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マサシの誕生日
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### マサシの誕生日
十二月の初旬、冷たい風が窓の隙間から忍び込むような朝だった。
空はまだ薄暗く、街灯の光が霜に覆われた地面に淡く反射している。
カズは台所に立ち、オーブンの中でじっくりと焼かれるチョコレートケーキの香りに鼻をひくつかせながら、時計を見上げた。
「あと三十分⋯⋯マサシが起きるまでには冷まして、デコレーションまで終わらせないと」
カズはふと、ハヤトの顔を思い出した。
彼は今朝早くから起きてくれて、ケーキの準備を手伝ってくれた。
カズが料理や掃除、家事全般に長けているのに対し、ハヤトはといえば、鍋を焦がすのが得意なほどだ。
それでも、今日はマサシの誕生日。
二人とも、特別な一日にしようと気合いを入れていた。
「おい、ハヤト。今日はマサシの誕生パーティーをするぞ」
カズはハヤトの耳元にそっと囁いた。
ハヤトはソファに座って新聞を広げていたが、その声に顔を上げた。
「あ、マジか。今日だったよな。てっきり来週かと思ってたわ」
「忘れるなよ。27歳だぞ、マサシも。人生の折り返し地点だ」
ハヤトは苦笑いしながら言った。
「あいつもようやく27歳か。何も年の終わりが近づいたこんな時期に産まれなくてもいいのにな」
カズは肩をすくめた。
「イエス・キリストだって12月25日に産まれてるだろ。年の瀬とかそんなものは産まれるのに関係ない。むしろ、イエス・キリストの生誕日に近い分だけ才能があるかも知れないだろ?」
「ははは、そりゃそうかもな」
ハヤトが笑いながら応える。
「でも、マサシが救世主だったら、俺たちの税金も安くなるかな?」
「だったら、今度の連載で税金対策の話でも描いてもらおうか」
二人は笑い合った。
そのとき、廊下から小さな足音が聞こえた。
「おはよう⋯⋯」
まだ眠そうな目をこすりながら、マサシがリビングの扉を開けた。
髪は寝ぐせでふわふわと立ち上がり、パジャマの袖をずるずると引きずっている。
カズの胸が、いつも通り、温かく締め付けられる。
「おはよう、マサシ。今日はゆっくりしてていいよ」
「ん⋯⋯でも、連載の原稿、今日中に⋯⋯」
「今日はお休みだ」
カズは立ち上がり、マサシの肩にそっと手を置いた。
「今日はおまえの日だから。ケーキ焼いてるから、ちょっとソファで寝てて」
マサシはきょとんとした顔でカズを見た。
「ケーキ? なんで?」
「なんでって⋯⋯今日は誕生日だろ?」
「あ⋯⋯そうか」
マサシは小さく笑った。
その笑みは、どこか遠くを見ているようで、カズは少し胸が痛んだ。
彼は幼い頃、誕生日なんて祝われた記憶はない。
むしろ、その日が来るたびに、親の怒号と暴力が増したという。
名前も「マサシ」というのは、カズとハヤトが初めて会ったときの名前だった。
本名はもう、彼自身が変えてしまっている。
「今日は、おまえだけの日だよ」
カズの声は優しく、マサシはその言葉に頷いた。
「ありがと⋯⋯」
ハヤトが立ち上がり、マサシの頭を軽く撫でた。
「おめでとう、マサシ。今年もまた、俺たちの宝物が一つ年をとったな」
「宝物って⋯⋯照れるじゃん」
「照れるなよ。事実だろ。おまえの漫画、最近の連載、俺の小説の三倍売れてるぞ? 売れっ子作家のカズより人気あるじゃん」
「いや、カズさんは売れっ子だろ? 俺なんか⋯⋯」
「謙遜するなよ。おまえの『星屑のリフレイン』、俺も毎週読んでるぞ。最終話、泣いたわ」
