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しおりを挟む「えっと状況まとめいいかな?」
相も変わらず飄々と……この場で魔王リューランド以外でいつも通りにいられる唯一の人物。
大魔導士のロビーは手を上げて発言してきた。
「はい、ロビー君どうぞ!」
「ありがとう、アイシャ先生!」
思わずそのノリにつられてしまった。
ノッってしまった私に笑顔でロビーは答え。
そしてグルっと全員を見回した。
ドラゴンによって破壊された城の瓦礫から、ほうほうの体で出てきた貴族に使用人たちもワラワラと集まってきたところで。ロビーが状況をまとめる。
「リューランドは勇者じゃないんだね?」
「そうだ」
「この国に魔王が居るのは真実。でもってリューランドが魔王なんだね?」
「そうだ」
「この国を滅ぼしに来た?」
「この国だけじゃないな。人間世界全てだ」
「ちなみに隣国はどうしたの?」
「滅ぼした」
滅ぼしたとか!今サラッと国を滅ぼしたとか言わなかった、この人!?
「え、ラルフ。王家は隣国に魔王のことを問い合わせたりとかしなかったの?」
ビックリしてラルフに聞いたら、フルフルと首を横に振られてしまった。
「だ、だって……勇者が言う事だから……」
だってじゃないわ!かりにも大国が!簡単に一人の発言を信じるなよ!裏付けしなさいよ!てっきりしてると思ってたわ!
「な、なんという事だ……勇者が偽物だったなんて……」
その時、茫然とした様で呟いたのは……城に勤めてた誰か、だった。
最初は一人、それから複数……徐々に増えていく驚愕の声。パニックでも起きるんじゃないかと不安になったその時。
「馬鹿な!」
叫ぶ声がした。
見れば王様だった。
「どうして勇者殿が魔王なのですか!?」
「だからそれは嘘だって言ってるだろ。よくそんな無能で一国の王が務まるよなあ」
それは同感!多分この場に居る者全て思ったと思う!
よく今まで無事だったなあこの国……。
「だ、だが聖女様が……!」
「ほへえ?」
最後の拠り所、のはずの聖女フィリア。
だが彼女は呆けた顔で魔王の足に縋りつくのみだった。
それを見て、王様は絶望する。
そんな様子に、大声で笑いだしたのは──リューランドだった。
「あっはっは!最高!その間抜け面は最高だよ!なーにが聖女だ!俺に言わせればこの女こそ悪女。魔女そのものじゃないか!」
そう言ってリューランドはフィリアを払いのけて足蹴にする。
「友を売り飛ばすような女……魔女以外の何だって言うんだ」
心底不快そうに、眉を寄せて。
そして王に目を向けた。ヒッと聞こえた小さな悲鳴は、王のものかそれとも別の誰かのものか……。
「人間は醜い。魔族よりよっぽどたちが悪い。簡単に仲間も家族も裏切る。己の益のために陥れる。そんなもの……存在していいはずはない」
確かに彼の言う事にも一理ある。人は醜い。この世界で最も醜い生き物かもしれない。
でも。
それでも。
滅んでほしいとは、私には思えなかった。
「だから俺は滅ぼす。人間を。──だが、邪魔者がこの国に居ると聞いてな。まず様子を見て……そしてそいつを殺そうと思ったのだ」
それが死ねば、人類殲滅は簡単だから。
そう言って、リューランドは目を向けた。
ロビーへ。
大魔導士のロビー。彼こそが、いや彼だけが障害となるのだと魔王は言った。
「さすがロビー、魔王すらも警戒する存在」
「へへ~、もっと褒めて!」
余裕ですな!私はガクブルで話してるのに!ちょっとでも話してないと怖くてへたり込みそうだったから。
こんな風に普通に会話してるけど、瓦礫の上に乗ってたり頭上を飛び交うのは無数のドラゴンだからね!
一斉に炎でも吐かれようもんなら……まあ一瞬で黒焦げでしょうね。程よい日焼けになるとか可愛いものにはならないだろうな。
「笑ってられるのも今の内だ。ロビー、お前には死んでもらうぞ」
「そう簡単にやられる俺じゃないよ」
え、何これ何このシリアス展開!
今から殺し合うの?やり合うの!?えええ、それはまずいんじゃないでしょうか。
オロオロする私を尻目に、二人は睨み合う。
しばしの間の後。
「死ね、ロビー!」
「お前がな!」
二人は互いの力を発動させるのだった!
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