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ハビエル・ケイス・エトワリュージュside
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この国の第二王子として生を受けた、ハビエル・ケイス・エトワリュージュ九歳。
先月、私の側近候補であるリード・ザルツが見合いをした。
相手はガーディニー侯爵家のサファイア。この娘には、鬼畜令嬢というとんでもない噂があるのだが、どのような人物か、ネタとして見て来ると言っていた。今後の私の治世の妨げにならないか、見極めるということだろう。
そんなリードが見合いから戻るなり、体力をつけないと、と騎士たちの空き時間に、色々教えてもらっている。
何があったと聞いてみると、惚れた弱みです、と眉を下げていた。
噂通り鬼畜だったらしいが、それでもサファイア嬢に惚れるとは一体どういう状況なのだ。
見極めるため、私もサファイア嬢を見合いという名目で訪ねた。
なるほど。リードの好みドストライクの見た目だ。私も思わず見惚れてしまった。
誤魔化すように、休みの日はどんなことをしているかと尋ねてみる。すると、斜め上の答えが返ってきた。
「妄想しておりますわ」
えーと。
「妄、想?」
「はい。賭けに勝ったら体の一部を差し出すのです」
聞き返すが、聞き間違いではなかった。その上とんでもない言葉が添えられた。しかも意味不明。賭けに勝ったのに差し出す?負けたらではなく?何を?
「から…?い、一部?」
混乱した。
「そうですわね。爪は二十枚、歯は二十八本、親知らずがあるなら最大三十二本ですわね。指が二十本、手足が四本に目が二つ。一日ひとつずつだとしたら、何日遊べるかしら?」
何を、言っている?
「そ、んなの、は、遊びでは、ない」
「そう?とっても楽しいと思うけど」
心の底から“何でわからないのかしら?”って顔してる。え、ホント、何この子。
「ああ、手足も、手首、足首、肘、膝、と分ければ、もう数日楽しめますわ」
鬼畜って言うか、もう猟奇的だよ!なんでそんな恍惚と話せるの?!もうガクブルだよ!
「あらあら。少々お顔の色が優れないご様子。もう少し過激な方がお好みでした?」
「もうお腹いっぱいです!」
コワイ。つい敬語になっちゃう。
「そう。では実践しましょうか」
何で?!
「ムリ!です!」
「遠慮なさらずとも」
「結構です!」
「まあ!やはり実践したかったのですね!」
えええ?
「何で?!ムリだって言ってるじゃん!」
「ええ?結構です、とは、“それは結構なことでございますね、是非やりましょう”、ということではないのですか?」
「ポジティブ!お願い、この世の終わりみたいに、“残念です”って顔しないで!」
「人を散々上げておいて地に叩きつけるようなことを仰るから」
どこに上げる要素あったの?!
「上げてないよ?!何一つ上げてないからね?!ウィル!ダメだ、帰ろう!会話が噛み合わない!」
護衛騎士のウィルに縋るように目を向けた。
「そうですわね。お話しの合わない者同士が共にいたところで苦痛にしかなりませんもの。それは、わたくしの望むものではありません」
何故か怒られている。
「折角ですが、これからはご挨拶をする程度の顔見知りということで、金輪際関わることのなきよう、よろしくお願いいたします」
「私がフラれた形になっている?!」
ねえ、リード。本当にこの子がいいの?
*つづく*
先月、私の側近候補であるリード・ザルツが見合いをした。
相手はガーディニー侯爵家のサファイア。この娘には、鬼畜令嬢というとんでもない噂があるのだが、どのような人物か、ネタとして見て来ると言っていた。今後の私の治世の妨げにならないか、見極めるということだろう。
そんなリードが見合いから戻るなり、体力をつけないと、と騎士たちの空き時間に、色々教えてもらっている。
何があったと聞いてみると、惚れた弱みです、と眉を下げていた。
噂通り鬼畜だったらしいが、それでもサファイア嬢に惚れるとは一体どういう状況なのだ。
見極めるため、私もサファイア嬢を見合いという名目で訪ねた。
なるほど。リードの好みドストライクの見た目だ。私も思わず見惚れてしまった。
誤魔化すように、休みの日はどんなことをしているかと尋ねてみる。すると、斜め上の答えが返ってきた。
「妄想しておりますわ」
えーと。
「妄、想?」
「はい。賭けに勝ったら体の一部を差し出すのです」
聞き返すが、聞き間違いではなかった。その上とんでもない言葉が添えられた。しかも意味不明。賭けに勝ったのに差し出す?負けたらではなく?何を?
「から…?い、一部?」
混乱した。
「そうですわね。爪は二十枚、歯は二十八本、親知らずがあるなら最大三十二本ですわね。指が二十本、手足が四本に目が二つ。一日ひとつずつだとしたら、何日遊べるかしら?」
何を、言っている?
「そ、んなの、は、遊びでは、ない」
「そう?とっても楽しいと思うけど」
心の底から“何でわからないのかしら?”って顔してる。え、ホント、何この子。
「ああ、手足も、手首、足首、肘、膝、と分ければ、もう数日楽しめますわ」
鬼畜って言うか、もう猟奇的だよ!なんでそんな恍惚と話せるの?!もうガクブルだよ!
「あらあら。少々お顔の色が優れないご様子。もう少し過激な方がお好みでした?」
「もうお腹いっぱいです!」
コワイ。つい敬語になっちゃう。
「そう。では実践しましょうか」
何で?!
「ムリ!です!」
「遠慮なさらずとも」
「結構です!」
「まあ!やはり実践したかったのですね!」
えええ?
「何で?!ムリだって言ってるじゃん!」
「ええ?結構です、とは、“それは結構なことでございますね、是非やりましょう”、ということではないのですか?」
「ポジティブ!お願い、この世の終わりみたいに、“残念です”って顔しないで!」
「人を散々上げておいて地に叩きつけるようなことを仰るから」
どこに上げる要素あったの?!
「上げてないよ?!何一つ上げてないからね?!ウィル!ダメだ、帰ろう!会話が噛み合わない!」
護衛騎士のウィルに縋るように目を向けた。
「そうですわね。お話しの合わない者同士が共にいたところで苦痛にしかなりませんもの。それは、わたくしの望むものではありません」
何故か怒られている。
「折角ですが、これからはご挨拶をする程度の顔見知りということで、金輪際関わることのなきよう、よろしくお願いいたします」
「私がフラれた形になっている?!」
ねえ、リード。本当にこの子がいいの?
*つづく*
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