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第6章 再就職
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富美乃様を愛していた西園寺オーナーは苦しんでいた。だから、これ幸いと西園寺の家から離れたのだ。
大学院を出た西園寺オーナーは世界を回り、我が道を模索した。そして、辿り着いたのが、自らが開店した“美食倶楽部クーラウ”、奇しくも母親と同じ飲食店だった。
しかし、義父も京極氏も富美乃様も、未だにそれを良しとしていない。なぜなら西園寺を継ぐのはオーナーだと思っているからだ。
それぞれの思いが複雑に絡まり合い、今に至っているというわけだ。
「ご馳走様」
西園寺オーナーが手を合わせた。
「吹き出しが視えるお前なら、これで全て分かっただろう?」
「はぁ……まさか西園寺オーナーがあのお店の子だったとは」
かなり衝撃的な事実だった。
「母の味を――お前のことだ。おそらく研究し倒したんだろうな」
「仰る通りです」
「――ありがとう。あの味を残してくれて」
うわっ、まただ! 二度目の『ありがとう』になぜか恐怖を覚え、思わずよけいな言葉を発してしまった。
「それにしても、西園寺オーナーってマザコンだったんですね」
途端に彼の機嫌が悪くなる。
「バカか! 母一人子一人だったから母親思いだっただけだ!」
しかし、その顔は真っ赤だった。
「今の言葉で思い直した。戻ったら皿洗いを卒業させやろうと思っていたが、却下だ!」
「えっ! もしかしたらコックとして再就職させてもらえたんですか?」
「だからそれは却下だ。今までどおり、皿洗いと雑用係に励むんだな」
「それってパワハラじゃないですか!」
「何とでも言え。店に戻れるんだ幸せに思え」
そりゃあ、クーラウの賄いがまた食べられるのは嬉しいが……。
「精々こき使ってやる。楽しみしていろ」
西園寺オーナーのこの顔、何だかすっごい悪い顔だ。絶対に裏がある!
このとき『正直は一生の宝』より『正直者が馬鹿を見る』を、我が心に教訓とした方が身のためだと私は悟った。
大学院を出た西園寺オーナーは世界を回り、我が道を模索した。そして、辿り着いたのが、自らが開店した“美食倶楽部クーラウ”、奇しくも母親と同じ飲食店だった。
しかし、義父も京極氏も富美乃様も、未だにそれを良しとしていない。なぜなら西園寺を継ぐのはオーナーだと思っているからだ。
それぞれの思いが複雑に絡まり合い、今に至っているというわけだ。
「ご馳走様」
西園寺オーナーが手を合わせた。
「吹き出しが視えるお前なら、これで全て分かっただろう?」
「はぁ……まさか西園寺オーナーがあのお店の子だったとは」
かなり衝撃的な事実だった。
「母の味を――お前のことだ。おそらく研究し倒したんだろうな」
「仰る通りです」
「――ありがとう。あの味を残してくれて」
うわっ、まただ! 二度目の『ありがとう』になぜか恐怖を覚え、思わずよけいな言葉を発してしまった。
「それにしても、西園寺オーナーってマザコンだったんですね」
途端に彼の機嫌が悪くなる。
「バカか! 母一人子一人だったから母親思いだっただけだ!」
しかし、その顔は真っ赤だった。
「今の言葉で思い直した。戻ったら皿洗いを卒業させやろうと思っていたが、却下だ!」
「えっ! もしかしたらコックとして再就職させてもらえたんですか?」
「だからそれは却下だ。今までどおり、皿洗いと雑用係に励むんだな」
「それってパワハラじゃないですか!」
「何とでも言え。店に戻れるんだ幸せに思え」
そりゃあ、クーラウの賄いがまた食べられるのは嬉しいが……。
「精々こき使ってやる。楽しみしていろ」
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