150 / 170
第6章 再就職
18
しおりを挟む
「素材には拘りを持っているからねっ」
そう言えば、樫野チーフは『安心・安全・美味』をモットーにしている。
「牛乳や卵だけじゃないよ。お客様に召し上がって頂くんだ。どれも最高の材料じゃなきゃ。だろ? 寧々ちゃん」
料理に対する樫野チーフの姿勢はいつもどんな時も真摯だ。だから、こんな風に料理の話をするときはオネエ様を封印するんだ、と彼の変身を理解する。
「――何だか恥ずかしいです」
「恥ずかしいって?」
「私は自分の欲求を叶えるためにクーラウに入ったから……」
動機が賄い目当てだなんて……不純すぎる。樫野チーフの尊大な言葉を聞いた後だ。尚更だ。穴を掘って埋もれてしまいたくなる。
「そう言えば寧々ちゃんって、美味しい賄いが食べたかったんだったね?」
「恥ずかしながら、そうです」と頷くと、樫野チーフは「舌を肥やすのも料理人の努めだよ」と慰めるように言ってくれた。
「寧々ちゃんの場合、まだ、どの賄いを食べても美味しいとしか思わなかったよね?」
確かにその通りだった。
「それは本当に美味しい物を、まだ多く食べていないからだ。でも、寧々ちゃんのお握り定食は本当に美味しかった。美味を感じる舌を持っている証拠。だから、精々美味を舌感すればいい」
「――いっぱい食べたら、樫野チーフのような料理人になれますか?」
「いや、それは無理だろう」と間髪入れず白戸さんが答えた。
「友宏は天才だからな」
「――ごもっともでございます」
恐縮して項垂れると、途端に場が笑いに包まれた。
そう言えば、樫野チーフは『安心・安全・美味』をモットーにしている。
「牛乳や卵だけじゃないよ。お客様に召し上がって頂くんだ。どれも最高の材料じゃなきゃ。だろ? 寧々ちゃん」
料理に対する樫野チーフの姿勢はいつもどんな時も真摯だ。だから、こんな風に料理の話をするときはオネエ様を封印するんだ、と彼の変身を理解する。
「――何だか恥ずかしいです」
「恥ずかしいって?」
「私は自分の欲求を叶えるためにクーラウに入ったから……」
動機が賄い目当てだなんて……不純すぎる。樫野チーフの尊大な言葉を聞いた後だ。尚更だ。穴を掘って埋もれてしまいたくなる。
「そう言えば寧々ちゃんって、美味しい賄いが食べたかったんだったね?」
「恥ずかしながら、そうです」と頷くと、樫野チーフは「舌を肥やすのも料理人の努めだよ」と慰めるように言ってくれた。
「寧々ちゃんの場合、まだ、どの賄いを食べても美味しいとしか思わなかったよね?」
確かにその通りだった。
「それは本当に美味しい物を、まだ多く食べていないからだ。でも、寧々ちゃんのお握り定食は本当に美味しかった。美味を感じる舌を持っている証拠。だから、精々美味を舌感すればいい」
「――いっぱい食べたら、樫野チーフのような料理人になれますか?」
「いや、それは無理だろう」と間髪入れず白戸さんが答えた。
「友宏は天才だからな」
「――ごもっともでございます」
恐縮して項垂れると、途端に場が笑いに包まれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる