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73 タカラヅカ系、純情派
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男前系な不知火マイコさんが現れた。堂々と変なことも言っている。
「カオル、いい人が3人もできたのね、おめでとう。だけど試合は手加減しないわよ」
腕を組んで斜めに構えた。男前女子だ。
対してカオルは仁王立ち。
「分かってますよ。今年こそ不知火さんに勝ちたくて頑張ってきたんだからよ」
「ふふふ、さすがね・・」
不知火がカオルに近付いて、右手を差し出してきた。
握手と思って、カオルも手を伸ばしたが・・
不知火の右手は、カオルの頬に添えられた。
「カオル、あなた去年までと違って色気が出てきたわ。やっぱり素敵な男子にもグイグイこられて、羨ましいわ」
「・・んだよ、それ。恋愛にうつつを抜かして、アタイが弱そうだと言いたいんか、不知火さん」
「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃないの・・」
「じゃあ、なんだよ」
「・・・羨ましい・・」
いきなり言葉に詰まった不知火が、挙動不審になった。
2歩前に出て、カオルの方ではなく、勇太の方に向き直った。
なぜか不知火は、腕組みを解いた。顔を真っ赤にして直立不動だ。
「は、は、初めまして、坂元勇太さん。不知火マイコです」
「はい、初めまして不知火さん」
「ネットであなたのこと・・知って、ぜ、ぜひお話したかったのです」
「はあ?・・」
「カ、カオルにクッキーを食べさせてあげたり、ハグしてましたよね!」
「・・まあ、カオルも大事な女の子だから」
半分はダチとしてと思ってる。だけど、この不用意な発言をして周囲をさらにざわつかせる勇太だ。
「そ、そ、それでですね、個人戦の63キロ級では、勝ち上っていったらカオルと決勝で当たると思うので、私が勝ったら・・」
カオルに見せていた勝ち気な表情が消えて、不知火は目を伏せた。
「な、何ですか」
勇太に無茶な要求をすると思ったカオルが思わず口を挟んだ。
「おい、勇太はモノじゃねえぞ、不知火さん。勝手に賭けの道具なんかすんな!」
「ひっ、怒らないでカオル・・」
「まあ、カオル押さえて。とりあえず聞きましょう、不知火さん」となだめる勇太。
みんなが喋るのをやめて、不知火の言葉に集中した。
「あ、あのね、私がカオルに、か、勝てたら・・」
「・・」
「勇太さん、わ、私をハグしてください」
「・・え、それが日本一になったときのリクエスト?」
驚くほど簡単なリクエスト、そしてクリアする条件のハードさ。そのキャップに勇太は困惑している。
周囲もなんで?となっている。
パラ高柔道部では、練習で頑張った部員に、よくハグしている。2年4組で誕生日の子にハグしたこともある。
普通にやっている。
「あれ、不知火さんって、意外と男子に免疫がない人なの?」
そう。この世界、女子にモテる男前女子の法則がある。
男子と接する機会がゼロに近いのだ。
特に不知火マイコのように胸も控えめ、完璧に舞台俳優の男役のように振る舞えると、女子には不自由しない。
しかし、完全に男子枠。
女子の理想に沿った男子的な物言い、立ち振舞いも洗練されている。
その上にハンサム。
なので、数が少ない男子は、わざわざ関わって劣等感を味わうことはしない。
男女比1対12ワールドの男子は基本的にメンタルが弱いのだ。
不知火のようなタイプは、勇太の前世のように、男子の一部で人気とかありえない。
女子なのにハンサム男子系ゆえに、男子に避けられて接触がゼロに近くなる。
しかし不知火は、中身は普通の肉食乙女。男に興味もある。自分を磨いてきた。
そして磨きすぎて、『女子のみにモテる女子』のキャラが中2で完成した。
そこでようやく、自分の失敗に気付いた。
周囲にも期待されて、突っ走るしかなくなっていた。
頑張って自分を磨いてきたのに、男子に避けられる悲しい自分がいた。
さっき、勇太に歌ってもらったばかりのカオルに言った『羨ましい』。純粋な本音である。
みんなが思っていた以上に、男子に対しては純情なのだ。
ネットで、どんな女の子でも受け入れてくれるという噂の、エロカワ男子・坂元勇太を見つけた。
勇太君の動画を見ていると、ある日突然、カオルが登場して勇太君と仲良しになっていた。
男子に縁がない同志だと思っていたカオルの乙女変身?を見て、ショックを受けた。
しかし考えた。カオルを通じてなら、優しそうな勇太が自分と話してくれるんじゃないかと期待していた。
