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第二章
Ⅳ
しおりを挟む…この人、なに言ってるんだろう。
「だから、奏ちゃんが好きなんだってば」
「…だから、なんでですか?」
「え~…好きに理由とかある?」
「いや、分かんないですけど…」
好きになってもらうタイミングもなかったと思うけど。
「お礼くれるんでしょ?ちょうだい。」
「えっと…」
状況に混乱している間に、獅音さんはじりじりと近づいてくる。
「私は、ものじゃないって言うか…」
「あぁ、そうだね。言い方が悪かったね。
ごめんね。」
「あ…」
獅音さんの手が頬に触れる。
…動けない。
「奏ちゃんは僕の、好きな人、だったね。」
獅音さんがにっこり笑う。
でも、目は笑ってない。
…この人、ヤバい。
「っ!」
「おぉ、」
獅音さんの手を振り払ってマンションの方へ駆け出す。
焦って、中々鞄から鍵を取り出せない。
やっと見つけた鍵も、鍵穴にはまらずにカチャカチャと音を立てる。
家に入るまで追い付く時間はあっただろうけど、獅音さんは追いかけてこなかった。
『なはははははは…!』
「なんなのその笑いかた…」
家に入ってすぐ、琥珀に連絡をいれた。
『琥珀、お疲れさま疲れてるのにごめん。
何時でもいいから電話して』
そうメールして、琥珀から電話があったのは深夜の二時だった。
『はぁっ、はぁ、く、苦しい、
あはっあははははは!っえほ、げほっ』
「むせるほど笑ってるんじゃないよ…
なに、やっぱり琥珀もグルのいたずら?」
『ちがっ、違うよぉ…』
電話の向こうの琥珀は虫の息のようだった。
「…」
『はぁ、はぁ…』
「…」
『…』
「え、なに死んだ?」
『…いきてる…』
こいつぅ…
『…奏』
「なに」
『で、どうしたの?返事した?』
「え、いや…」
『…』
「逃げたけど。」
『ぐふっ、うふふふふはははははは』
「…」
『ははは…っ、う、ふぅ、はぁ…』
「…」
『…』
「…琥珀?」
『…』
…どうやら、死んだらしい。
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