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111 父だと思ったら姉のようなもんだった
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そのあとも、勇太達は公園で何曲も歌った。
その場面はネットにも流れた。
純子と風花、女性2人だけのものもあったけど、勇太が加わらなくても、とんでもない反響があった。
レコード会社の人も、風花と純子のユニットで売れると踏んだ。
勇太がギャラリーの人に聞かれ、風花と純子に曲を提供すると言った。そしたら、レコード会社に問い合わせが殺到しているそうだ。
それから1週間の勇太は、とにかく忙しかった。
基本は学校のあとは風花、純子と曲作り。夜は、思い出した前世歌の題名をメモしたり、録音したりで過ごした。
ルナや梓とは学校の休み時間や昼休みだけ一緒だった。カオルには早朝のランニングで会った程度だ。
曲作りといっても、勇太は前世のパクリ歌を思い出して口ずさむだけ。あとは歌担当の純子、ギター担当の風花が曲の形を作る。
そこから先の大変な作業は、風花、純子、そしてプロの方々がやってくれる。
1週間が過ぎて、勇太だけは一段落ついた。
勇太は、再びランニング、パンのウスヤ、パラ高、柔道部、リーフカフェの1日22時間モードに戻った。
勇太は、これで作詞作曲を名乗っていいのかと思ったが、1番大事なゼロから曲を生み出す部分を担っているから勇太の曲だそうだ。
なので、出来上がった作品はメインの作詞作曲が勇太。編曲とギターが風花、歌が純子となる。
著作権は勇太にある。だけど風花、純子と作ったCDでは利益を3等分にすることにした。
出会って1週間の風花は驚いていたが、勇太の中では納得できている。
純子はこのやり取りを見て、風花も勇太の『特別』だと改めて思った。
◆◆
9月12日、木曜日。
勇太は放課後に柔道部に顔を出し、ルナと一緒にパラレル総合芸術大学に向かった。
曲のアレンジで風花と話すことがあって待ち合わせ。婚約者と嫁の誰かを連れてきて欲しいと言われて、まずルナにした。
例によって学食に入った。
「風花さん、お待たせしました」
「おっす勇太。彼女が愛しのルナさんだね。初めまして周防風花だよ」
風花の言葉のチョイスは、前世の父に微妙に似ている。それに風花も勇太と呼ぶようになって、気安い関係になってきている。
「花木ルナです。よろしくお願いします」
「ね、ルナ。風花さんって梓によく似てるだろ」
「だね。胸は風花さんが圧倒的だけど、顔はそっくり」
「あっはっは。おっぱいもむかい?」
風花はルナにも気楽に話しかけている。
今日はルナをイメージした歌についての話。風花が本物のルナに会って曲のアレンジを考えている。
20分ほど意見を出し合っていると、風花の友人から勇太が四つ折りの紙を渡された。
「勇太くーん、私の出生番号」
「私のも。あとで確認してね」
前世のマイナンバーカードに当たるものの個人番号15桁から抜粋した、父親の特定番号だ。
勇太は『F321A19P』。ルナは『R2367U7N』
8月に中学生のメイちゃんから勇太が、この番号を渡された。
そしてメイちゃんと勇太が腹違いの兄妹と知ってしまった。ともに人工授精で産まれてるから父親は誰か分からないが、結婚は許されない。
大半の男子は、この紙をもらうことを拒絶する。「あなたと結婚できますか」の意味がこもっている。
受け取り方次第では、すごく重いものだ。
勇太が軽い気持ちでメイちゃんから受け取って以降、よく渡されるようになった。
このへんでも、勇太は希少男子なのだ。
「おっ、勇太はモテモテだね。またもらったね」
「みんな遊び感覚ですよねー」
「風花さんも、やりましたか?」ルナが聞いてみた。
「いや。私は中学、高校と荒れてた時期もあったから、やってない。ほら、まだヤンキーだった片鱗あるだろ」
そう。父親の特定番号を教え合う遊びはあるが、不良やヤンキーは無縁。そりゃ、怖い人間と異母姉妹だと分かった方が嫌だ。
この世界の、ひとつの常識だ。
「大学生になると、実際に結婚するやつも増えてくるから、ガチのときしか教え合わないしね」
「ふーん。じゃあ、風花さんの番号、教えて下さいよ」
「あれ、勇太君は私と結婚したいのかな」
見ていた女子達がざわっとした。
「あはは。それこそ遊びですよ」
「ちっ、残念。ははは」
ここ数日、勇太は風花とこんなノリで話す。ルナやカオルとも違う気楽さがあるのだ。
「じゃあ人生初の申告だな」
風花は勇太とルナに顔を寄せて、小さい声で呟いた。
「私の精子提供者の番号は『QP36591G』だよ」
「・・あ、俺のと違いますね~」
「私とも違うな」
勇太とルナは笑った。だけど、心の中は大きく揺れていた。
それから1時間して風花と別れた。
◆
大学の門を出て、勇太とルナは顔を見合わせた。
「勇太、あの風花さんの番号」
「『QP36591G』って言ったよな」
「間違いない、私もそう聞こえた」
2人が共通して覚えている番号が2つだけある。それは家族になる人間の番号だから。
風花の精子提供者の番号は、勇太の従妹で嫁、梓の番号と一致した。
「梓だよね・・」
「うん。顔も似てるし、間違いない」
前世では親子だった2人。今世のパラレル父・風花とパラレル梓は異母姉妹だった。
勇太は嬉しくなった。
