1 / 55
マッチングアプリでマッチング!
マッチングアプリでの出会い_1
しおりを挟む「――私と、結婚を前提に付き合ってくれないか?」
柔らかい笑顔が印象的な男性に一人の女性が告白を受けていた。たった今自分の理想的でかつ高嶺の花のような男性に告白を受けたのは【東条ゆあ-とうじょうゆあ-】29歳。いたって普通のOLだ。念入りに手入れされた黒髪のロングヘアは、やや白い彼女の肌によく似合っていた。中肉中背でメイクも薄く、平均的な身長の彼女は、自分で『私のような人はどこにでもいるから』と、やや自嘲気味に笑う癖があった。だから『自分が理想的で素敵な男性に出会うことはない』と思っている節があったし『別に自分じゃなくても良い』なんて思うことも多々るような、少し自己肯定感が低めの女性。
そんなことを思う彼女に告白した、彼女が自分とは正反対だと考えるくらいの、誰もが羨むような見た目も地位も性格も持ち合わせた男性。【成瀬ハルト-なるせはると-】33歳。爽やかな笑顔に、パリッとした細身のスーツが良く似合っている。――ゆあの務める会社の社長だ。
ゆあは今、1人社長室に呼び出されて、社長に愛の告白をされている。
「私は、ゆあ、君と結婚したいと思っている。君も、そうなんだろう?」
突然の出来事に理解の追い付かないゆあは『なにが起こっているのか』を必死に考えようと、関係のありそうな出来事を必死に思い出していた――。
――これは、先週末の話である。
眉間にしわを寄せて、スマホの画面に表示されたアプリの画面を見つめている女性。彼女こそが東条ゆあで、今見つめているアプリは巷で流行中の【DE@E-デアッテ-】というマッチングアプリだった。このマッチングアプリはカップルの成約数が多く、かつ、その後結婚に至るまでの報告も多い、恋人探しや結婚相手探しをしている人にとって優秀な噂のあるアプリだった。
異性と付き合う経験も、性的な経験も人並みにあるゆあであったが、周囲は結婚報告や出産報告はては新居を構えての引っ越し報告が増えており、今恋人のいないゆあはみんなの知らぬところで密かに焦っていた。こういった連絡が増えたということは、必然的に出会いの場を設ける連絡、異性のいる場へ行こうという誘いは減っている。結婚式の披露宴であれば新郎新婦の友人と出会えるかもしれないが、実際問題、簡単に話しかけたり連絡先を交換することは難しい。
今まで付き合ってきた男性も、どこか自分が相手の押しに負けて付き合った雰囲気もあったし、まだ心の底から『好き!』と言える相手には出会えていないような気がしていた。だから別れる時もあっさりと別れていたし、そこから次の彼氏ができなくても特にしていなかった。こちらへ連絡をくれる異性の誘いも面倒だからと断る時もあれば、適当に出掛けることもあり本当に『友達として』の付き合いばかりしていた。……自分からは。
そろそろ、彼氏がほしい。可能なら、結婚も視野に入れて。子供もほしいし、それまでは夫婦水入らずで出かけたい。そんなことを考えていたゆあは、悩んだ末このアプリDE@Eへの登録を決めた。
「……ええい、ままよ!」
たった1回のマッチングアプリ登録が、自分の運命を大きく変えるとも知らずに。
「……で? なにをすれば良いのかな……?」
そう、彼女にとって初めてのマッチングアプリ登録だったため、なにもかもが手探りだった。まずは簡単にプロフィールを登録し、男性側のプロフィールを確認する。マッチングアプリで彼氏を捕まえた友人に連絡して、プロフィールの書き方と写真の撮り方も聞く。ネットで調べてメッセージの送り方や返信の仕方、相手のプロフィールやメッセージで確認しておきたいところも学び、彼氏を作る準備は万端だ。貰った情報を基に一生懸命プロフィールを考え、実物とは離れすぎない程度に盛れた写真を撮る。
「これで、良いかな……?」
なにか試験でも受けるような緊張感に包まれながら、ゆあは【登録】と書かれたボタンをタップした。
「お、押しちゃった……! だ、大丈夫かな? 変なところなかったかな?」
ドキドキと落ち着かない感覚が続く中、ゆあはアプリのトップ画面に表示された『イベント開催決定!』という文字に目をやった。
「……? マッチングアプリでイベント……?」
元々マッチングアプリ初心者のゆあにとって、アプリでのイベントとはどんなものか想像もつかなかった。興味本位でそのバナーをタップすると、そこに書かれていたのは『マッチングアプリ登録者が参加できる、リアルなマッチングのイベント』つまり、オフ会だった。
「へぇ、こんなのあるんだ」
よくよく説明を読んでみると、アプリがリリースされてから初めてのリアルでのイベントであること、お試しで行うため参加者は抽選で募集すること、大きなレストランを貸し切っての、食事会がメインであることがわかった。『実際に会って話してみたいけど、なかなか初めての相手を誘うには勇気のいる人たちへ』とも書かれている。
いざマッチングしても、会うまでに至らない。会ってみたいとは思うものの、なにを話して良いのかわからない。本当にこの人が実在しているのか。危ない人ではないのか。自分は受け入れてもらえるのか。この運営は健全なのか。色々と不安が先立って、勇気の出ない人向けに考えられたもののようだ。
申込期限は今日となっており、抽選発表も本日中となっている。イベント開催日まで日付の猶予もあまりなかったが、開催日はたまたま予定のない休日だったため、少し運命のようなものも感じていた。
15
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる