美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第４章 美しい女性

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「――はい？」彼は今何と言った？

「よく聞こえなかったのですが……恋人と……？」
「言った。どうせ勘違いしているんだ。だから、丁度いい」
「それはあの握り潰した記事のことを仰っているのでしょうか？」
「そうだ。西園寺のトップに位置する者たちは、皆あの記事の内容を知っている」

なるほど、それを富美乃様たちは鵜呑みにしているわけか。だが――。

「それならあれは真っ赤な嘘、と仰ったらよろしいのでは？」

それが事実なのだから。

「いや、あれでよかった。丁度いいんだ……」

何が丁度いいのだ？　意味が分からない。
怪訝な表情の私に、西園寺オーナーは深い溜息を吐いた。

「お前は気が回らない奴だな。一を知って十を知るという諺を知らないのか？」

それは、物事の一端を聞いただけで全てを理解するという意味だ。非常に賢く理解力があることのたとえと辞書にあったような気がする。

しかし、この場合、何を以もって一なのだ？

「――馬鹿なので詳しく教えて下さい」

波風を立てて帰宅が遅くなるのは意に反する。だから悔しいが下手に出ることにした。

「お前は聞かずとも分かる奴じゃなかったのか？」

嫌味ったらしくハーッと大袈裟な息を吐くが……気のせいか、私に毒を吐くたびに西園寺オーナーの顔色が良くなっているような気がする。