勇太が普通に対応してくれて、不知火はにこにこしている。
勇太、ルナ、梓はぽかんとしている。
なかなか柔道が始まらない。
「カオル、いい人が3人もできたのね、おめでとう。だけど試合は手加減しないわよ」
腕を組んで斜めに構えた。男前女子だ。
対してカオルは仁王立ち。
「分かってますよ。今年こそ不知火さんに勝ちたくて頑張ってきたんだからよ」
「ふふふ、さすがね・・」
不知火がカオルに近付いて、右手を差し出してきた。
握手と思って、カオルも手を伸ばしたが・・
不知火の右手は、カオルの頬に添えられた。
「カオル、あなた去年までと違って色気が出てきたわ。やっぱり素敵な男子にもグイグイこられて、羨ましいわ」
「・・んだよ、それ。恋愛にうつつを抜かして、アタイが弱そうだと言いたいんか、不知火さん」
「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃないの・・」
「じゃあ、なんだよ」
「・・・羨ましい・・」
いきなり言葉に詰まった不知火が、挙動不審になった。
2歩前に出て、カオルの方ではなく、勇太の方に向き直った。
なぜか不知火は、腕組みを解いた。顔を真っ赤にして直立不動だ。
「は、は、初めまして、坂元勇太さん。不知火マイコです」
「はい、初めまして不知火さん」
「ネットであなたのこと・・知って、ぜ、ぜひお話したかったのです」
「はあ?・・」
「カ、カオルにクッキーを食べさせてあげたり、ハグしてましたよね!」
「・・まあ、カオルも大事な女の子だから」
半分はダチとしてと思ってる。だけど、この不用意な発言をして周囲をさらにざわつかせる勇太だ。
「そ、そ、それでですね、個人戦の63キロ級では、勝ち上っていったらカオルと決勝で当たると思うので、私が勝ったら・・」
カオルに見せていた勝ち気な表情が消えて、不知火は目を伏せた。
「な、何ですか」
勇太に無茶な要求をすると思ったカオルが思わず口を挟んだ。
「おい、勇太はモノじゃねえぞ、不知火さん。勝手に賭けの道具なんかすんな!」
「ひっ、怒らないでカオル・・」
「まあ、カオル押さえて。とりあえず聞きましょう、不知火さん」となだめる勇太。
みんなが喋るのをやめて、不知火の言葉に集中した。
「あ、あのね、私がカオルに、か、勝てたら・・」
「・・」
「勇太さん、わ、私をハグしてください」
「・・え、それが日本一になったときのリクエスト?」
驚くほど簡単なリクエスト、そしてクリアする条件のハードさ。そのキャップに勇太は困惑している。
周囲もなんで?となっている。
パラ高柔道部では、練習で頑張った部員に、よくハグしている。2年4組で誕生日の子にハグしたこともある。
普通にやっている。
「あれ、不知火さんって、意外と男子に免疫がない人なの?」
そう。この世界、女子にモテる男前女子の法則がある。
男子と接する機会がゼロに近いのだ。
特に不知火マイコのように胸も控えめ、完璧に舞台俳優の男役のように振る舞えると、女子には不自由しない。
しかし、完全に男子枠。
女子の理想に沿った男子的な物言い、立ち振舞いも洗練されている。
その上にハンサム。
なので、数が少ない男子は、わざわざ関わって劣等感を味わうことはしない。
男女比1対12ワールドの男子は基本的にメンタルが弱いのだ。
不知火のようなタイプは、勇太の前世のように、男子の一部で人気とかありえない。
女子なのにハンサム男子系ゆえに、男子に避けられて接触がゼロに近くなる。
しかし不知火は、中身は普通の肉食乙女。男に興味もある。自分を磨いてきた。
そして磨きすぎて、『女子のみにモテる女子』のキャラが中2で完成した。
そこでようやく、自分の失敗に気付いた。
周囲にも期待されて、突っ走るしかなくなっていた。
頑張って自分を磨いてきたのに、男子に避けられる悲しい自分がいた。
さっき、勇太に歌ってもらったばかりのカオルに言った『羨ましい』。純粋な本音である。
みんなが思っていた以上に、男子に対しては純情なのだ。
ネットで、どんな女の子でも受け入れてくれるという噂の、エロカワ男子・坂元勇太を見つけた。
勇太君の動画を見ていると、ある日突然、カオルが登場して勇太君と仲良しになっていた。
男子に縁がない同志だと思っていたカオルの乙女変身?を見て、ショックを受けた。
しかし考えた。カオルを通じてなら、優しそうな勇太が自分と話してくれるんじゃないかと期待していた。
勇太が普通に対応してくれて、不知火はにこにこしている。
勇太、ルナ、梓はぽかんとしている。
なかなか柔道が始まらない。
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