マサシは目を丸くした。
「え、マジで?」
「マジだよ。特に、主人公が過去の自分と和解するシーン。あれ、おまえの経験を投影してるだろ?」
マサシは一瞬、言葉を失った。
カズはそっと目配せでハヤトに「やめろ」と合図した。
ハヤトも気づいて、口を押さえた。
「⋯⋯まあ、似たような気持ちはあるかもな」
マサシはそう言って、ソファに座った。
カズは台所に戻り、オーブンからケーキを取り出す。
表面はきつね色に焼き上がり、ふんわりと香ばしい匂いが部屋中に広がる。
生クリームとチョコレートでデコレーションを施し、真ん中に「Happy 27th Birthday, Masashi」と書いた。
「できた!」
「おー、すげえ。プロ並みじゃん」
ハヤトが感心したように見つめる。
「家事は俺の特技だからな。あとは、マサシが気づかないように飾り付けを終わらせないと」
二人はそっとリビングの電気を消し、キャンドルを用意し、プレゼントをテーブルに並べた。ハヤトはスマホでマサシの好きな曲を流し、カズはケーキの上に27本のキャンドルを立てた。
「準備OK。ハヤト、マサシを誘ってきてくれ」
「了解」
数分後、ハヤトがマサシを連れて戻ってきた。
「ちょっと、カズが何か用があるってさ」
「ん? カズ?」
マサシが台所に向かおうとしたそのとき――。
「3、2、1⋯⋯ライト!」
カズがスイッチを入れ、部屋が明るくなると同時に、キャンドルが灯されたケーキがテーブルの中央に置かれていた。
バルーンやリボンが彩られ、プレゼントが並ぶ。
「ハッピーバースデー!!」
カズとハヤトの声が重なり、マサシは立ち尽くした。
「え⋯⋯これ、全部⋯⋯?」
「ああ、おまえのためだよ」
カズは微笑みながらケーキを前に出し、
「目を閉じて、願い事をして」
マサシはゆっくりと目を閉じた。
その顔は、どこか遠くを見つめるようで、静かに震えていた。
――今日、また、誰かに祝ってもらえた。
――誰かに、生きていてほしいと言われた。
――こんな日が来るなんて、思ってもみなかった。
彼の心の中で、幼い頃の孤独な夜が、少しずつ溶けていく。
「⋯⋯願い事、終わった?」
「うん⋯⋯ありがとう、カズ、ハヤト」
マサシは目を開け、涙を浮かべながら笑った。
「何を願った?」
「⋯⋯言ったら叶わないだろ?」
「まあ、そうだけどさ」
三人は笑い合った。
カズがケーキを切り、ハヤトがコーヒーを淹れる。
マサシは最初は遠慮がちにフォークを持ち、一口食べた瞬間、目を見開いた。
「うまい⋯⋯! カズ、これ、本当にプロ級だよ!」
「まあ、毎日おまえのご飯作ってるんだ。味には自信あるよ」
「俺、明日からカズさんにプロポーズするわ」
「やめろ、ハヤト。こっちは既に恋人がいるんだから」
「あー、そうだった。マサシ、お前、幸せ者だな」
マサシは照れくさそうに笑った。
その笑顔は、まるで冬の終わりに差し込む陽のようだった。
プレゼントの時間になり、ハヤトが最初に渡した。
「よし、俺からだ。好きかどうかは知らんが、きっと役に立つはず」
包みを開けると、それは――高級なドローイングタブレットだった。
「えっ⋯⋯これ、最新モデルじゃん!」
「お前、今使ってるの、三年物だろ? 連載が忙しくなる前に、新しいのを渡しておきたかったんだよ」
マサシは言葉を失い、ハヤトの顔を見つめた。
「⋯⋯ありがとう。本当に、ありがとう」
「気にすんな。お前のマンガが、また誰かを救うかもしれないだろ? そのためにあるんだよ、これ」
カズの番になった。
彼が渡したのは、小さな木箱。
開けると、中に一本の万年筆が入っていた。
