美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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第3章 事件、事件、事件

05

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「イケメンも大変なんですね」

しみじみ言うと、「だからなの」と神乃マネージャーが話を戻す。

「悪評の件、今回だけじゃないの。再々なの。店が繁盛しているのも理由の一つだけど、オーナーにフラれた腹いせっていうのも多いの。本当、困ったものだわ」

「困ったもの? 一夜限りで捨てるとか?」

ブルンブルンと神乃マネージャーとマミさんが揃って頭を振る。

「それならどんなにいいか」
「そうねぇ。それなら彼女たちも満足するでしょうね」

どういう意味?

クエッションマークを脳内に浮かべていると、「店だけなのよ。顔を覚えているのは」と意味不明の言葉が聞こえた。

益々分からない。

「その反応、当然だわ」
「私も分かんなかったもの」

マミさんが笑う。

「お客様に対してオーナーが愛想良くするのは店だけなの。その時はどこの誰かもちゃんと覚えているのよ」

「でも……」と神乃マネージャーが溜息を吐く。

「店を一旦出たら『あなたは誰? どこかでお会いしましたか?』なの」
「まるで記憶喪失男でしょう?」

――何とまぁ……開いた口が塞がらない。

「メチャクチャ失礼な人じゃないですか。でも、それって演技じゃないんですか?」

ううん、と神乃マネージャーがゆっくり首を左右に振り否定する。

「演技とかじゃなくて、それが彼のデフォルトなの。だから女性たちも文句が言えないの」
「それって女性に限ってですか?」

何となく口ぶりでそうなのかと思って訊ねると、案の定だった。

「そう。それも自分に好意を持つ女性だけね」
「鼻が利くっていうのかしら? そういう女を嗅ぎ分けられるのよ、オーナーって」

なるほど、と納得していると神乃マネージャーが不思議そうに首を傾げた。
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