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203 この世界の普通の女の子◆お迎え編
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12月19日、金曜日。午後3時半。
登校日ではない勇太がパラレル高校の門の前に立っている。
真冬なのに寒さを感じないから、シャツに薄手のジャケットだけ。
右手には花を1輪。
今日は婚約者のひとり、吉田真子の誕生日。
厳密には、まだ婚約者ではない。けれど真子、間門嘉菜、花木純子、臼鳥麗子は、周りがルナやカオルと同様に『婚約者』『嫁』と言う。
勇太も否定しないことにした。
梓、ルナ、カオルとの初デートで花をプレゼントした。すごく喜ばれた。
だから、その3人に真子の初デートでも花は喜ばれると強調された。
前世なら、そういう『特別』は女子も男子も自分だけのものにしたい。
だけど女子による男子のシェアリングが普通のパラレル世界。こういう喜びは分かち合うのも当たり前のようだ。
真子の思い出を作るため、梓とルナで待ち合わせ場所を勧められた。
勇太は従うけど、いまだに背徳感もある。
しかし周囲はニヤニヤしながら勇太を見てくる。
スマホも向けられている。
かなりの生徒が通りすぎたり、立ち止まってみているところに、真子が校門の方に来た。
少しおどおどして歩いてくる。
勇太が教室まで迎えに来ると、嘘をルナや梓に教えられていた真子。ドキドキしながら自分の席で素直に待っていた。
しかし放課後になって15分して、真子のスマホに勇太ファミリーのグループLIMEが届いた。
ルナ『待ち合わせを場所、間違って教えちゃった。テヘペロ』
梓『ユウ兄ちゃん、校門前で待ってますよ。テヘペロ』
「梓、ルナ、て、て、テヘペロじゃないって・・」
真子はLIMEを返す余裕もなく校門を見た。勇太がいる。
人だかりができている。
「あ、あそこに、私に飛び込んでいけと・・」
手ブラでノロノロと歩き出した。
この瞬間だけは、気持ちが公開死刑囚だ。
荷物はルナ、梓、長谷川三姉妹で協力して、嘉菜と真子が半同棲状態のマンションに運び込む。
「ゆ、勇太君、お待たせ」
『あの人、誰?』
『勇太先輩の新しい嫁よ』
『え、男子のお迎えデート?』
『幾ら払ったんだろう?』
余計なことも言いながら、女子がざわついている。
緊張しすぎている真子に、追加攻撃。
「委員長、誕生日おめでとう」
勇太から一輪の花を手渡された。
「あ、あ、あがりがとりい」。ありがとうと言ったつもりらしい。
「さ、プレゼント買いに行こう」
きゃ~、きゃ~、きゃ~、と真子史上、最大の歓声を浴びている。
『男子のお出迎えの上に、花のプレゼント』
『いやいや、あの花はプレゼントの前菜だよ』
『いいな、いいな』
『今夜はセッ●ス三昧?』
どうしても不純物が混ざるが、注目を浴びている。
真子はというと・・
「委員長?」
花をもらってから、勇太の言葉にも無反応。白目を剥いている。
立ったまま気絶している。
早くもキャパオーバーだ。
右側に傾いた真子を勇太が抱き止めた。
「・・はっ」
「大丈夫?」
「あ、ごめん、大丈~ぶ、じゃない」
真子は思った。なぜ自分はギャラリーの真ん中で、勇太君のジャケットの中に頭を突っ込んでいるのだろうかと。
花は無意識でもガッチリ持って死守している。
背中に当たる同性からの視線で服に穴が空く気がする。
勇太からいい匂い。そして自分を気遣ってくれる勇太の声が、耳元に響く。
再び意識が遠退いた。
勇太はモブ顔。
同性の友人が超絶モテ男の伊集院君のみだから、自分もモテ男になったと知っていても自覚が足りない。
肝心なことが分かっているようで分かっていない。
この真子の反応が過剰と思う勇太だか、こっちが多数派だと知らない。
勇太は、ルナ、梓、カオルとマンツーマンのデートをした。
その3人が普通だと思っている。
梓は勇太と4年も同居したあとに、勇太と初の買い物に行った。
ルナとは誕生日デートの前に保健室で結ばれている。
カオルも勇太との初デートまでにキスも済ませ、伊集院君にあ~ん、ぱくを何度もしてもらった。
3人に個人差はあっても、男子耐性ができていた。
真子と勇太との触れ合いはまだ、誰かがいる場所でハグが数回程度。
総ハグ回数は2年4組のルナの友人より少ない。
自分が主役になるのは今回が初めてだと、まだ気付いていない。
それでも、嘉菜と関係を持って恋愛に強くなったと思っていた。
なのに、勇太と待ち合わせをして5分で2度も意識が飛んだ。