インクは深紅色で、ペン先には「M」の刻印。
「これ⋯⋯?」
「君が初めて漫画を描いたとき、鉛筆しか持っていなかったって言ってたよな。でも、これからは――自分の言葉を、もっと自由に、美しく書いてほしいと思って」
マサシは万年筆を手に取り、その重みを感じた。
「カズ⋯⋯」
「好きになってくれて、ありがとう。今日も、明日も、その先も、おまえと過ごせることが、オレの一番の幸せだよ」
マサシはその場に座り込んだまま、静かに泣いた。
ハヤトはそっと背中を叩き、「いい泣き顔だな」と言った。
その後、三人は語り明かした。
高校時代の思い出、マサシが初めて漫画を描いた日のこと、カズが作家デビューしたときの話、ハヤトが初めてマサシの作品を読んだときの感動――。
「なあ、マサシ」
ハヤトがふと口を開いた。
「ん?」
「お前、もし生まれ変わるなら、また同じ人生、選びたいか?」
マサシは少し考えて、言った。
「⋯⋯全部は、選びたくないよ。でも、あの苦しみがあったからこそ、今の俺がある。カズと出会えたのも、ハヤトと出会えたのも、全部、あの頃の自分があってのことだから。だから――もし生まれ変わるなら、また、君たちに出会える人生を、選びたい」
カズはその言葉に、胸が熱くなった。
「オレもだよ。マサシと出会えたこと――それが、オレの人生で一番の奇跡だ」
夜が更け、外は雪が静かに降り始めた。
窓の外、白く染まる街並みを眺めながら、マサシはカズの肩にもたれかかった。
「⋯⋯今日、すごく幸せだった」
「これからも、毎日、こんな風に祝ってあげるよ」
「うん⋯⋯ありがとう」
その夜、マサシは初めて、自分の誕生日を「祝福」として迎えた。
過去の影はまだ完全には消えていないが、今は、その影を照らす光がある。
――カズと、ハヤトという、かけがえのない光が。
そしてカズは心に誓った。
これからも、この笑顔を永遠に守り続けると。
十二月の初旬、冷たい風が窓の隙間から忍び込むような朝だった。
空はまだ薄暗く、街灯の光が霜に覆われた地面に淡く反射している。
カズは台所に立ち、オーブンの中でじっくりと焼かれるチョコレートケーキの香りに鼻をひくつかせながら、時計を見上げた。
「あと三十分⋯⋯マサシが起きるまでには冷まして、デコレーションまで終わらせないと」
カズはふと、ハヤトの顔を思い出した。
彼は今朝早くから起きてくれて、ケーキの準備を手伝ってくれた。
カズが料理や掃除、家事全般に長けているのに対し、ハヤトはといえば、鍋を焦がすのが得意なほどだ。
それでも、今日はマサシの誕生日。
二人とも、特別な一日にしようと気合いを入れていた。
「おい、ハヤト。今日はマサシの誕生パーティーをするぞ」
カズはハヤトの耳元にそっと囁いた。
ハヤトはソファに座って新聞を広げていたが、その声に顔を上げた。
「あ、マジか。今日だったよな。てっきり来週かと思ってたわ」
「忘れるなよ。27歳だぞ、マサシも。人生の折り返し地点だ」
ハヤトは苦笑いしながら言った。
「あいつもようやく27歳か。何も年の終わりが近づいたこんな時期に産まれなくてもいいのにな」
カズは肩をすくめた。
「イエス・キリストだって12月25日に産まれてるだろ。年の瀬とかそんなものは産まれるのに関係ない。むしろ、イエス・キリストの生誕日に近い分だけ才能があるかも知れないだろ?」
「ははは、そりゃそうかもな」
ハヤトが笑いながら応える。
「でも、マサシが救世主だったら、俺たちの税金も安くなるかな?」
「だったら、今度の連載で税金対策の話でも描いてもらおうか」
二人は笑い合った。
そのとき、廊下から小さな足音が聞こえた。