前世の父親と同じく、子供時代に家族に恵まれなかった時期があるパラレル父・風花Dカップ。
今度は、腹違いでも姉妹が分かる場所にいる。
その場面はネットにも流れた。
純子と風花、女性2人だけのものもあったけど、勇太が加わらなくても、とんでもない反響があった。
レコード会社の人も、風花と純子のユニットで売れると踏んだ。
勇太がギャラリーの人に聞かれ、風花と純子に曲を提供すると言った。そしたら、レコード会社に問い合わせが殺到しているそうだ。
それから1週間の勇太は、とにかく忙しかった。
基本は学校のあとは風花、純子と曲作り。夜は、思い出した前世歌の題名をメモしたり、録音したりで過ごした。
ルナや梓とは学校の休み時間や昼休みだけ一緒だった。カオルには早朝のランニングで会った程度だ。
曲作りといっても、勇太は前世のパクリ歌を思い出して口ずさむだけ。あとは歌担当の純子、ギター担当の風花が曲の形を作る。
そこから先の大変な作業は、風花、純子、そしてプロの方々がやってくれる。
1週間が過ぎて、勇太だけは一段落ついた。
勇太は、再びランニング、パンのウスヤ、パラ高、柔道部、リーフカフェの1日22時間モードに戻った。
勇太は、これで作詞作曲を名乗っていいのかと思ったが、1番大事なゼロから曲を生み出す部分を担っているから勇太の曲だそうだ。
なので、出来上がった作品はメインの作詞作曲が勇太。編曲とギターが風花、歌が純子となる。
著作権は勇太にある。だけど風花、純子と作ったCDでは利益を3等分にすることにした。
出会って1週間の風花は驚いていたが、勇太の中では納得できている。
純子はこのやり取りを見て、風花も勇太の『特別』だと改めて思った。
◆◆
9月12日、木曜日。
勇太は放課後に柔道部に顔を出し、ルナと一緒にパラレル総合芸術大学に向かった。
曲のアレンジで風花と話すことがあって待ち合わせ。婚約者と嫁の誰かを連れてきて欲しいと言われて、まずルナにした。
例によって学食に入った。
「風花さん、お待たせしました」
「おっす勇太。彼女が愛しのルナさんだね。初めまして周防風花だよ」
風花の言葉のチョイスは、前世の父に微妙に似ている。それに風花も勇太と呼ぶようになって、気安い関係になってきている。
「花木ルナです。よろしくお願いします」
「ね、ルナ。風花さんって梓によく似てるだろ」
「だね。胸は風花さんが圧倒的だけど、顔はそっくり」
「あっはっは。おっぱいもむかい?」
風花はルナにも気楽に話しかけている。
今日はルナをイメージした歌についての話。風花が本物のルナに会って曲のアレンジを考えている。
20分ほど意見を出し合っていると、風花の友人から勇太が四つ折りの紙を渡された。
「勇太くーん、私の出生番号」
「私のも。あとで確認してね」
前世のマイナンバーカードに当たるものの個人番号15桁から抜粋した、父親の特定番号だ。
勇太は『F321A19P』。ルナは『R2367U7N』
8月に中学生のメイちゃんから勇太が、この番号を渡された。
そしてメイちゃんと勇太が腹違いの兄妹と知ってしまった。ともに人工授精で産まれてるから父親は誰か分からないが、結婚は許されない。
大半の男子は、この紙をもらうことを拒絶する。「あなたと結婚できますか」の意味がこもっている。
受け取り方次第では、すごく重いものだ。
勇太が軽い気持ちでメイちゃんから受け取って以降、よく渡されるようになった。
このへんでも、勇太は希少男子なのだ。
「おっ、勇太はモテモテだね。またもらったね」
「みんな遊び感覚ですよねー」
「風花さんも、やりましたか?」ルナが聞いてみた。
「いや。私は中学、高校と荒れてた時期もあったから、やってない。ほら、まだヤンキーだった片鱗あるだろ」
そう。父親の特定番号を教え合う遊びはあるが、不良やヤンキーは無縁。そりゃ、怖い人間と異母姉妹だと分かった方が嫌だ。
この世界の、ひとつの常識だ。
「大学生になると、実際に結婚するやつも増えてくるから、ガチのときしか教え合わないしね」
「ふーん。じゃあ、風花さんの番号、教えて下さいよ」
「あれ、勇太君は私と結婚したいのかな」
見ていた女子達がざわっとした。
「あはは。それこそ遊びですよ」
「ちっ、残念。ははは」
ここ数日、勇太は風花とこんなノリで話す。ルナやカオルとも違う気楽さがあるのだ。
「じゃあ人生初の申告だな」
風花は勇太とルナに顔を寄せて、小さい声で呟いた。
「私の精子提供者の番号は『QP36591G』だよ」
「・・あ、俺のと違いますね~」
「私とも違うな」
勇太とルナは笑った。だけど、心の中は大きく揺れていた。
それから1時間して風花と別れた。
◆
大学の門を出て、勇太とルナは顔を見合わせた。
「勇太、あの風花さんの番号」
「『QP36591G』って言ったよな」
「間違いない、私もそう聞こえた」
2人が共通して覚えている番号が2つだけある。それは家族になる人間の番号だから。
風花の精子提供者の番号は、勇太の従妹で嫁、梓の番号と一致した。
「梓だよね・・」
「うん。顔も似てるし、間違いない」
前世では親子だった2人。今世のパラレル父・風花とパラレル梓は異母姉妹だった。
勇太は嬉しくなった。
前世の父親と同じく、子供時代に家族に恵まれなかった時期があるパラレル父・風花Dカップ。
今度は、腹違いでも姉妹が分かる場所にいる。
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