9 / 63
(9)初の対峙
しおりを挟む
ポーションは一人五本しか持ってきていない。
イリヤに荷物は持たせっぱなしなのだが……その貴重な一本を、本丸との対戦前に消費してしまう事に苛立ちが止まらない。
「おそらくここからがダンジョンの本番だろう。気を引き締めたい所だが……フン」
見当違いの事を言っているグレイブの視線の先には、倒れているイリヤ。
この時点で残りの三人は、既にグレイブにとってイリヤは無用の長物に成り下がった事を確信した。
しかし、この場で見殺しにしては国家の安全のために魔王を討ちとる際の生贄にはできないし、道中の手間も自らに降りかかってくる事もまた理解しているので、グレイブ達はこのまま休憩する事にした。
「こいつが目覚めたらすぐに出発だ」
グレイブの予想とは裏腹に、イリヤはその日には目を覚ます事は無かったのだ。
そのおかげで再び同じような魔物の群れにこの場で襲われて、再度ポーションを消費してしまったグレイブ達は、あまりの怒りに、強制的にイリヤは目覚めさせられて下層に向かって進んでいた。
ある程度魔力も回復したイリヤ。
城下町の防御魔法を掛けたい所だったが、現場に行かなければ魔法を構築できないので、その分の魔力を温存できる事になっていた。
その後の勇者パーティーは、自らは認識できないイリヤの防御魔法によって再び無双状態で階層を攻略する事が出来ていたのだが、もちろん彼らはこう思っていた。
『あの時は、無意識下で邪魔者が気になって本気が出せていなかったのだろうな……』
勇者一行を観察している魔王達。
「やはりあの娘、危険だ!」
「モラル様。あいつらがここに近づいてくるのを待たねーで、俺達が出張った方がよさそうじゃねーか?」
「そうね。この下層には魔族の民が住んでいますから危険に晒してしまうし……正直、まさか、ここまでの力とは思ってもいなかったわ」
「この映像を見る限り、そなた達の言う通りだろうな。わらわも出よう。民に危険が及ぶ事は避けたいしの」
最下層の部屋のモニターに映し出されている未だ快進撃を続けている勇者パーティーを見ながら、魔王モラル、そして三傑のクロック、バケット、シリアナは勇者パーティーの元に自ら出撃する事を決めた。
この会話の通り、ダンジョン最下層の少し上の階層には魔族の民が普通に生活をしている為、このまま勇者パーティーが進撃してくれば民が住む階層を破壊されかねないと危惧した為の決断だ。
その階層に辿り着くまでにはまだまだ時間が必要なのだが、脅威は早めに対処するべきだと言う判断になった。
しかし、最も危険と認識しているイリヤは再び疲労困憊の様相を呈している。
いくら王都の広大な土地に対する魔法行使が無くなったとは言え、相変わらず睡眠が取れない状況に追いやられている上襲い掛かってくる魔物の攻撃は苛烈になっているので、彼等に行使している魔法の維持に膨大な魔力を使用し続ける羽目になっている。
「では行くぞ」
「「「はっ!!!」」」
最大の脅威であるイリヤの状況を確認し……今この時点で最大のチャンスが訪れていると考え、魔王モラル一行は浅層へ転移した。
「むっ。気を付けろ。あいつらは今までの魔物とは違う」
グレイブが、突然視界の先に現れた四人を見て他の三人に注意を促す。
もちろん、その言葉はイリヤには向けられていない。
勇者グレイブの視界に映り込んだ者達は、今迄出てきたどの魔物と比べても一線を画す力を曝け出しており、なおかつ見た目は人族と瓜二つ。
これで警戒するなと言う方が無理と言うものであり、当然三人とイリヤも警戒している。
「その方ら、わらわの住居に無断で押し入る程度は見逃してやっていたのだが、どうやらそれ以上の事をしようとしているようではないか。わらわは魔族の、このダンジョンの長として、民を守る義務があるのでな。この辺りでご退場願おうか」
「お前は……そうか、お前が魔王か!」
勇者と魔王は表裏一体。互いにその称号を持つ者は何となくわかるのか、見た目幼女であったとしても、グレイブの前にいる存在が魔王であると認識できたのだ。
勇者グレイブが目の前の見た目幼女を魔王と言い切った事、その人物の額には、グレイブが時折自慢するように見せびらかしていた紋章を真逆にしたような紋章が見えるので、三人は目の前の少女が魔王であると断定して警戒態勢を取りつつも、安堵している所もある。
「良いじゃないですかグレイブ。態々向こうから来てくれたのですよ。このチャンスを逃す必要もないでしょう。今日はそれほど魔物を相手にしていない段階なので体力も十分。ここで一気に叩けば、これ以上潜らなくて済みますよ」
「同意」
「ホルドの言う通りだぜ。いつまでもゴールの見えね~行軍に飽き飽きしていた所だ」
これ以上無駄に侵攻する必要が無くなった事に安堵していた。
当然グレイブを含めて全員が臨戦態勢になっているのだが、イリヤだけは少々離れた位置にいる。
イリヤに荷物は持たせっぱなしなのだが……その貴重な一本を、本丸との対戦前に消費してしまう事に苛立ちが止まらない。
