【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール

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第一章 戻る時間

3、

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「何事だ!!」

 一体何が起きたのか、聞きたいのは私のほうだ。起きたことが理解できず呆然としていたら、けたたましい音を立てて祖父が部屋に飛び込んで来た。

「こ、これは一体……!?」

 最近はめっきり白髪が増えたお祖父様は、粉々になった箱が散らばる惨状に言葉を失う。
 さて、どう説明したものか……。
 また叱られるのだろうと嫌になりながらも、自分の意図したことでないことを理解してもらわねば。
 今ここに、私をおとしめようとする輩はいない。兄も、ミリスも。正直に話せば、祖父の怒りも少しはマシになる……と期待したい。

 そう思っていたら、ガッと肩を掴まれた。

「え……」
「リリア、これはお前がやったのか!?」
「は、はい、ごめんなさい!!」

 勢いに押されて思わず謝ってしまった。だが義妹の件でついた嘘とは違い、これは確かに私の責任だろう。どうして箱が壊れたのかは分からないが、私が歌を歌ったことがきっかけな気がするから……原因は私ということだ。

 ああ、怒られる。またどこかに閉じ込められるのだろうか。
 嫌と言うよりいい加減ウンザリだし、お腹もすいた。せめて明日にしてくれないだろうか。

 だがお祖父様の反応は意外なものだった。

「何をした? 何をしたらこのようになった?」
「え? ええっと……退屈なので、歌ってました」

 言ってから、しまったと口を押さえるが、出た言葉は戻らない。歌うのもだが、退屈なのでとか言ってしまった。反省してないと怒られるではないか。焦るが、言ってしまったものはどうにもならない。

 怒鳴られる!
 そう覚悟してギュッと目を閉じた。
 が。

「でかしたぞ、リリア!!!!」

 まさかの反応。
 見たことも無い程嬉しそうな顔をして、お祖父様は私をギュッと抱きしめてくださったのだ。

 ど、どういうこと?

「まさかお前に魔力があったとは! おそらく歌が発動手段なのだな! 珍しいが過去に無かったわけではない、素晴らしいぞ!!」

 今夜は宴だ!
 と叫んで、お祖父様は出て行ってしまった。
 駆け付けたメイド達が慌てて部屋を片付ける中で、私は呆然と立ち尽くすのだった。

 家族に愛されなかった私。
 10歳の時点では辛うじてまだ、情は私に向けられることもあった。だが、既に愛情は美しいミリスに移り始めていた。

 けれど今日、どうやら私は手に入れたようだ。
 お祖父様からの関心を。それを愛情と呼べるものかと言えば怪しいが、少なくともお祖父様は私に関心を示した。これはとても重要な変化だ。
 これまでは、お祖父様が亡くなるまで、私への関心も情も一切なかったのだから。いや、あの祖父は家族の誰にも関心を示さず、情を与えなかったけれど。いつも冷めた目で、家族に一線を引いていた。

 遠い記憶、何度目かのループで得た情報では、お祖父様は魔法マニアなんだそうな。魔法に憧れ、魔法について学び……けれど、自身に魔法の才が無いと分かった時、とてつもなく凹んだとかどうとか。

 あの箱の壊れ様は尋常では無かった。実際衝撃は凄かった、よく怪我しなかったなと思う。
 10歳の私が殴って壊せるはずもない。
 即座に私が魔法で壊したと結論付けたのだろう。

 魔法? この私が? 魔力なんて、持ってないと……家族の誰も持たず、私自身も持っていないと思っていたのに。

 呆然としながら、祖父が出て行った扉のほうを見やった。
 お祖父様はまだ健在で、公爵という地位にある。お父様も兄も後継という立場なだけで、祖父こそがこの家の、領土の支配者。父も頭が上がらない相手。味方につければ、これほど強力な存在は居ないだろう。
 何度もループしてきたのに、今の今まで気付けなかったとは。これまでと違う行動は、大正解だったということか。
 男尊主義な祖父は、けして私を可愛がってはくれなかった。けれどこれで状況はかなり変わるだろう。あの祖父の喜びようでは、確実に変化が生じる。

 ただ、一つだけ問題がある。
 これこそが重要。

 問題は、お祖父様が、私が14歳の時に病で亡くなること、なのよね。
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