美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第４章 美しい女性

04

「何のこと？」

クエッションマークを浮かべたマミさんが質問するが、やはり神乃マネージャーは公私混同をしない人だった。

「寧々ちゃんが特別だってことよ」
「ああ、それ？　あの子地獄耳だものね」

上手く誤魔化せたのだろう。マミさんは納得するとニヤリと笑って「小姑の苛めに遭うってわけね、ご愁傷様」と手を合わせた。

「全然、同情されている気がしないんですけど」
「当たり前じゃない。人の不幸は蜜の味よ」

こん畜生と思ったが――それより何より、六歳児に苛められるって……。

何だかなぁと思いながら、どんな子なのだろうと想像する……が、血が繋がってなくても、どう考えても西園寺オーナーのミニチュア版に思えて仕方がなかった。それならきっと凄い意地悪だ。


＊＊＊


――だが、凄いどころではなかった。彼女は私の想像をはるかに超えた小さな悪魔だった。

「貴女が聖天寧々？」

富美乃様と夏乃お嬢様は、流石は親子と思わず唸ってしまうほどよく似ていた。二人とも稀に見ぬ美人で、華奢な身体と小顔、気品ある佇まいは永遠の妖精と言われたオードリー・ヘップバーンを思わせた。が、二人の性格は百八十度違った。

「まぁ、夏乃ちゃんたら、お姉さんを呼び捨てにして。ごめんなさい」

柔らかな声が心から申し訳なさそうに謝った。こんな風に富美乃様は女神のようだが、夏乃お嬢様の方は――。

「綾時お兄ちゃまに手を出す奴に礼儀は必要ないわ！」

刺々しい声で私を睨んだ。

ハッキリとした物言いといい、堂々とした態度といい、これが六歳児かと思った。今まで抱いていた小学一年生の概念が崩れるほど衝撃的な子だった。