6 / 10
6、
しおりを挟む「な、な、な、な……」
「なにぬねの」
「何するんですか!」
「違いましたか、ビスタさんは面白くない方ですね」
「いきなり殴るなんて!酷い!」
私の話を一切聞かず、ビスタさんは我が道を行かれる方だと分かりました。まあ私も貴女の話など聞くつもりはありませんが。
「ビスタさん」
「はい!」
まだ何か言ってるのを遮って名前を呼べば、ピシッと背筋を伸ばして返事されました。そんなに圧をかけたつもりはないんですけどね、威圧感というものに免疫ないのでしょうか。
「もう一度言います、嘘はいけません。私は嘘つきは嫌いです」
「嘘じゃありません!実際に今殴られて……」
「うん。黙って聞きなさい?」
私はまだ話してる最中なのです。話を遮るな……遮らないでください。
ムギュウと両頬をつぶせば、見事な『3』の口の出来上がりです。あら可愛い。
「貴女はカルシュ様と良い仲なんですよね?」
問えば話せない代わりにコクコクと頷くビスタさん。その返答に満足して私も頷き、そして言った。
「では未来の王となるカルシュ様……の側室となるのですから、嘘つきは駄目です。そんな心構えでは、たとえ側室であっても認められないでしょう」
「ひゃひゃわひゃひゃひゃ……」
「何言ってるのか分かりません。ほら頬を離してあげましたよ、ちゃんと話してください」
「じゃあ私が正室になれば問題ないでしょ!?」
「どうしてそうなるんですか」
本当に話が通じませんね。もう一度両頬をムギュっと潰してさしあげましょう。
「正室だろうと側室だろうと、嘘つきがなれると思わないでくださいね。確かに政治的には騙し合い化かし合い、嘘のつき合いもあるでしょう。ですがそれは正室側室には……特に側室には求められてません。騙し合い化かし合いはともかくとして、嘘つきが王のお心を癒せるとお思いで?」
国母たる王妃は嘘をつく必要性も出て来るでしょう。ですが基本は正直でなければいけません。不誠実で国民が慕ってくれるような存在になれるでしょうか?そして側室は王妃よりも王の心に添う必要のある存在。私とカルシュ様のように、愛のない夫婦となるのが目に見えてる場合は特に。側室の存在は王の安らぎ・癒しとならねばならないのです。
ですから。
「私は貴女が嘘つきとならぬよう、貴女が言ったこと全てを真実にしましょう」
「ふえ!?」
「という理由から、先ほどのビンタへとつながるわけです」
貴女先ほど私に頬をぶたれたと言ってましたものね。
「まず一つの嘘が真実となりました」
「え、え、あの……」
両頬を解放してあげたビスタさんの顔は真っ青だ。あらあら、そんなに喜ばなくても。
「次はええっと、教科書を破った、でしたっけ?早速貴女の教室へ行きましょう」
「いやいやいやいや!ちょい待ち!教科書はもう破ったでしょ!?」
「私はまだ破ってません」
「嘘よ、破ったわよ!破られた箇所を友達に見せたもの!」
「ではその教科書とやらを見せてください。そして鑑定に出しましょう。本当に私が破ったなら私が触った痕跡が出て来るはずです。そしたら貴女は嘘つきではなくなりますね」
「え、いや、そこまでしなくても……」
「ほらほら早く!まさか1ページ破けてるだけで騒いだわけではありませんよね?」
「ちょ、押さないでよ!てかあんた、何ページ破く気!?」
「私が本気になれば全ページ引き裂きますわ!」
「それ満面の笑みで言う事か!?」
結局。
破られたと騒いでいた教科書は1ページの半分程度と、ちっとも大したことありませんでした。私はその教科書を触らずに、側にいたビスタさんのお友達に鑑定に出すように言っておきました。王宮の鑑定士は優秀ですからねえ、誰が教科書を触ったか、直ぐに分かることでしょう。
とりあえず1ページなんて物足りな……ゴホン、1ページなんて破いたとは言えませんので。
数冊の教科書を思い切り「ふんぬう!!」という気合いと共に破り捨てておきました。
ビスタさんは喜びのあまり床につっぷして涙に濡れておりましたよ。あらあら。
「これで真実が二つになりましたね、ビスタさん!!」
「笑顔で言うなああ!!!!」
108
あなたにおすすめの小説
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです
シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?
娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。
しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。
婚約破棄されている令嬢のお母様視点。
サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。
過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた──
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は──
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
「華がない」と婚約破棄されたけど、冷徹宰相の恋人として帰ってきたら……
有賀冬馬
恋愛
「貴族の妻にはもっと華やかさが必要なんだ」
そんな言葉で、あっさり私を捨てたラウル。
涙でくしゃくしゃの毎日……だけど、そんな私に声をかけてくれたのは、誰もが恐れる冷徹宰相ゼノ様だった。
気がつけば、彼の側近として活躍し、やがては恋人に――!
数年後、舞踏会で土下座してきたラウルに、私は静かに言う。
「あなたが捨てたのは、私じゃなくて未来だったのね」
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる