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ハヤトの訪問
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### ハヤトの訪問
マンションに住み始めてから半年が過ぎた頃、ハヤトがマンションを訪ねてきた。
「よっ、久し振り」
ドアを開けると、ハヤトが笑いながら声をかけてきた。
「ほんと、久し振りだね。まぁ、入って」
そう言って、中に招き入れる。
「マサシとは上手くいってるのか?」
そう言うハヤトに、カズは、
「まぁね」
と、軽く答える。
「へぇ、キレイにしてるんだな」
「そりゃあ、そうだろ。オレは昔からゴチャゴチャしてるのは嫌なんだから」
「そういや、そうだったな」
ハヤトがそう言って微笑む。
「それはそうと、いくら幼なじみでいつでも会えるからといっても、半年も訪ねて来ないとは思わなかったよ」
ハヤトがソファに腰を下ろすと、カズはキッチンで淹れたてのコーヒーを二つ、テーブルに置いた。
カップが温もりを伝えるように、部屋に静かな安らぎが満ちていく。
「半年も来なかったのは、こっちの都合もあるけどな」
ハヤトはカップに口をつけながら、窓の外の空を見上げた。
「お前らが、ようやく自分たちのリズムを見つけた頃だろ。邪魔したくなかっただけだよ。それに⋯⋯」
彼は少し間を置いて、カズの顔を見つめた。
「お前の小説、全部読んだ。『君が残した朝』も、それまでの連載も。マサシのアニメも見た。⋯⋯正直、泣いたよ」
カズは驚いたように眉を上げた。
「お前が? 泣くなんて、初めて聞いたな」
「バカ言うな」
ハヤトは苦笑いしながら頭をかいた。
「昔から、お前の文章には、ズルいほど心を突かれるところがあった。でも、今回は違った。ただの物語じゃない。お前とマサシの、呼吸そのものみたいだった」
カズは黙ってコーヒーをすすった。
熱さが喉を通り、胸の奥にじんわりと広がる。
「⋯⋯オレも、書いている最中に、何度もペンを置いたよ。マサシのことを書くって、想像以上に重かった。尊敬してるし、怖かったんだ。この物語が、彼の期待に応えられるかどうかって」
「でも、読んだ人間は、全員がその重さをちゃんと感じ取ったよ」
ハヤトは真剣な目で言った。
「あの物語は、『遺作を完成させる』って話じゃなくて、『誰かの続きを書く』って話だろ? マサシがお前の物語をアニメにして、今度はお前がマサシの生き様を小説にした。まるで、光が手渡されていくみたいだ」
カズは静かにうなずいた。
「⋯⋯そう、まさにそれだ。オレたちは、お互いの物語を『継ぐ』ことで、自分たちの物語を生きてる。一人じゃ書けなかった部分を、誰かが代わりに描いてくれる。それが、今のオレたちなんだ」
ハヤトはしばらく黙って、テーブルの上に置かれたマグカップを見つめた。
欠けた縁のカップと、新しいそれ。
「⋯⋯あのペン、まだ使ってんのか?」
「ああ。机の引き出しの一番上にある。使わない日はないよ」
「そうか⋯⋯」
ハヤトは小さく笑った。
「昔、お前が一人で部屋にこもって、原稿用紙に文字を並べてるのを見て、正直、寂しいって思ったよ。誰にも見せない原稿を、何百枚と積み上げて。『この努力、誰かに届いてるのかな』って、いつも心配してた」
カズは少し驚いた。
「⋯⋯そんなこと、言ってなかったろ?」
「言わなくても、わかってるよ。幼なじみってそういうもんだろ」
ハヤトは立ち上がり、窓際へ歩いた。
「でもな、今のお前を見てると、あの頃の不安が全部、意味があったって思える。孤独だったからこそ、今、誰かと光を分け合えるんだ。一人で歩いてきた道の先に、誰かが手を差し伸べてくれた。それって、すごく尊いことだろ?」
カズはその背中を見つめながら、胸が熱くなるのを感じた。
「⋯⋯ハヤト」
「ん?」
「お前も、いつか誰かの光になれるよ。気づいてないだけで」
ハヤトは肩をすくめた。
「俺? 別に特別な才能もないし、物語も書けない。ただの事務職だぜ?」
「才能なんて、最初からあるもんじゃねえよ」
カズは立ち上がり、自分の机の引き出しを開けた。
中から、一冊の薄いノートを取り出す。
表紙には、昔のハヤトの字で『未来の物語』と書かれている。
「これ、覚えてるか?」
ハヤトは目を見開いた。
「⋯⋯まさか、まだ持ってるのか?」
「小学校のとき、お前が『将来、俺の小説を映画にする』って言って、このノートにラフな脚本を書いてたよな。宇宙人が地球にやってきて、友情で争いを終わらせる話だった。めちゃくちゃな設定だったけど、すごく熱意が伝わってきた」
「⋯⋯照れるな、それ」
ハヤトは照れくさそうに笑ったが、目は少し潤んでいた。
「結局、何もできなかったけどな」
「いや、違う」
カズはノートを彼の手に渡した。
「お前は、今、ここに来てくれた。オレたちの物語に、また一ページを足しに来た。それだけで、十分に光なんだよ。誰かの記憶に残る存在って、そう簡単になれるもんじゃない」
ハヤトはノートを両手で握りしめた。
「⋯⋯マサシも、大変だったろうな。お前の世界に足を踏み入れて、それを別の形で伝えるって、並大抵のことじゃねえよ」
「ああ、本当に⋯⋯」
カズは窓の外を見た。
遠くの空に、朝の光が差し始めている。
「最初は、オレも抵抗があった。自分の物語を、他人が描いていいのかって。でも、マサシは違った。彼は『カズの世界』をコピーしたんじゃなくて、『カズの隣にいる世界』を描いた。そこには、オレが気づかなかった色や音があった。まるで、オレの心の裏側を彼だけが見透かしてたみたいに」
「⋯⋯それって、信頼ってやつだな」
ハヤトは静かに言った。
「お前が、自分の核を晒しても、彼はそれを歪めなかった。逆に、もっと美しくした。そんな関係、そうそうできるもんじゃねえ」
「ああ。だから、オレも彼に返したかった。彼の生き方を、言葉で残したかった。『君が残した朝』は、マサシへのラブレターみたいなもんだよ」
ふと、玄関のドアが開く音がした。
マサシが、買い物袋を抱えて帰ってきた。
「カズ、卵と⋯⋯あれ? ハヤト?」
彼は驚いたように目を丸くする。
「おう、久しぶりだな、マサシ」
ハヤトは立ち上がり、にっこり笑った。
「アニメ、めちゃくちゃかっこよかったぞ。特にオープニング、鳥肌立った」
マサシは照れくさそうに頬を赤らめ、袋をキッチンに置きながら言った。
「⋯⋯ありがとうございます。カズの言葉に、どれだけ救われたかわかんないんで⋯⋯」
「お互いさまだろ」
カズが笑いながら言う。
「お前がいなかったら、オレは今も、一人で原稿に向き合って、『これでいいのか』って悩んでたよ」
マサシは静かに微笑んだ。
「でも、ハヤトが来てくれて、なんだか⋯⋯全部がつながった気がするな。昔のことと、今のことが」
「そういえば」
ハヤトが思い出したように言った。
「昔、三人で屋上で星を見ながら、『将来、俺たちで何かを作ろう』って話したよな。小説、絵、音楽⋯⋯全部、一つの物語にするって」
カズとマサシは顔を見合わせ、同時に笑った。
「⋯⋯今、それ、実現してるかもしれないな」
マサシが言った。
「ああ」
カズはうなずいた。
「塔の向こうに昇る太陽も、影と手をつなぐ少年と少女も、全部、オレたちの記憶から生まれた。そして、これからも、誰かの心に届いていく」
ハヤトは、ふと空を見上げた。
「⋯⋯次は、俺も何か、参加させてくれよ。たとえ小さなことでもいい。お前たちの物語に、ちょっとだけでも、名前を載せさせてくれ」
カズは彼の肩を軽く叩いた。
「当たり前だ。オレたちの物語は、一人じゃ書けない。だから、これからも、誰かの声を聞きながら、書いていくんだ」
その夜、三人は屋上に上がった。
街の灯りが星のようにきらめき、遠くの空には、また一つ、流れ星が走った。
「⋯⋯願い事、言ったか?」
マサシが聞く。
「ああ」
カズは微笑んだ。
「『これからも、誰かの朝を、灯し続けられますように』って」
ハヤトは笑いながら言った。
「俺は『また、こんな風に、三人で話せますように』ってね」
風が、そっと彼らの髪をかきあげた。
どこか遠くで、アニメのテーマ曲が流れるような気がした。
マサシの声と、カズの言葉が、重なり合うように。
ふと、カズはポケットに手を入れ、あのペンを取り出した。
インクのにじみが、月明かりにきらりと光った。
「⋯⋯次は、ハヤトの番だよ」
彼はそう言って、ペンを差し出した。
「お前の物語も、ここから始まるかもしれない」
ハヤトは一瞬戸惑ったが、やがて、静かにペンを受け取った。
「⋯⋯わかった。じゃあ、俺も、書いてみるか」
星の下で、三つの影が並ぶ。
塔の向こうに、また一つ、朝が昇ろうとしていた。