「おはよう⋯⋯」
まだ眠そうな目をこすりながら、マサシがリビングの扉を開けた。
髪は寝ぐせでふわふわと立ち上がり、パジャマの袖をずるずると引きずっている。
カズの胸が、いつも通り、温かく締め付けられる。
「おはよう、マサシ。今日はゆっくりしてていいよ」
「ん⋯⋯でも、連載の原稿、今日中に⋯⋯」
「今日はお休みだ」
カズは立ち上がり、マサシの肩にそっと手を置いた。
「今日はおまえの日だから。ケーキ焼いてるから、ちょっとソファで寝てて」
マサシはきょとんとした顔でカズを見た。
「ケーキ? なんで?」
「なんでって⋯⋯今日は誕生日だろ?」
「あ⋯⋯そうか」
マサシは小さく笑った。
その笑みは、どこか遠くを見ているようで、カズは少し胸が痛んだ。
彼は幼い頃、誕生日なんて祝われた記憶はない。
むしろ、その日が来るたびに、親の怒号と暴力が増したという。
名前も「マサシ」というのは、カズとハヤトが初めて会ったときの名前だった。
本名はもう、彼自身が変えてしまっている。
「今日は、おまえだけの日だよ」
カズの声は優しく、マサシはその言葉に頷いた。
「ありがと⋯⋯」
ハヤトが立ち上がり、マサシの頭を軽く撫でた。
「おめでとう、マサシ。今年もまた、俺たちの宝物が一つ年をとったな」
「宝物って⋯⋯照れるじゃん」
「照れるなよ。事実だろ。おまえの漫画、最近の連載、俺の小説の三倍売れてるぞ? 売れっ子作家のカズより人気あるじゃん」
「いや、カズさんは売れっ子だろ? 俺なんか⋯⋯」
「謙遜するなよ。おまえの『星屑のリフレイン』、俺も毎週読んでるぞ。最終話、泣いたわ」
マサシは目を丸くした。
「え、マジで?」
「マジだよ。特に、主人公が過去の自分と和解するシーン。あれ、おまえの経験を投影してるだろ?」
マサシは一瞬、言葉を失った。
カズはそっと目配せでハヤトに「やめろ」と合図した。
ハヤトも気づいて、口を押さえた。
「⋯⋯まあ、似たような気持ちはあるかもな」
マサシはそう言って、ソファに座った。
カズは台所に戻り、オーブンからケーキを取り出す。
表面はきつね色に焼き上がり、ふんわりと香ばしい匂いが部屋中に広がる。
生クリームとチョコレートでデコレーションを施し、真ん中に「Happy 27th Birthday, Masashi」と書いた。
「できた!」
「おー、すげえ。プロ並みじゃん」
ハヤトが感心したように見つめる。
「家事は俺の特技だからな。あとは、マサシが気づかないように飾り付けを終わらせないと」
二人はそっとリビングの電気を消し、キャンドルを用意し、プレゼントをテーブルに並べた。ハヤトはスマホでマサシの好きな曲を流し、カズはケーキの上に27本のキャンドルを立てた。
「準備OK。ハヤト、マサシを誘ってきてくれ」
「了解」
数分後、ハヤトがマサシを連れて戻ってきた。
「ちょっと、カズが何か用があるってさ」
「ん? カズ?」
マサシが台所に向かおうとしたそのとき――。
「3、2、1⋯⋯ライト!」
カズがスイッチを入れ、部屋が明るくなると同時に、キャンドルが灯されたケーキがテーブルの中央に置かれていた。
バルーンやリボンが彩られ、プレゼントが並ぶ。
「ハッピーバースデー!!」
カズとハヤトの声が重なり、マサシは立ち尽くした。
「え⋯⋯これ、全部⋯⋯?」
「ああ、おまえのためだよ」
カズは微笑みながらケーキを前に出し、
「目を閉じて、願い事をして」
マサシはゆっくりと目を閉じた。
その顔は、どこか遠くを見つめるようで、静かに震えていた。
――今日、また、誰かに祝ってもらえた。
――誰かに、生きていてほしいと言われた。
