元気になろうね」
池田さんがカップに水薬を入れてミイちゃんに差し出します。
ピタリと歌声がやみました。
『金目病院 小児病棟』
ここはミイちゃんが今いるところです。
鼻をつまんで薬を一気に飲んでしまうと、「やっぱり、これまずいね」とミイちゃんが顔をゆがめます。
「あらあら、かわいいお顔がだいなしよ」
「ふーんだ。ミイちゃんはぜーんぜん、かわいくないもん」
頬をぷーっと膨らませ、「かみのけもなくなっちゃったし……まゆげも……まつげも……」と言って、そのまま下を向いてしまいました。
池田さんはすーっと息を吸い込み、ゆっくり吐き出すと、「知らないのー?」と、びっくりした顔を作ります。
「ミイちゃんはね、ナースステーションでも評判の、キュートな天使ちゃんって言われているんだよ」
「ほんとう?」
「本当。大石先生もかわいいって言ってたよ」
「えっ!」
大石先生はミイちゃんの主治医です。ミイちゃんは大石先生が大好きでした。
「へー、そっかー せんせいが……へー」
照れ笑いを浮かべて、ミイちゃんは何度も「そっかー」と繰り返します。
「あのね、ミイちゃんね、たいいんしたら、あのこうえんのブランコにのるんだ」
機嫌が直ると、また窓の外を見つめます。
その目が、きらきら輝いています。
「ブランコ、いいね。池田さんも好きよ」
病院の隣の小さな公園。青い滑り台と、二台の赤いブランコ、それに、小さな砂場と、大小の鉄棒が見えます。
「あれにのって、おそらまで、いくんだ」
「まぁ、いいわね」
「でね、おほしさまに、おねがいするの」
「あら、何を?」
ミイちゃんはくすくす笑いながら、「んーとね、な・い・しょ」と両手で口を覆いました。
そして、「あっ、みて、いちばんぼしだよ!」と、宝物でも見つけたみたいに瞳を輝かせます。
「本当だ」
赤く染まった西の空。それを見つめながらミイちゃんがお星様の歌を歌い出しました。それに合わせるように、星が一つ、二つ増えていきます。
池田さんは星々に願います。どうかミイちゃんの病気が良くなりますように……と。
看護師の池田さんです。
ミイちゃんが、振り向きました。
雪のような白い肌に、白いうさぎの帽子がよく似合っています。
「きょうは、だれも、あそんでいないよ」
うさぎの顔が淋しそうです。
「北風さんが、びゅーびゅー吹いているからかな?」
「ふーん、ミイちゃんなら、さむくても、おそとであそぶのに……」
池田さんの口元がほころびます。
「子どもは風の子って言うものね」
「そうだよ! かぜの子、げんきな子」
ミイちゃんが、言葉に節を付けて歌い出しました。
「じゃあ、もっと元気になろうね」
池田さんがカップに水薬を入れてミイちゃんに差し出します。
ピタリと歌声がやみました。
『金目病院 小児病棟』
ここはミイちゃんが今いるところです。
鼻をつまんで薬を一気に飲んでしまうと、「やっぱり、これまずいね」とミイちゃんが顔をゆがめます。
「あらあら、かわいいお顔がだいなしよ」
「ふーんだ。ミイちゃんはぜーんぜん、かわいくないもん」
頬をぷーっと膨らませ、「かみのけもなくなっちゃったし……まゆげも……まつげも……」と言って、そのまま下を向いてしまいました。
池田さんはすーっと息を吸い込み、ゆっくり吐き出すと、「知らないのー?」と、びっくりした顔を作ります。
「ミイちゃんはね、ナースステーションでも評判の、キュートな天使ちゃんって言われているんだよ」
「ほんとう?」
「本当。大石先生もかわいいって言ってたよ」
「えっ!」
大石先生はミイちゃんの主治医です。ミイちゃんは大石先生が大好きでした。
「へー、そっかー せんせいが……へー」
照れ笑いを浮かべて、ミイちゃんは何度も「そっかー」と繰り返します。
「あのね、ミイちゃんね、たいいんしたら、あのこうえんのブランコにのるんだ」
機嫌が直ると、また窓の外を見つめます。
その目が、きらきら輝いています。
「ブランコ、いいね。池田さんも好きよ」
病院の隣の小さな公園。青い滑り台と、二台の赤いブランコ、それに、小さな砂場と、大小の鉄棒が見えます。
「あれにのって、おそらまで、いくんだ」
「まぁ、いいわね」
「でね、おほしさまに、おねがいするの」
「あら、何を?」
ミイちゃんはくすくす笑いながら、「んーとね、な・い・しょ」と両手で口を覆いました。
そして、「あっ、みて、いちばんぼしだよ!」と、宝物でも見つけたみたいに瞳を輝かせます。
「本当だ」
赤く染まった西の空。それを見つめながらミイちゃんがお星様の歌を歌い出しました。それに合わせるように、星が一つ、二つ増えていきます。
池田さんは星々に願います。どうかミイちゃんの病気が良くなりますように……と。
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