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第5章 解雇
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「綾時、姫が目覚めるのは王子のキス。野獣のキスじゃないのよ! 本当いやんなっちゃうわ。イチャイチャしちゃって!」
イチャイチャじゃない。これはどう見ても単なる嫌がらせだ。
「ところで、お前、キャラが素になってるぞ」
あっ、そう言えば……そうかぁ、オネエっぽい言葉遣いの方が樫野チーフの素なんだ。
「いやーん、綾時ったら! 寧々ちゃんにバレちゃったじゃない」
「内緒ね」と言いながら、樫野チーフが人差し指を唇に当てニッコリ微笑む。
その仕草がとても可愛く見え、思わず「はい」と返事をすると、「本当、綾時には勿体ないぐらいイイ子」と褒めてくれたが――。
「パーティーが終わったら、前から言ってる寧々ちゃんの賄いを持っていってもらうから。イチャイチャはそれからねっ」
魅惑的なウインクと共に見当違いも甚だしい台詞を言った。その上、それに釣られてか西園寺オーナーまで「それは楽しみだ」と返事をすると舌舐めずりをしたのだ。その姿は益々野獣その者だった。
「うふふ、楽しみなのは賄い? 寧々ちゃん?」
「自分で考えろ。野獣だぞ、食欲は旺盛だ」
「じゃあ、どっちもね」
二人が冗談をわざと言い合っているということなどお見通しだ。だが、内容が内容だけに顔が引き攣る。動けるならグーの手で一発お見舞いしてやりたいぐらいだった。
ムカムカしながら横たわったままでいると、パーティーの開幕らしいファンファーレが鳴り響き、クリスマスソングが流れ出した。途端に店内がざわめき出す。招待されたゲストが入店してきたのだろう。
「じゃあ、寧々ちゃん、閉めるわね」
ところどこに空気穴が空いているガラスの蓋が棺に被せられると、ざわめく外界から私はシャットダウンされる。
イチャイチャじゃない。これはどう見ても単なる嫌がらせだ。
「ところで、お前、キャラが素になってるぞ」
あっ、そう言えば……そうかぁ、オネエっぽい言葉遣いの方が樫野チーフの素なんだ。
「いやーん、綾時ったら! 寧々ちゃんにバレちゃったじゃない」
「内緒ね」と言いながら、樫野チーフが人差し指を唇に当てニッコリ微笑む。
その仕草がとても可愛く見え、思わず「はい」と返事をすると、「本当、綾時には勿体ないぐらいイイ子」と褒めてくれたが――。
「パーティーが終わったら、前から言ってる寧々ちゃんの賄いを持っていってもらうから。イチャイチャはそれからねっ」
魅惑的なウインクと共に見当違いも甚だしい台詞を言った。その上、それに釣られてか西園寺オーナーまで「それは楽しみだ」と返事をすると舌舐めずりをしたのだ。その姿は益々野獣その者だった。
「うふふ、楽しみなのは賄い? 寧々ちゃん?」
「自分で考えろ。野獣だぞ、食欲は旺盛だ」
「じゃあ、どっちもね」
二人が冗談をわざと言い合っているということなどお見通しだ。だが、内容が内容だけに顔が引き攣る。動けるならグーの手で一発お見舞いしてやりたいぐらいだった。
ムカムカしながら横たわったままでいると、パーティーの開幕らしいファンファーレが鳴り響き、クリスマスソングが流れ出した。途端に店内がざわめき出す。招待されたゲストが入店してきたのだろう。
「じゃあ、寧々ちゃん、閉めるわね」
ところどこに空気穴が空いているガラスの蓋が棺に被せられると、ざわめく外界から私はシャットダウンされる。
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