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第1章 発端
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十月半ば過ぎ、その日は朝から気分が良かった。
ヒンヤリと冷たい風を肌に受け、猛暑も残暑も完全に抜けたと思ったからだ。
――ということは、いよいよ本格的な食欲の秋到来、ということだ。
どこからともなく漂ってくる金木犀の甘い香りを吸い込み、方々から届く美味便りに思いを馳せる……これだけで生唾ゴックンものだ。
浮き立つ気持ちを押さえながら、面接会場である十二軒目のレストラン“美食倶楽部クーラウ”に足を進める。
毎度のことだが、面接を受ける店のリサーチに余念はない。
“美食倶楽部クーラウ”は三年ほど前に開店した新規の店だ。“クーラウ”の語源は『食らう』だそうだ。
美味を食らう倶楽部。捻りも何にもない、まんまだなと思ったのが第一印象だった。
オーナーは 西園寺綾時という二十八歳の青年実業家……と言えば聞こえはいいが、親の七光り? 実家がかなりの資産家みたいだ。ネットにズラズラと出てきた記事を見る限り、華やかな世界に住むセレブのようだった。
それと、どの記事にも西園寺綾時が、いかにイケメンか親切丁寧に書かれていた。
店が繁盛しているのは……だからなのかと思ったが、意外や意外、そうではなかった。
ヨーロッパで活躍していた樫野友宏というシェフを引き抜き、彼をチーフに確かな人材を雇い入れているそうだ。そうなると……料理は期待大だ。
舌舐めずりをしながら自宅のある駅から電車に乗り一駅。
ここなら、勤めたとしても引っ越さなくてすむ。浮かれ調子に、そんなことを考えながらネットに載っていたアクセスどおりに駅前の大通りを北に進み、二つ目の角を左に折れる――と、「へーっ」思わず声が漏れ出た。
裏通りだがエグゼクティブな雰囲気が漂っていたからだ。そこを進むと――。
ヒンヤリと冷たい風を肌に受け、猛暑も残暑も完全に抜けたと思ったからだ。
――ということは、いよいよ本格的な食欲の秋到来、ということだ。
どこからともなく漂ってくる金木犀の甘い香りを吸い込み、方々から届く美味便りに思いを馳せる……これだけで生唾ゴックンものだ。
浮き立つ気持ちを押さえながら、面接会場である十二軒目のレストラン“美食倶楽部クーラウ”に足を進める。
毎度のことだが、面接を受ける店のリサーチに余念はない。
“美食倶楽部クーラウ”は三年ほど前に開店した新規の店だ。“クーラウ”の語源は『食らう』だそうだ。
美味を食らう倶楽部。捻りも何にもない、まんまだなと思ったのが第一印象だった。
オーナーは 西園寺綾時という二十八歳の青年実業家……と言えば聞こえはいいが、親の七光り? 実家がかなりの資産家みたいだ。ネットにズラズラと出てきた記事を見る限り、華やかな世界に住むセレブのようだった。
それと、どの記事にも西園寺綾時が、いかにイケメンか親切丁寧に書かれていた。
店が繁盛しているのは……だからなのかと思ったが、意外や意外、そうではなかった。
ヨーロッパで活躍していた樫野友宏というシェフを引き抜き、彼をチーフに確かな人材を雇い入れているそうだ。そうなると……料理は期待大だ。
舌舐めずりをしながら自宅のある駅から電車に乗り一駅。
ここなら、勤めたとしても引っ越さなくてすむ。浮かれ調子に、そんなことを考えながらネットに載っていたアクセスどおりに駅前の大通りを北に進み、二つ目の角を左に折れる――と、「へーっ」思わず声が漏れ出た。
裏通りだがエグゼクティブな雰囲気が漂っていたからだ。そこを進むと――。
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