美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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プロローグ

01

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誰に聞いたかは忘れたけど、人生は『後悔の上にある』らしい。
その言葉をほんの少しだけ本当だと思ったのは、就職活動を開始して――。

「こんなお利口さんの大学を出ているのに、コックになりたい? それってどうなの、勿体ないんじゃない?」

毎度言われるこの台詞を初めて耳にしたときだった。

「ここよりさぁ、大学に戻るか研究所みたいなとこ? そこに勤めた方が絶対にいいよ」

だが、そう思ったのは、その時一度きりだけだった。
現選択しかり、あの大学はあの大学で私の飽くなき探究心を大いに満足させてくれた。後悔はない。

「まぁ、うちの料理を気に入ってくれたのは嬉しいよ。でも……働くんじゃなくてまた食べに来てよ、ねっ」

だからこんな風に遠回しに、あっさり断られても私はめげない。
なぜなら、過去を振り返り後悔している時間があったら、未来を夢見て突き進む方が得策だと悟ったからだ。

人生はネバーギブアップ! 音を上げた者が負けだ。

しかし、そう思いつつも22歳の春からかれこれ10軒……いや、今断られたのを入れると11軒のレストランと5軒の老舗割烹と、それに、2軒の食堂から不採用をもらい、早2年が過ぎた。

『光陰矢のごとし』ということわざがあるが……これも本当だと身を以て知った。

だが、私に焦りはない。なぜなら、周りに就職を急かす人がいないからだ。
唯一の身内だった両親は、大学卒業目前に事故で亡くなった。今は遺されたマンションに一人暮らしだ。

二人は良くできた人だったので、一人っ子の私が遅かれ早かれ独りになることをちゃんと知っていた。だから、そうなったとき、苦労しないように衣食住に関することなど、生きていく上で必用なことはしっかり教えてくれていた。

それ故、今、私は何ら困ることなく平穏に暮らしている。
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