「おそらくここからがダンジョンの本番だろう。気を引き締めたい所だが……フン」
見当違いの事を言っているグレイブの視線の先には、倒れているイリヤ。
この時点で残りの三人は、既にグレイブにとってイリヤは無用の長物に成り下がった事を確信した。
しかし、この場で見殺しにしては国家の安全のために魔王を討ちとる際の生贄にはできないし、道中の手間も自らに降りかかってくる事もまた理解しているので、グレイブ達はこのまま休憩する事にした。
「こいつが目覚めたらすぐに出発だ」
グレイブの予想とは裏腹に、イリヤはその日には目を覚ます事は無かったのだ。
そのおかげで再び同じような魔物の群れにこの場で襲われて、再度ポーションを消費してしまったグレイブ達は、あまりの怒りに、強制的にイリヤは目覚めさせられて下層に向かって進んでいた。
ある程度魔力も回復したイリヤ。
城下町の防御魔法を掛けたい所だったが、現場に行かなければ魔法を構築できないので、その分の魔力を温存できる事になっていた。
その後の勇者パーティーは、自らは認識できないイリヤの防御魔法によって再び無双状態で階層を攻略する事が出来ていたのだが、もちろん彼らはこう思っていた。
『あの時は、無意識下で邪魔者が気になって本気が出せていなかったのだろうな……』
勇者一行を観察している魔王達。
「やはりあの娘、危険だ!」
「モラル様。あいつらがここに近づいてくるのを待たねーで、俺達が出張った方がよさそうじゃねーか?」
「そうね。この下層には魔族の民が住んでいますから危険に晒してしまうし……正直、まさか、ここまでの力とは思ってもいなかったわ」
「この映像を見る限り、そなた達の言う通りだろうな。わらわも出よう。民に危険が及ぶ事は避けたいしの」
最下層の部屋のモニターに映し出されている未だ快進撃を続けている勇者パーティーを見ながら、魔王モラル、そして三傑のクロック、バケット、シリアナは勇者パーティーの元に自ら出撃する事を決めた。
この会話の通り、ダンジョン最下層の少し上の階層には魔族の民が普通に生活をしている為、このまま勇者パーティーが進撃してくれば民が住む階層を破壊されかねないと危惧した為の決断だ。
その階層に辿り着くまでにはまだまだ時間が必要なのだが、脅威は早めに対処するべきだと言う判断になった。
しかし、最も危険と認識しているイリヤは再び疲労困憊の様相を呈している。
いくら王都の広大な土地に対する魔法行使が無くなったとは言え、相変わらず睡眠が取れない状況に追いやられている上襲い掛かってくる魔物の攻撃は苛烈になっているので、彼等に行使している魔法の維持に膨大な魔力を使用し続ける羽目になっている。
「では行くぞ」
「「「はっ!!!」」」
最大の脅威であるイリヤの状況を確認し……今この時点で最大のチャンスが訪れていると考え、魔王モラル一行は浅層へ転移した。
「むっ。気を付けろ。あいつらは今までの魔物とは違う」
グレイブが、突然視界の先に現れた四人を見て他の三人に注意を促す。
もちろん、その言葉はイリヤには向けられていない。
勇者グレイブの視界に映り込んだ者達は、今迄出てきたどの魔物と比べても一線を画す力を曝け出しており、なおかつ見た目は人族と瓜二つ。
これで警戒するなと言う方が無理と言うものであり、当然三人とイリヤも警戒している。
「その方ら、わらわの住居に無断で押し入る程度は見逃してやっていたのだが、どうやらそれ以上の事をしようとしているようではないか。わらわは魔族の、このダンジョンの長として、民を守る義務があるのでな。この辺りでご退場願おうか」
「お前は……そうか、お前が魔王か!」
勇者と魔王は表裏一体。互いにその称号を持つ者は何となくわかるのか、見た目幼女であったとしても、グレイブの前にいる存在が魔王であると認識できたのだ。
勇者グレイブが目の前の見た目幼女を魔王と言い切った事、その人物の額には、グレイブが時折自慢するように見せびらかしていた紋章を真逆にしたような紋章が見えるので、三人は目の前の少女が魔王であると断定して警戒態勢を取りつつも、安堵している所もある。
「良いじゃないですかグレイブ。態々向こうから来てくれたのですよ。このチャンスを逃す必要もないでしょう。今日はそれほど魔物を相手にしていない段階なので体力も十分。ここで一気に叩けば、これ以上潜らなくて済みますよ」
「同意」
「ホルドの言う通りだぜ。いつまでもゴールの見えね~行軍に飽き飽きしていた所だ」
これ以上無駄に侵攻する必要が無くなった事に安堵していた。
当然グレイブを含めて全員が臨戦態勢になっているのだが、イリヤだけは少々離れた位置にいる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
122
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる