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第三章
Ⅱ
しおりを挟む「いや、ほんっとごめん。」
「もういいよ…」
琥珀はちゃんと獅音さんに、私の家には行かないよう話してくれていたみたいだ。
「ただ…獅音さんってあんな感じだったっけ?」
「どんな感じ?」
「なんか、昔は穏やかで優しいお兄さんって感じだったけど」
「うん」
「今も穏やかではあるけどさ…
なんか、頑固…?
子供っぽいところも、あるような…」
琥珀が苦笑している。
「あ、ごめん…」
「いやいや、その通りだからいいよ。
うん、残念ながら獅音兄さんはあんな感じ、だねぇ。」
「そうでしたか…」
「あんな感じの獅音兄さんは、今度奏ちゃんとデートなんだぁ、と、最近浮かれています。」
「ちょっと」
「ごめんごめん…因みに」
次はニヤニヤし始めた。
「獅音兄さんが奏のことを好きな理由に納得できたら、付き合うの?」
どきっとした。
あれだけ好きだと言われれば、少なからず意識はしてしまう。
でも…
「…わかんない」
「ふむ」
琥珀は納得できないような声色で相槌を一つ打った。
私が続きを話し出すのを、待っている。
「…演劇以上に、好きになれないかもしれない。」
「…人を好きになることとは違うんじゃない。」
「そうだね」
でも、そういうことじゃない。
「また、失うのが怖い。」
「…」
「きっと、その時感じるのは失った辛さだけじゃない。」
もう必要とされなくなったという絶望も。
…確かにそれを感じるのは、人を好きになった時だけかもしれない。
「奏が、私を失う日は来ないよ。」
獅音さんの気持ちは分からないから、「そんなことない」なんて無責任なことは琥珀は言わない。
でも、自分の気持ちは率直に伝えてくれる。
「…ありがとう。琥珀もね。」
それに、いつも、救われている。
「こんにちは、奏ちゃん。」
「こんにちは。」
デートもとい、獅音さんが私を好きな理由を聞く日が来た。
…なんて恥ずかしい…
「じゃあ行こうか。
スイーツの種類が豊富なお店選んだんだよ。
甘いもの好きなんでしょ?」
「琥珀からの情報ですか?」
「まぁね…あ、手、繋ぐ?」
「繋ぎませんってば」
くすりと笑うと、獅音さんも小さく微笑んだ。
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