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7、
しおりを挟むこの世界で治癒魔法が使える者。それ即ち聖女なり。
それは誰もが知る、この世界の言い伝え。
けれど聖女の存在が確認されてから幾百年。もう聖女は現れない。あれはただの伝説だ、おとぎ話だと言われるようになって久しい。
それほどに長く、聖女の存在は確認できなかった。
だが、今日。
突然フィリアがその能力に目覚めた。
ショックな出来事があったからか。
それとも自覚してなかっただけなのか。
分からないが、そんな事はどうでも良かった。
重要視すべきは、フィリアが聖女だということ。
別に認定とか何もない。
治癒魔法を使えれば、聖女なのだ。
そしてフィリアは神殿の関係者に連れられ、神殿へと向かった。家にも連絡が行ってる事だろう。
学園は大騒ぎだ、授業どころではない。生徒は速やかに下校しなさいと伝えられた。
王太子は国王に伝えなければと大急ぎで帰って行った。
そして残されたのは、私。
と、ベリアトになぜかロビー。
「ええっと……それじゃあ私も帰っていいでしょうか?」
「ああ、そうだね……。大丈夫だとは思うけど心配だから送るよ」
「え、いえいえ、馬車が有りますので」
「でも下校時間じゃないからね。来るまで時間がかかるだろう?」
そう言われてしまえば確かにそうだと頷くしかない。
王太子やベリアトの馬車は、いつでも利用できるようにと待機してるらしいのだが、通常は馬車は一旦屋敷に戻ってる。下校時間に迎えにくるのだ。体調不良などで早退するときは、先生が伝令魔法で連絡してくれる。
迎えが来るまで待たねばならない。
「うちの馬車で送るよ」
待つのは別に苦でも無いし、普通に待つつもりだったのだけど。親同士付き合いのあるベリアトに言われては、断りにくい。
さっきの件があるから何となく気まずいけれど、仕方が無い。
私は好意に甘えることにした。
「で、どうしてロビー様も一緒なんですか?」
当然のように馬車に乗ってるし。なぜだと聞いていいと思う。思うので聞いた。
「方角同じなんだからいいじゃない」
方角云々はどうでも良くて。
あなた毎日転移魔法で通学してるでしょーが。知ってるんだからね。
なのにそんな楽な方法を蹴ってわざわざ馬車に乗った。何かしらの意図があると思うのが当然よね。
「やだなあ、勘ぐっちゃって。何でもないよ、気分だよ気分。ついでにさっきの件を聞きたいなあと思っただけ」
「それ絶対『ついで』が本命の理由ですよね」
突っ込んだら、アハハ~と笑って誤魔化された。いや誤魔化しきれてないし!バレバレですからね!
「まあでも、ホントの話どうなの?本当にフィリア嬢を囮にしたの?」
「んな馬鹿な」
「だよねえ」
以上、尋問終わり。
────え。
「え、それで終わりですか?」
「え、それ以外聞くことある?」
「ええええ……」
さっき、思いっきり私のこと白い目で見てましたよね。絶対フィリアの話を真に受けてましたよね?
不審げな目でそう言えば、「そんなわけないでしょ」と返されてしまった。
「どちらか一方だけの言い分を信じるなんて馬鹿の極みだよ」
「そうだな。少なくとも両者の話を聞くのが絶対だろう」
「そうそう。第三者が居ればそっちも当然聞くけど、今回のは無かったからねえ」
「いや、居るぞ。俺が見ていた」
凄くまともな事をロビーが言うので思わず感動してしまいました。すみません、フィリアの言葉を鵜呑みにしてるなこのドグサレ魔法使い!とか思ってました、ほんとゴメン!
さしてまさかのベリアト目撃者発言。
え、見てたの?そうなの?どっからだ?
「素振りでもしようと人気の無いところを探していたら二人が見えてね。話しかけようとしたら魔物が居て驚いたよ。慌てて駆け寄って……」
そして事の一部始終を見たと。
「じゃあどうしてさっき、何も言わなかったんですか?」
おかげでちょっと……いや、かなりの誤解を受けたと思います。訂正してよ、その場で!
「いやあ……どうしてそんなこと言うのかなあと不思議でさ。真意を探ろうとしたんだよね」
探れてませんやん!なに、私評価が下がり損!?
ちゃんとみんなに説明しておくから~と言われたけれど、多分もう遅い。
悪い噂ってのは瞬く間に広がるもので。
明日以降の学園生活が、不安でいっぱいになるのだった。
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