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障害編
13話【off duty】戸叶 梨沙 26歳:「力になりますよ」(梨沙編)
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信じらんない。あたしの話を断っておいて、結局は、デートじゃん。だったら最初から、デートがあるから今日は無理っていえばいいのに。IDカード落としたなんていっておいて、高校時代の先輩とやらとデート。
気になってこっそり藍原先生のあとをつけてみたら、まさか、男と喫茶店で待ち合わせなんて。彼氏がいるくせに、二股かける気? サイテー。彼氏にばらしてやろうかな。でも、誰が彼氏か知らないし。だったら……。
Y大付属病院のホームページを検索してみる。内科で、あの優男の写真を探して……いたいた。神沢隼人っていうんだ。ふうん、マイルドな感じでモテそうじゃん。
むかむかしながら近場で夕飯を食べて、帰ろうとしたところに、偶然、大通りの端っこに立ち尽くしてる神沢先生を見つけた。藍原先生はいない。別れたあとかな? でも……これって、チャンス。
「……神沢先生!」
声をかけると、神沢先生はびっくりしたようにあたしの顔を見た。
「えっと……誰、だっけ……」
「戸叶です。こないだの地方会で、藍原先生と一緒にいた」
「ああ……! そうか、M病院の……」
思い出してくれたみたい。
「こんなところでどうしたんですか? 藍原先生は一緒じゃないんですか?」
先生はまたびっくりしたような顔をした。
「香織ちゃんと一緒にいたの、知ってるの……?」
「はい、さっき見かけましたよ。喫茶店で一緒にいるところ」
「ああ……。そうなんだ、一緒にご飯を食べてね、今、別れたところ……」
神沢先生、妙にソワソワしてる。
「……藍原先生と、何かあったんですか? よければ話、聞きますよ?」
神沢先生はちょっと困ったような顔をしたけど、あたしは返事を待たずに先生の手を握った。そのまま、喫茶店へ連れていく。藍原先生との関係を聞き出すチャンス!
「こないだの地方会で、たまたま再会したんですよね?」
神沢先生はためらいがちに話し始めた。昔、藍原先生と付き合ってたこと。すれ違いがきっかけで疎遠になったけど、自分はまだ先生を好きなこと。藍原先生も自分を嫌いなわけじゃないはずだけど、うまく嚙み合わないこと。
……なるほど、元カレってわけね。久々の再会で、焼け木杭に火がついたって感じ? 藍原先生、うまくじらして神沢先生の気を引こうって魂胆ね。ひょっとしたら、しばらく二股で様子を見て、あわよくば乗り換えようとしてるかもしれない。だって、Y大の医者で、これだけ優しそうで自分のことを好いてくれるんなら、絶対本命になるでしょ。
「……神沢先生」
あたしは神沢先生の手に自分の手を重ねた。
「あたし、力になりますよ。さっき、道端で先生を見かけたとき、すごく辛そうで、見ていられませんでした。あたし、何でも相談に乗りますから」
神沢先生は、力なく笑った。
「ありがとう、戸叶さん。優しいね」
「梨沙でいいですよ。藍原先生の様子、気になるようだったら、いつでもこっそり教えちゃいますから」
そういって連絡先を渡した。
「ありがとう、梨沙ちゃん」
神沢先生は、渡したメモをためらいがちにポケットにしまった。
気になってこっそり藍原先生のあとをつけてみたら、まさか、男と喫茶店で待ち合わせなんて。彼氏がいるくせに、二股かける気? サイテー。彼氏にばらしてやろうかな。でも、誰が彼氏か知らないし。だったら……。
Y大付属病院のホームページを検索してみる。内科で、あの優男の写真を探して……いたいた。神沢隼人っていうんだ。ふうん、マイルドな感じでモテそうじゃん。
むかむかしながら近場で夕飯を食べて、帰ろうとしたところに、偶然、大通りの端っこに立ち尽くしてる神沢先生を見つけた。藍原先生はいない。別れたあとかな? でも……これって、チャンス。
「……神沢先生!」
声をかけると、神沢先生はびっくりしたようにあたしの顔を見た。
「えっと……誰、だっけ……」
「戸叶です。こないだの地方会で、藍原先生と一緒にいた」
「ああ……! そうか、M病院の……」
思い出してくれたみたい。
「こんなところでどうしたんですか? 藍原先生は一緒じゃないんですか?」
先生はまたびっくりしたような顔をした。
「香織ちゃんと一緒にいたの、知ってるの……?」
「はい、さっき見かけましたよ。喫茶店で一緒にいるところ」
「ああ……。そうなんだ、一緒にご飯を食べてね、今、別れたところ……」
神沢先生、妙にソワソワしてる。
「……藍原先生と、何かあったんですか? よければ話、聞きますよ?」
神沢先生はちょっと困ったような顔をしたけど、あたしは返事を待たずに先生の手を握った。そのまま、喫茶店へ連れていく。藍原先生との関係を聞き出すチャンス!
「こないだの地方会で、たまたま再会したんですよね?」
神沢先生はためらいがちに話し始めた。昔、藍原先生と付き合ってたこと。すれ違いがきっかけで疎遠になったけど、自分はまだ先生を好きなこと。藍原先生も自分を嫌いなわけじゃないはずだけど、うまく嚙み合わないこと。
……なるほど、元カレってわけね。久々の再会で、焼け木杭に火がついたって感じ? 藍原先生、うまくじらして神沢先生の気を引こうって魂胆ね。ひょっとしたら、しばらく二股で様子を見て、あわよくば乗り換えようとしてるかもしれない。だって、Y大の医者で、これだけ優しそうで自分のことを好いてくれるんなら、絶対本命になるでしょ。
「……神沢先生」
あたしは神沢先生の手に自分の手を重ねた。
「あたし、力になりますよ。さっき、道端で先生を見かけたとき、すごく辛そうで、見ていられませんでした。あたし、何でも相談に乗りますから」
神沢先生は、力なく笑った。
「ありがとう、戸叶さん。優しいね」
「梨沙でいいですよ。藍原先生の様子、気になるようだったら、いつでもこっそり教えちゃいますから」
そういって連絡先を渡した。
「ありがとう、梨沙ちゃん」
神沢先生は、渡したメモをためらいがちにポケットにしまった。
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