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第5章 解雇
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「やっぱり貴女は世間知らずのお嬢様ですね。そんなチンケな理由で後継者問題から降りると?」
『じゃあ、どうして? 理由を言って!』
富美乃様の悲しげな声が静かな部屋に響き渡る。途端に西園寺オーナーの顔が苦痛に歪む。
――テレビ電話でなくて良かった……と彼の代わりに安堵する。
だって今の顔……感情がダダ漏れだ。
秘密にしている彼の気持ちを知っているから余計にそう思うのだと思う。
彼は西園寺の家と距離を置きたいと思っているのだ――富美乃様ご夫婦の仲むつまじい姿を見るのが辛いから。
恋愛感情において、拗らせた想いは厄介だと昔何かの本で読んだ。そういう経験がない私でも、彼の吹き出しには胸が痛んだ。西園寺オーナーの強烈な想いが私の胸を撃ったからだ。
「西園寺オーナーはクーラウ(貴女)を愛しているからです!」
堪りかね、思わず口出ししてしまい、ハッと口元を押さえ、スマートフォンと西園寺オーナーに視線を行き来させる。
『――もしかしたら、寧々さん? ご一緒だったの? あっ――ごめんなさい。私ったら……』
その声で、『要らぬことを言った』と彼女がおろおろしているのが手に取るように分かった。
「そういう訳だから、義姉さん、これで切りますよ」
『富美乃さん』とは言わず『義姉さん』と言ったのは私の手前だからだろうか? それとも……想いに決別するためなのだろうか? 深い意味はないのかもしれないが、そんな疑問が湧いた。
『でも……あの……。ええ、また今度ね』
まだ何か言いたげな富美乃様の言葉を、西園寺オーナーは無理やり終わらせ通話終了のボタンを押した。途端に静けさが戻る。
『じゃあ、どうして? 理由を言って!』
富美乃様の悲しげな声が静かな部屋に響き渡る。途端に西園寺オーナーの顔が苦痛に歪む。
――テレビ電話でなくて良かった……と彼の代わりに安堵する。
だって今の顔……感情がダダ漏れだ。
秘密にしている彼の気持ちを知っているから余計にそう思うのだと思う。
彼は西園寺の家と距離を置きたいと思っているのだ――富美乃様ご夫婦の仲むつまじい姿を見るのが辛いから。
恋愛感情において、拗らせた想いは厄介だと昔何かの本で読んだ。そういう経験がない私でも、彼の吹き出しには胸が痛んだ。西園寺オーナーの強烈な想いが私の胸を撃ったからだ。
「西園寺オーナーはクーラウ(貴女)を愛しているからです!」
堪りかね、思わず口出ししてしまい、ハッと口元を押さえ、スマートフォンと西園寺オーナーに視線を行き来させる。
『――もしかしたら、寧々さん? ご一緒だったの? あっ――ごめんなさい。私ったら……』
その声で、『要らぬことを言った』と彼女がおろおろしているのが手に取るように分かった。
「そういう訳だから、義姉さん、これで切りますよ」
『富美乃さん』とは言わず『義姉さん』と言ったのは私の手前だからだろうか? それとも……想いに決別するためなのだろうか? 深い意味はないのかもしれないが、そんな疑問が湧いた。
『でも……あの……。ええ、また今度ね』
まだ何か言いたげな富美乃様の言葉を、西園寺オーナーは無理やり終わらせ通話終了のボタンを押した。途端に静けさが戻る。
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