終わらない物語は、
今も、誰かの手で、
書き続けられている。
マンションに住み始めてから半年が過ぎた頃、ハヤトがマンションを訪ねてきた。
「よっ、久し振り」
ドアを開けると、ハヤトが笑いながら声をかけてきた。
「ほんと、久し振りだね。まぁ、入って」
そう言って、中に招き入れる。
「マサシとは上手くいってるのか?」
そう言うハヤトに、カズは、
「まぁね」
と、軽く答える。
「へぇ、キレイにしてるんだな」
「そりゃあ、そうだろ。オレは昔からゴチャゴチャしてるのは嫌なんだから」
「そういや、そうだったな」
ハヤトがそう言って微笑む。
「それはそうと、いくら幼なじみでいつでも会えるからといっても、半年も訪ねて来ないとは思わなかったよ」
ハヤトがソファに腰を下ろすと、カズはキッチンで淹れたてのコーヒーを二つ、テーブルに置いた。
カップが温もりを伝えるように、部屋に静かな安らぎが満ちていく。
「半年も来なかったのは、こっちの都合もあるけどな」
ハヤトはカップに口をつけながら、窓の外の空を見上げた。
「お前らが、ようやく自分たちのリズムを見つけた頃だろ。邪魔したくなかっただけだよ。それに⋯⋯」
彼は少し間を置いて、カズの顔を見つめた。
「お前の小説、全部読んだ。『君が残した朝』も、それまでの連載も。マサシのアニメも見た。⋯⋯正直、泣いたよ」
カズは驚いたように眉を上げた。
「お前が? 泣くなんて、初めて聞いたな」
「バカ言うな」
ハヤトは苦笑いしながら頭をかいた。
「昔から、お前の文章には、ズルいほど心を突かれるところがあった。でも、今回は違った。ただの物語じゃない。お前とマサシの、呼吸そのものみたいだった」
カズは黙ってコーヒーをすすった。
熱さが喉を通り、胸の奥にじんわりと広がる。
「⋯⋯オレも、書いている最中に、何度もペンを置いたよ。マサシのことを書くって、想像以上に重かった。尊敬してるし、怖かったんだ。この物語が、彼の期待に応えられるかどうかって」
「でも、読んだ人間は、全員がその重さをちゃんと感じ取ったよ」
ハヤトは真剣な目で言った。
「あの物語は、『遺作を完成させる』って話じゃなくて、『誰かの続きを書く』って話だろ? マサシがお前の物語をアニメにして、今度はお前がマサシの生き様を小説にした。まるで、光が手渡されていくみたいだ」
カズは静かにうなずいた。
「⋯⋯そう、まさにそれだ。オレたちは、お互いの物語を『継ぐ』ことで、自分たちの物語を生きてる。一人じゃ書けなかった部分を、誰かが代わりに描いてくれる。それが、今のオレたちなんだ」
ハヤトはしばらく黙って、テーブルの上に置かれたマグカップを見つめた。
欠けた縁のカップと、新しいそれ。
「⋯⋯あのペン、まだ使ってんのか?」
「ああ。机の引き出しの一番上にある。使わない日はないよ」
「そうか⋯⋯」
ハヤトは小さく笑った。
「昔、お前が一人で部屋にこもって、原稿用紙に文字を並べてるのを見て、正直、寂しいって思ったよ。誰にも見せない原稿を、何百枚と積み上げて。『この努力、誰かに届いてるのかな』って、いつも心配してた」
カズは少し驚いた。
「⋯⋯そんなこと、言ってなかったろ?」
「言わなくても、わかってるよ。幼なじみってそういうもんだろ」
ハヤトは立ち上がり、窓際へ歩いた。
「でもな、今のお前を見てると、あの頃の不安が全部、意味があったって思える。孤独だったからこそ、今、誰かと光を分け合えるんだ。一人で歩いてきた道の先に、誰かが手を差し伸べてくれた。それって、すごく尊いことだろ?」
カズはその背中を見つめながら、胸が熱くなるのを感じた。
「⋯⋯ハヤト」
「ん?」
「お前も、いつか誰かの光になれるよ。気づいてないだけで」
ハヤトは肩をすくめた。
「俺? 別に特別な才能もないし、物語も書けない。ただの事務職だぜ?」
「才能なんて、最初からあるもんじゃねえよ」
カズは立ち上がり、自分の机の引き出しを開けた。
中から、一冊の薄いノートを取り出す。
表紙には、昔のハヤトの字で『未来の物語』と書かれている。
「これ、覚えてるか?」
ハヤトは目を見開いた。
「⋯⋯まさか、まだ持ってるのか?」
「小学校のとき、お前が『将来、俺の小説を映画にする』って言って、このノートにラフな脚本を書いてたよな。宇宙人が地球にやってきて、友情で争いを終わらせる話だった。めちゃくちゃな設定だったけど、すごく熱意が伝わってきた」
