観客席の、わたし

双子のたまご

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第九章

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「はい、どうぞ~」

「あ、ありがとうございます…」

押しきられて、しまった…

「あの、和泉君は…」

「あぁ~大丈夫ですよ!
もうすぐ颯馬が来るので。
それまでは宿題すると思うし…」

「そう、ですか…」

出された紅茶に口をつけると、インターホンが鳴った。

「あ、ちょうど来たみたい。
ちょっと待っててくださいね。」

お母さんが鍵を開けにいく。

「紘~来たぞ~…っと、
…奏さん」

「こんにちは。」

「はいはい、あんた紘の相手してて。
こっち来ないでよ。
双木先生と恋バナするんだから。」

「ちょ、」

「…分かった。」

お母さんはさっさと颯馬さんを追いやった。
そして向かいの席に座る。

「さて…ふふ。
双木先生とゆっくりお話ししてみたかったの。
さぁ、悩み相談をどうぞ?」

「えっと…あの、やっぱり保護者さんにこんな…」

「まぁまぁまぁまぁ。」

なんだか獅音さんや琥珀のような押しの強さを感じる。
そしてこのタイプは、引き下がらない。

「…じゃあ、少しだけ…」

目線をティーカップに落とす。
紅茶に移った自分の瞳がゆらゆらと揺れていた。














「なるほどねぇ…
好きじゃないときに押されて付き合って、
だんだん好きになって、
それなのにそれを無理してると思われて…
う~ん…」

「自分勝手ですよね…
私も自分の思考がもうよく分からなくて…
どうすればいいのか…」

「自分勝手ですかね?
私も始めは旦那とノリで付き合ってましたよ。」

「え?」

「大学の同じサークルだったんですけど、飲み会で隣になることが多くて。
で、彼氏欲しい~って話したらじゃあ俺と付き合う?って」

「…なる、ほど?」

「だから別に、付き合った後に気持ちが出てきても、自分勝手ではないと思います。」

…まぁ、考えてみれば、お見合いなどは最たる例か。

「…そうかもしれないですね。」

「双木先生は、何が嫌だなぁって思ったんですか?」

「…自分の気持ちを疑われたこと?
でもそれは、当初の私もそうだったので」

「双木先生は、相手の方に好きって言ったんですか?」

獅音さんに、好き、と…

「はっきりとは…」

「双木先生は、相手の方が双木先生のことを気遣ってくれていると感じたんですよね。
それは好意があるからだと思った。
だから自分も同じように相手を気遣って知ろうとすることで気持ちを伝えようとした…
あってます?」

振り返ってみると、そうかもしれない。
小さく頷くと、




「あのね、それ多分伝わってないと思います。」




そう言われた私を一言で表すと「がーん!」って感じだったと思う。
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