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(8)真の力
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グレイブ達が認識でいない程に強い力を行使していたイリヤが倒れたのだが、最早お荷物と認識しているので更に悪感情は増幅し続けている。
「チッ。どこまでも迷惑をかける奴だ。とりあえずその辺に転がしておけ」
渋々ながらも自ら荷物を漁り、慣れない手つきで準備をする四人。
当然食事も自分で準備するのだが……誰も料理を始めようとしない。
ついに勇者グレイブが口を開く。
「おい、ミア、ルナ、お前ら料理できないのか?」
「男女差別」
「私は料理には興味がねーからな。戦闘なら得意だぜ?」
「あ、僕も出来ませんから、悪しからず」
ミアやルナだけではなく、賢者のホルドもお手上げだと言うのだ。
そのため、単純に肉を火で焙るだけの料理とも言えない食事を済ませると、いつもの癖で全員さっさと寝てしまった。
そう、誰も見張りを行うことなく……
誰もが、他の誰かがするだろうと言う思いでいたのだ。
そうは言っても、既に強制的に熟練の域に達している最高峰の称号持ち。
たとえ寝ていたとしても、異常があればすぐさま臨戦態勢を取れるほどになっていた。
「まったく、こんな状況でも起きないとは恐れ入る」
グレイブの視線の先には、硬い岩の上に放り投げられたままの状態で寝息を立てているイリヤがいた。
「この女は、その程度なのですよ。先ずは目の前の鬱陶しい魔物を始末しておきましょう」
「先制重要」
「じゃあ行くぜ~」
こうして襲い来る魔物、既に何回か難なく倒している魔物の迎撃に向かったグレイブ達なのだが……
徐々に体の自由が奪われている感覚に襲われる。
いや、実際に動きが遅くなっているのだ。
魔物の攻撃を時折受けており、その時に付与されてしまっている麻痺や毒の影響だ。
称号により最強に近い力と耐性を得ているので即死する事は無いが、それでも数多くお攻撃を受ければ体の動きは悪化し、それによってさらに攻撃を受ける。
「こいつら!」
「これはまずいですね!」
「一旦下がる!」
「私が食いとめてやるぜ!」
体制を立て直すべく、全員が一旦魔物と距離置くために聖盾のルナが勢いよく前面に出る。
「ぐぁ~」
今迄はその勢いのまま魔物を吹き飛ばしていたのだが、逆に一瞬で盾諸共吹き飛ばされてしまったのだ。
未だかつて経験した事の無い苦戦であり、最悪の状況。
「畜生!」
グレイブは、右手の指輪を外すと魔物に向かって投げつけた。
直後に、眩い程の光と共に魔物は一瞬でその存在が無くなった。
「助かった……のか?」
思わず口にした賢者ホルド……そこまで追い詰められていたのだ。
「ああ、あいつらはどこかに転送された。チッ、万が一の時のための俺達の逃走用の魔道具だったんだがな」
忌々しそうにグレイブが吐き捨てる。
実は公爵である父親から、万が一の時のための逃走手段として受け取っていた最高級の魔道具だったのだ。
効果は、現在いる場所よりも上方の何処かにランダムで転移できると言う優れもの。
ダンジョン限定で使えば、安全に上層に移動できると言う物なのだ。
それ故に希少価値があり、公爵とは言え一つしか持っていない家宝であったりする。
その家宝を放出する程に、今回の作戦は公爵家にとっては重要だったのだ。
「使ってしまったものは仕方がない。チッ、このクズのせいで貴重な魔道具を一つ失った」
未だ意識の無いイリヤを足で踏みつける勇者グレイブ。
指輪の効果から、帰還時には苦戦した魔物と再戦する可能性が高いと分かっている事も、グレイブの機嫌を悪化させる原因の一つだ。
「くっそ、あの強さは……」