ダイレクトな勇太は破壊力が違うのだ。
真子、大丈夫か。
まだデートのスタート地点から一歩も動いていないぞ。
登校日ではない勇太がパラレル高校の門の前に立っている。
真冬なのに寒さを感じないから、シャツに薄手のジャケットだけ。
右手には花を1輪。
今日は婚約者のひとり、吉田真子の誕生日。
厳密には、まだ婚約者ではない。けれど真子、間門嘉菜、花木純子、臼鳥麗子は、周りがルナやカオルと同様に『婚約者』『嫁』と言う。
勇太も否定しないことにした。
梓、ルナ、カオルとの初デートで花をプレゼントした。すごく喜ばれた。
だから、その3人に真子の初デートでも花は喜ばれると強調された。
前世なら、そういう『特別』は女子も男子も自分だけのものにしたい。
だけど女子による男子のシェアリングが普通のパラレル世界。こういう喜びは分かち合うのも当たり前のようだ。
真子の思い出を作るため、梓とルナで待ち合わせ場所を勧められた。
勇太は従うけど、いまだに背徳感もある。
しかし周囲はニヤニヤしながら勇太を見てくる。
スマホも向けられている。
かなりの生徒が通りすぎたり、立ち止まってみているところに、真子が校門の方に来た。
少しおどおどして歩いてくる。
勇太が教室まで迎えに来ると、嘘をルナや梓に教えられていた真子。ドキドキしながら自分の席で素直に待っていた。
しかし放課後になって15分して、真子のスマホに勇太ファミリーのグループLIMEが届いた。
ルナ『待ち合わせを場所、間違って教えちゃった。テヘペロ』
梓『ユウ兄ちゃん、校門前で待ってますよ。テヘペロ』
「梓、ルナ、て、て、テヘペロじゃないって・・」
真子はLIMEを返す余裕もなく校門を見た。勇太がいる。
人だかりができている。
「あ、あそこに、私に飛び込んでいけと・・」
手ブラでノロノロと歩き出した。
この瞬間だけは、気持ちが公開死刑囚だ。
荷物はルナ、梓、長谷川三姉妹で協力して、嘉菜と真子が半同棲状態のマンションに運び込む。
「ゆ、勇太君、お待たせ」
『あの人、誰?』
『勇太先輩の新しい嫁よ』
『え、男子のお迎えデート?』
『幾ら払ったんだろう?』
余計なことも言いながら、女子がざわついている。
緊張しすぎている真子に、追加攻撃。
「委員長、誕生日おめでとう」
勇太から一輪の花を手渡された。
「あ、あ、あがりがとりい」。ありがとうと言ったつもりらしい。
「さ、プレゼント買いに行こう」
きゃ~、きゃ~、きゃ~、と真子史上、最大の歓声を浴びている。
『男子のお出迎えの上に、花のプレゼント』
『いやいや、あの花はプレゼントの前菜だよ』
『いいな、いいな』
『今夜はセッ●ス三昧?』
どうしても不純物が混ざるが、注目を浴びている。
真子はというと・・
「委員長?」
花をもらってから、勇太の言葉にも無反応。白目を剥いている。
立ったまま気絶している。
早くもキャパオーバーだ。
右側に傾いた真子を勇太が抱き止めた。
「・・はっ」
「大丈夫?」
「あ、ごめん、大丈~ぶ、じゃない」
真子は思った。なぜ自分はギャラリーの真ん中で、勇太君のジャケットの中に頭を突っ込んでいるのだろうかと。
花は無意識でもガッチリ持って死守している。
背中に当たる同性からの視線で服に穴が空く気がする。
勇太からいい匂い。そして自分を気遣ってくれる勇太の声が、耳元に響く。
再び意識が遠退いた。
勇太はモブ顔。
同性の友人が超絶モテ男の伊集院君のみだから、自分もモテ男になったと知っていても自覚が足りない。
肝心なことが分かっているようで分かっていない。
この真子の反応が過剰と思う勇太だか、こっちが多数派だと知らない。
勇太は、ルナ、梓、カオルとマンツーマンのデートをした。
その3人が普通だと思っている。
梓は勇太と4年も同居したあとに、勇太と初の買い物に行った。
ルナとは誕生日デートの前に保健室で結ばれている。
カオルも勇太との初デートまでにキスも済ませ、伊集院君にあ~ん、ぱくを何度もしてもらった。
3人に個人差はあっても、男子耐性ができていた。
真子と勇太との触れ合いはまだ、誰かがいる場所でハグが数回程度。
総ハグ回数は2年4組のルナの友人より少ない。
自分が主役になるのは今回が初めてだと、まだ気付いていない。
それでも、嘉菜と関係を持って恋愛に強くなったと思っていた。
なのに、勇太と待ち合わせをして5分で2度も意識が飛んだ。
ダイレクトな勇太は破壊力が違うのだ。
真子、大丈夫か。
まだデートのスタート地点から一歩も動いていないぞ。
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