美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第６章 再就職

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「でしょう？　だから辞めずに続けて。食べたいんでしょう？　私の料理」
「俺の料理も食べられるぞ」

樫野チーフも白戸さんも……なんて意地悪なんだろう。
戻りたくても戻れないというのに――。

「皿洗いの私なんかを引き止めて下さって、ありがとうございます。でも、残念ですが戻りません」

樫野チーフがハーッと深い溜息を吐く。

「寧々ちゃんも綾時も本当、頑固だわぁ」

ん……？

「さっき、西園寺オーナーから辞職のこと、聞いていないと仰ってましたよね？」

そんな風なニュアンスの言葉を確かに聞いた。でも、今の言葉はそれを否定するものではないだろうか？

「嫌だわぁ、寧々ちゃんて相変わらずお利口さん」
「友宏が馬鹿なだけだ」
「純也はそんな馬鹿が好きなんでしょう！」

プンと樫野チーフがそっぽを向く。

「――どういうことでしょうか？」

二人の間に割って入り、話の先を促す。

「公に発表していないってこと」
「益々、意味が分かりません」
「だから、私だけ綾時に聞いたってこと」
「どうしてさっさと発表しないんですか？」

「そんなの、ねぇー」と樫野チーフが白戸さんと頷き合う。

「決まっているじゃない。貴女を辞めさせたくないからよ」
「はぁぁぁぁ？」

何を馬鹿なことを！

「それは有り得ません」

断定的に反論すると、樫野チーフが「ノンノン」と人差し指を私の目前で振った。