7 / 16
6、私は姉の悪意を見たくない
しおりを挟む「おはよう、二人共」
馬車から降りたところで、そこには王太子が立っていた。
待っててくれたのだろうか?もしそうなら嬉しい。
浮かれそうになる心を宥めて、私は挨拶を返した。
「おはようございます」
久しぶりにお会いするルーカス様は変わらぬ優しい笑みを浮かべてくださった。
でも何だろう?
変わらないはずなのに、どこか……
「おはようございます、ルーカス様」
「ああ、おはようマリナ」
「今日は良いお天気ですわね」
「そうだねえ、先日は随分荒れたからね」
「妹の学園初日が良い天気で良かったですわ」
「うん、そうだね」
何気ない会話。
私を思いやってくれてると嬉しくなりそうな、勘違いしそうになる姉の言葉。そしてそれに返すルーカス様。何気ない二人の会話。
そのはずなのに。
「!?」
目を疑った。
だが現実に目の前で起きた状況に、私は言葉を失ってしまったのだった。
「じゃあねルナ。一年生はあちらの校舎になるわ。迷わないよう気を付けてね」
「ルナ、楽しい学園生活を!」
言葉だけなら普通なのだ。本当に普通。
だがそう言った二人は、あろうことか腕を組んで去って行ったのだ。
ルーカス様の婚約者である私の目の前で。
姉は彼の腕に自身の腕を絡めた。それはとても極自然な動きで、今日初めてそうしたとは……とても思えなかった。
ルーカス様もまた、それに抵抗することもなく、自然に受け入れていた。
私が居なかった一年。ルーカス様と姉の二人に接点が無かったなんて、思えない。思わなかった。
だが予想以上の二人の接近に、否応なしに私の心はかき乱されるのだった……。
* * *
今朝の一件で、私の心はかき乱され、入学の式典の内容は何も頭に入ってこなかった。
教室から式場へ、そして気付けばまた教室に戻っていた。
ずっと私の頭を占めるのは、朝の姉の行動。
あれは特に他意の無い行動だろうか?
ルーカス様と腕を組む行為……それは姉にとって大した意味を持たないのだろうか?
否。
姉は今もルーカス様に恋してる。その気持ちは静まるどころか、むしろ激しく燃え盛っているように私には感じられていた。
ならばあの行動には、好意によるものが大きいだろう。
そしてそれを私へと見せつける、悪意ある行為。そう考えるのが妥当だ。
ではルーカス様は?
彼はどうして姉の好きにさせてるのだろう?
この1年、彼が学園に通って1年。
たった1年、わずか1年。
けれど、長い1年──。
確実に、私と姉マリアとルーカス様との関係に……変化が起きてる事を、嫌でも感じた。
確実に。
亀裂が入ってる事を……感じざるを得なかったのだ。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私は私で幸せになりますので
あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。
ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。
それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。
最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。
真実の愛の祝福
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。
だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。
それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。
カクヨム、小説家になろうにも掲載。
筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。
こうやさい
恋愛
その日女性を背にした婚約者さまに婚約破棄かお飾り妻になるか選ばされました。
これ書いたらネタバレな気もするが、余命付きの病人が出るので苦手な方はお気を付け下さい。Rはまだ死んでないからとりあえず保留。
……てかコイツ、しれっと余命ぶっちぎりそうな気がする。
前作の止めたところがエグかったのか(通常だと思うけどなー、ヤバいか?)再開条件説明しとけと言われましたが……他の更新出来ない時なのは前提であと思い出したヤツというか気分(爆)。
いきなり理由が分からずお気に入りが複数入ってそれが続く(短期なら上のほう作品のこの作品を読んでる人は~に入ってて一応チェックするためのとりあえず目印あたりの可能性が高いと判断)とかしたらびびって優先はするだろうけどさ、それ以外のしおりとかエール(来たことないから違ってるかもしれん)とかポイントとか見に行かなきゃ分からないから更新している最中以外は気づかない可能性あるし、感想は受け付けてないしだからアルファ的な外部要因ではあんま決まらない。決めても基本毎日連続投稿再開するわけでもないし。
あと大賞開催中のカテゴリとかは優先度下がる。下の方だし、投票作品探してる人は投票ページから見るだろうから邪魔にはならないと分かってるんだがなんとなく。今とか対象カテゴリが多くてファンタジーカップまで重なってるから恋愛カテゴリが更新される可能性は地味に高い(爆)。ほっこりじんわりは諦めた。
辺りで。最終的にはやっぱり気分。今回既に危なかった。。。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/442748622
ここへ何をしに来たの?
柊
恋愛
フェルマ王立学園での卒業記念パーティ。
「クリストフ・グランジュ様!」
凛とした声が響き渡り……。
※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる