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第5章 解雇
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「だから、西園寺は義兄さんに譲ると何度言ったら分かるんですか!」
チラリと覗くとスマートフォンに向かって西園寺オーナーが怒鳴っていた。
「私はクーラウだけで十分です。義兄さんは優秀だと父さんも言っていたじゃないですか? ええ、分かっています。これが最終通告なんですよね? 花嫁も自力で見つけましたし、後継者問題はこれでピリオドを打って下さい。失礼します」
スマートフォンを耳から離した西園寺オーナーは、深い溜息と共に盛大な舌打ちをして、こちらに向かって歩き出した。
いけない、見つかってしまう!
忍び足で三歩ほど後ろに下がり、わざと足音を立てて今やって来たように角を曲がる。
「わっ!」
「あっ、さっ西園寺オーナー!」
出会い頭に偶然出会った風を装い、声を上げると途端に飛んでくる声。
「遅い! 私は空腹なんだぞ」
どうやら彼は私の様子を見に、厨房に向かう途中だったようだ。
「あっ、すみません」
ここは素直に謝っておこうと頭を下げる。
「それか? お前が作った賄いというのは」
頭を上げると、西園寺オーナーの目が私の抱える半月盆に向いていた。
埃除けにとラップは掛けてあるが、もろ出しもなんだからと布巾も掛けてあるので中身は見えない。
「あっ、はい」
「なら」と早々に踵を返す西園寺オーナーを追い、私たちは社長室に戻った。
部屋には煌々と明かりが点いていた。この前のようなアダルトな雰囲気はない。デスクの上に書類が散らばっている。どうやら彼は仕事をしていたらしい。
他のスタッフは仕事から解放され、打ち上げと称して楽しんでいるというのに……。
「お握り定食です」
ソファーに身を沈めた彼は、随分疲れているように見えた。
チラリと覗くとスマートフォンに向かって西園寺オーナーが怒鳴っていた。
「私はクーラウだけで十分です。義兄さんは優秀だと父さんも言っていたじゃないですか? ええ、分かっています。これが最終通告なんですよね? 花嫁も自力で見つけましたし、後継者問題はこれでピリオドを打って下さい。失礼します」
スマートフォンを耳から離した西園寺オーナーは、深い溜息と共に盛大な舌打ちをして、こちらに向かって歩き出した。
いけない、見つかってしまう!
忍び足で三歩ほど後ろに下がり、わざと足音を立てて今やって来たように角を曲がる。
「わっ!」
「あっ、さっ西園寺オーナー!」
出会い頭に偶然出会った風を装い、声を上げると途端に飛んでくる声。
「遅い! 私は空腹なんだぞ」
どうやら彼は私の様子を見に、厨房に向かう途中だったようだ。
「あっ、すみません」
ここは素直に謝っておこうと頭を下げる。
「それか? お前が作った賄いというのは」
頭を上げると、西園寺オーナーの目が私の抱える半月盆に向いていた。
埃除けにとラップは掛けてあるが、もろ出しもなんだからと布巾も掛けてあるので中身は見えない。
「あっ、はい」
「なら」と早々に踵を返す西園寺オーナーを追い、私たちは社長室に戻った。
部屋には煌々と明かりが点いていた。この前のようなアダルトな雰囲気はない。デスクの上に書類が散らばっている。どうやら彼は仕事をしていたらしい。
他のスタッフは仕事から解放され、打ち上げと称して楽しんでいるというのに……。
「お握り定食です」
ソファーに身を沈めた彼は、随分疲れているように見えた。
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