「⋯⋯照れるな、それ」
ハヤトは照れくさそうに笑ったが、目は少し潤んでいた。
「結局、何もできなかったけどな」
「いや、違う」
カズはノートを彼の手に渡した。
「お前は、今、ここに来てくれた。オレたちの物語に、また一ページを足しに来た。それだけで、十分に光なんだよ。誰かの記憶に残る存在って、そう簡単になれるもんじゃない」
ハヤトはノートを両手で握りしめた。
「⋯⋯マサシも、大変だったろうな。お前の世界に足を踏み入れて、それを別の形で伝えるって、並大抵のことじゃねえよ」
「ああ、本当に⋯⋯」
カズは窓の外を見た。
遠くの空に、朝の光が差し始めている。
「最初は、オレも抵抗があった。自分の物語を、他人が描いていいのかって。でも、マサシは違った。彼は『カズの世界』をコピーしたんじゃなくて、『カズの隣にいる世界』を描いた。そこには、オレが気づかなかった色や音があった。まるで、オレの心の裏側を彼だけが見透かしてたみたいに」
「⋯⋯それって、信頼ってやつだな」
ハヤトは静かに言った。
「お前が、自分の核を晒しても、彼はそれを歪めなかった。逆に、もっと美しくした。そんな関係、そうそうできるもんじゃねえ」
「ああ。だから、オレも彼に返したかった。彼の生き方を、言葉で残したかった。『君が残した朝』は、マサシへのラブレターみたいなもんだよ」
ふと、玄関のドアが開く音がした。
マサシが、買い物袋を抱えて帰ってきた。
「カズ、卵と⋯⋯あれ? ハヤト?」
彼は驚いたように目を丸くする。
「おう、久しぶりだな、マサシ」
ハヤトは立ち上がり、にっこり笑った。
「アニメ、めちゃくちゃかっこよかったぞ。特にオープニング、鳥肌立った」
マサシは照れくさそうに頬を赤らめ、袋をキッチンに置きながら言った。
「⋯⋯ありがとうございます。カズの言葉に、どれだけ救われたかわかんないんで⋯⋯」
「お互いさまだろ」
カズが笑いながら言う。
「お前がいなかったら、オレは今も、一人で原稿に向き合って、『これでいいのか』って悩んでたよ」
マサシは静かに微笑んだ。
「でも、ハヤトが来てくれて、なんだか⋯⋯全部がつながった気がするな。昔のことと、今のことが」
「そういえば」
ハヤトが思い出したように言った。
「昔、三人で屋上で星を見ながら、『将来、俺たちで何かを作ろう』って話したよな。小説、絵、音楽⋯⋯全部、一つの物語にするって」
カズとマサシは顔を見合わせ、同時に笑った。
「⋯⋯今、それ、実現してるかもしれないな」
マサシが言った。
「ああ」
カズはうなずいた。
「塔の向こうに昇る太陽も、影と手をつなぐ少年と少女も、全部、オレたちの記憶から生まれた。そして、これからも、誰かの心に届いていく」
ハヤトは、ふと空を見上げた。
「⋯⋯次は、俺も何か、参加させてくれよ。たとえ小さなことでもいい。お前たちの物語に、ちょっとだけでも、名前を載せさせてくれ」
カズは彼の肩を軽く叩いた。
「当たり前だ。オレたちの物語は、一人じゃ書けない。だから、これからも、誰かの声を聞きながら、書いていくんだ」
その夜、三人は屋上に上がった。
街の灯りが星のようにきらめき、遠くの空には、また一つ、流れ星が走った。
「⋯⋯願い事、言ったか?」
マサシが聞く。
「ああ」
カズは微笑んだ。
「『これからも、誰かの朝を、灯し続けられますように』って」
ハヤトは笑いながら言った。
「俺は『また、こんな風に、三人で話せますように』ってね」
風が、そっと彼らの髪をかきあげた。
どこか遠くで、アニメのテーマ曲が流れるような気がした。
マサシの声と、カズの言葉が、重なり合うように。
ふと、カズはポケットに手を入れ、あのペンを取り出した。
インクのにじみが、月明かりにきらりと光った。
「⋯⋯次は、ハヤトの番だよ」
彼はそう言って、ペンを差し出した。
「お前の物語も、ここから始まるかもしれない」
ハヤトは一瞬戸惑ったが、やがて、静かにペンを受け取った。
「⋯⋯わかった。じゃあ、俺も、書いてみるか」
星の下で、三つの影が並ぶ。
塔の向こうに、また一つ、朝が昇ろうとしていた。
終わらない物語は、
今も、誰かの手で、
書き続けられている。
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