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第1章 発端
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――と叫んだところで、人生は甘くない。『はい、捕まりました』なんて展開にはならなかった。
私はあの雨で高熱を出し、一週間ほど床に伏してしまった。まさに踏んだり蹴ったりだった。
熱が下がっても、“美食倶楽部クーラウ”のことが忘れられず、他の店に面接に行こうなどという気になれなかった。それどころか、気付けばストーカーのように“美食倶楽部クーラウ”の周りを徘徊する自分がいた。
「重症だ!」
そういえば、前にも一度こんな症状が現われたことがあった。
中学時代、部活帰りに恩師に連れられ入った……あれは古くて小さな食堂だった。
***
自分のことは自分では良く分からないと言うが、私も類に漏れず、自分が変わった子だとは思ってもいなかった。
でも、周りは……ボーッとしているかと思ったら年齢に不相応な言葉を突然発する私を、『不思議な宇宙人』だと思っていたようだ。かなり敬遠されていたみたいだ。
そんな私を『天才だ』と言って生きやすくしてくれたのが、その恩師だった。
恩師の名は神田睦。国語の先生だったが、大学での専攻は心理学だったらしい。父と同年齢だったと記憶するが、父のように大らかな感じではなく、一言で言うなら“孤高の人”だった。
三年間、先生に授業を受け持ってもらったことは一度もない。出会いは部活だった。
在校していた中学は、当時、部活絶対参加の学校だった。帰宅部なんて許されなかった。私は仕方なく、一番活動が少ないボランティア部に入部した。その部の顧問が神田先生だったのだ。
部員は五名という弱小部だったが、個性豊かな子ばかりで、思ったよりも居心地は良かった。
私はあの雨で高熱を出し、一週間ほど床に伏してしまった。まさに踏んだり蹴ったりだった。
熱が下がっても、“美食倶楽部クーラウ”のことが忘れられず、他の店に面接に行こうなどという気になれなかった。それどころか、気付けばストーカーのように“美食倶楽部クーラウ”の周りを徘徊する自分がいた。
「重症だ!」
そういえば、前にも一度こんな症状が現われたことがあった。
中学時代、部活帰りに恩師に連れられ入った……あれは古くて小さな食堂だった。
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自分のことは自分では良く分からないと言うが、私も類に漏れず、自分が変わった子だとは思ってもいなかった。
でも、周りは……ボーッとしているかと思ったら年齢に不相応な言葉を突然発する私を、『不思議な宇宙人』だと思っていたようだ。かなり敬遠されていたみたいだ。
そんな私を『天才だ』と言って生きやすくしてくれたのが、その恩師だった。
恩師の名は神田睦。国語の先生だったが、大学での専攻は心理学だったらしい。父と同年齢だったと記憶するが、父のように大らかな感じではなく、一言で言うなら“孤高の人”だった。
三年間、先生に授業を受け持ってもらったことは一度もない。出会いは部活だった。
在校していた中学は、当時、部活絶対参加の学校だった。帰宅部なんて許されなかった。私は仕方なく、一番活動が少ないボランティア部に入部した。その部の顧問が神田先生だったのだ。
部員は五名という弱小部だったが、個性豊かな子ばかりで、思ったよりも居心地は良かった。
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