美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第４章 美しい女性

18

コッソリ溜息を吐いていると、車は大通りから脇道に入った。一応、二車線の道だが、急に寂さびれたような気がするのは、きっとイルミネーションがないからだろう。

そのうち家々の明かりもなくなり、暗闇の中、街灯の明かりがポツリポツリと見えるだけとなった。

ホテルの位置は知っている。一度だけ両親と食事に行ったことがあるからだ。でも、あの時は昼間だった。いくら山の麓にある林の中だと言っても、こんなに暗闇が続くなんて思いも寄らなかった。

その道を十分ほど走ると、ライトに照れされたアイアンのゲートが見えた。見上げるほど高い。その前で車が停まった。

「いらっしゃいませ、西園寺綾時様」

ゲート脇の簡易な小屋から年配の男性が出てきたのだが、赤い制服に身を包んだ彼はまるで玩具の兵隊さんのようだった。

「ご苦労様」と西園寺オーナーが声を掛けると、男性は「ありがとうございます」と嬉しそうに返事をして、トランシーバーに向かって何か指示を出した。

するとゲートが左右にスライドし始めた。以前はこれほどセキュリティが厳しくなかったと記憶するが……昼間だったからだろうか？

ゲートを抜け、少しすると背後でガチャンと音がした。檻に閉じ込められたウサギの気分だ。相変わらず辺りは薄暗いし、街灯に照らせた木々が化け物のようだし、ちょっと帰りたくなった。

しかし、大きくカーブした角を曲がった瞬間、その思いは一気に払拭された。目前に目映いばかりの光りの世界が広がったからだ。

フロントヤードのどの樹にも、あちこちに置かれたクリスマスのオブジェにもオレンジ色のLEDライトが灯され、その向こうには、ライトアップされたホテルが夢の国のお城のように浮かんで見えた。