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 裁判らしきものが始まる前、王城に着くと、王子二人に王様と王妃様のいる部屋に案内された。挨拶の仕方なんて知らない。だからとりあえずお辞儀をした。
 「御目文字おめもじ叶って光栄に存じます。白雪と申します」
 「まあまあ!なんて可愛らしい!よろしくね、シラユキちゃん。わたくしのことはお母様って呼んでいいのよ!そっちの子が神獣ね!初めて見たわ!素敵ねぇ!」
 すげえグイグイ来るな、王妃様。開口一番それか。高飛車で取っつきにくい王妃とかもなんかイヤだけど、大丈夫かな、こんなんで。
 「あーん、本当に娘が欲しかったのよお。こんな娘だったら一生離したくないわあ」
 ものっそいきらっきらした目でそう言った。
 「で、どっちと結婚するの?」
 「は、母上!何を言っているのですか!」
 弟が顔を真っ赤にさせて抗議している。結婚の言葉だけで真っ赤とは。いヤツよ。
 「ええ?だってこんなに可愛い子、娘に欲しいわ。ね、シラユキちゃんはどっちがいいの?」
 「恐れ多いことにございます」
 どっちもいらない☆
 「ええー?遠慮しなくていいのにぃ」
 してない☆
 「ほれ、話が進まないだろう。後にしなさい」
 これっきりにしてくださいお願いします。無理だよこのテンション。もう疲れた。
 「はあい」
 いい大人が頬を膨らませるとか。可愛いな、この人。
 「さて、シラユキ。長い間、大変だったな」
 王様の言葉になんて返せばいいかわからないから、とりあえず頭を下げておく。
 「先にいくつか確認しておくことがある。休ませてやりたいのだが、付き合ってくれ」
 「はい。お気遣いは無用にございます。ありがとうございます」
 王様はうんうんと頷くと、王太子に目配せをした。兄が頷くと、私を見る。
 「シラユキ、これから私がする質問に偽りなく答えてくれ」
 飄々とした雰囲気が鳴りを潜め、王太子の顔になる。
 「はい」
 返事をすると、兄は頷いた。
 「シラユキは、ブルーエイ侯爵家の娘で間違いないか」
 「わかりません」
 いきなり答えられない質問だなおい。
 「第二王子殿下がいらっしゃった邸の一部屋に住んでいた、ということしか、確かなことは言えません」
 兄以外が渋い顔をする。
 「では次だ。神殿に行ったことはあるか」
 「たぶん八歳くらいまで、あの部屋から出た記憶はありません」
 「たぶん?」
 「わたくしの今の年齢が推定十五です。はっきりしたことがわからないので。七年くらい前まで、わたくしは外の世界の記憶がございません」
 みんな、痛ましいものを見るような表情になる。
 「その後、自分で出歩くようになってからも、神殿は遠目に見るだけで、行ったことはございません」
 「子どもが十八になるまで、聖女鑑定をさせる義務が親にはある。それが事実だとすると、ブルーエイ侯爵は義務違反となる」
 兄の言葉に、私は言った。
 「義務はないのではないでしょうか」
 侯爵の行いを正当化する発言に、四人が目を開く。
 「親の義務、なのでしょう?」
 確かめるように私はそう言った。


*つづく*
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