――こんな日が来るなんて、思ってもみなかった。
彼の心の中で、幼い頃の孤独な夜が、少しずつ溶けていく。
「⋯⋯願い事、終わった?」
「うん⋯⋯ありがとう、カズ、ハヤト」
マサシは目を開け、涙を浮かべながら笑った。
「何を願った?」
「⋯⋯言ったら叶わないだろ?」
「まあ、そうだけどさ」
三人は笑い合った。
カズがケーキを切り、ハヤトがコーヒーを淹れる。
マサシは最初は遠慮がちにフォークを持ち、一口食べた瞬間、目を見開いた。
「うまい⋯⋯! カズ、これ、本当にプロ級だよ!」
「まあ、毎日おまえのご飯作ってるんだ。味には自信あるよ」
「俺、明日からカズさんにプロポーズするわ」
「やめろ、ハヤト。こっちは既に恋人がいるんだから」
「あー、そうだった。マサシ、お前、幸せ者だな」
マサシは照れくさそうに笑った。
その笑顔は、まるで冬の終わりに差し込む陽のようだった。
プレゼントの時間になり、ハヤトが最初に渡した。
「よし、俺からだ。好きかどうかは知らんが、きっと役に立つはず」
包みを開けると、それは――高級なドローイングタブレットだった。
「えっ⋯⋯これ、最新モデルじゃん!」
「お前、今使ってるの、三年物だろ? 連載が忙しくなる前に、新しいのを渡しておきたかったんだよ」
マサシは言葉を失い、ハヤトの顔を見つめた。
「⋯⋯ありがとう。本当に、ありがとう」
「気にすんな。お前のマンガが、また誰かを救うかもしれないだろ? そのためにあるんだよ、これ」
カズの番になった。
彼が渡したのは、小さな木箱。
開けると、中に一本の万年筆が入っていた。
インクは深紅色で、ペン先には「M」の刻印。
「これ⋯⋯?」
「君が初めて漫画を描いたとき、鉛筆しか持っていなかったって言ってたよな。でも、これからは――自分の言葉を、もっと自由に、美しく書いてほしいと思って」
マサシは万年筆を手に取り、その重みを感じた。
「カズ⋯⋯」
「好きになってくれて、ありがとう。今日も、明日も、その先も、おまえと過ごせることが、オレの一番の幸せだよ」
マサシはその場に座り込んだまま、静かに泣いた。
ハヤトはそっと背中を叩き、「いい泣き顔だな」と言った。
その後、三人は語り明かした。
高校時代の思い出、マサシが初めて漫画を描いた日のこと、カズが作家デビューしたときの話、ハヤトが初めてマサシの作品を読んだときの感動――。
「なあ、マサシ」
ハヤトがふと口を開いた。
「ん?」
「お前、もし生まれ変わるなら、また同じ人生、選びたいか?」
マサシは少し考えて、言った。
「⋯⋯全部は、選びたくないよ。でも、あの苦しみがあったからこそ、今の俺がある。カズと出会えたのも、ハヤトと出会えたのも、全部、あの頃の自分があってのことだから。だから――もし生まれ変わるなら、また、君たちに出会える人生を、選びたい」
カズはその言葉に、胸が熱くなった。
「オレもだよ。マサシと出会えたこと――それが、オレの人生で一番の奇跡だ」
夜が更け、外は雪が静かに降り始めた。
窓の外、白く染まる街並みを眺めながら、マサシはカズの肩にもたれかかった。
「⋯⋯今日、すごく幸せだった」
「これからも、毎日、こんな風に祝ってあげるよ」
「うん⋯⋯ありがとう」
その夜、マサシは初めて、自分の誕生日を「祝福」として迎えた。
過去の影はまだ完全には消えていないが、今は、その影を照らす光がある。
――カズと、ハヤトという、かけがえのない光が。
そしてカズは心に誓った。
これからも、この笑顔を永遠に守り続けると。
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