ふらつきながらも聖盾のルナも戻ってきたが、どう見てもこの状態では連戦できないのは明らかだ。
ここで初めて荷物から回復薬を摂取する一行。
液体である為に、その重さから大量に持ち歩く事は出来ない。
「チッ。どこまでも迷惑をかける奴だ。とりあえずその辺に転がしておけ」
渋々ながらも自ら荷物を漁り、慣れない手つきで準備をする四人。
当然食事も自分で準備するのだが……誰も料理を始めようとしない。
ついに勇者グレイブが口を開く。
「おい、ミア、ルナ、お前ら料理できないのか?」
「男女差別」
「私は料理には興味がねーからな。戦闘なら得意だぜ?」
「あ、僕も出来ませんから、悪しからず」
ミアやルナだけではなく、賢者のホルドもお手上げだと言うのだ。
そのため、単純に肉を火で焙るだけの料理とも言えない食事を済ませると、いつもの癖で全員さっさと寝てしまった。
そう、誰も見張りを行うことなく……
誰もが、他の誰かがするだろうと言う思いでいたのだ。
そうは言っても、既に強制的に熟練の域に達している最高峰の称号持ち。
たとえ寝ていたとしても、異常があればすぐさま臨戦態勢を取れるほどになっていた。
「まったく、こんな状況でも起きないとは恐れ入る」
グレイブの視線の先には、硬い岩の上に放り投げられたままの状態で寝息を立てているイリヤがいた。
「この女は、その程度なのですよ。先ずは目の前の鬱陶しい魔物を始末しておきましょう」
「先制重要」
「じゃあ行くぜ~」
こうして襲い来る魔物、既に何回か難なく倒している魔物の迎撃に向かったグレイブ達なのだが……
徐々に体の自由が奪われている感覚に襲われる。
いや、実際に動きが遅くなっているのだ。
魔物の攻撃を時折受けており、その時に付与されてしまっている麻痺や毒の影響だ。
称号により最強に近い力と耐性を得ているので即死する事は無いが、それでも数多くお攻撃を受ければ体の動きは悪化し、それによってさらに攻撃を受ける。
「こいつら!」
「これはまずいですね!」
「一旦下がる!」
「私が食いとめてやるぜ!」
体制を立て直すべく、全員が一旦魔物と距離置くために聖盾のルナが勢いよく前面に出る。
「ぐぁ~」
今迄はその勢いのまま魔物を吹き飛ばしていたのだが、逆に一瞬で盾諸共吹き飛ばされてしまったのだ。
未だかつて経験した事の無い苦戦であり、最悪の状況。
「畜生!」
グレイブは、右手の指輪を外すと魔物に向かって投げつけた。
直後に、眩い程の光と共に魔物は一瞬でその存在が無くなった。
「助かった……のか?」
思わず口にした賢者ホルド……そこまで追い詰められていたのだ。
「ああ、あいつらはどこかに転送された。チッ、万が一の時のための俺達の逃走用の魔道具だったんだがな」
忌々しそうにグレイブが吐き捨てる。
実は公爵である父親から、万が一の時のための逃走手段として受け取っていた最高級の魔道具だったのだ。
効果は、現在いる場所よりも上方の何処かにランダムで転移できると言う優れもの。
ダンジョン限定で使えば、安全に上層に移動できると言う物なのだ。
それ故に希少価値があり、公爵とは言え一つしか持っていない家宝であったりする。
その家宝を放出する程に、今回の作戦は公爵家にとっては重要だったのだ。
「使ってしまったものは仕方がない。チッ、このクズのせいで貴重な魔道具を一つ失った」
未だ意識の無いイリヤを足で踏みつける勇者グレイブ。
指輪の効果から、帰還時には苦戦した魔物と再戦する可能性が高いと分かっている事も、グレイブの機嫌を悪化させる原因の一つだ。
「くっそ、あの強さは……」
ふらつきながらも聖盾のルナも戻ってきたが、どう見てもこの状態では連戦できないのは明らかだ。
ここで初めて荷物から回復薬を摂取する一行。
液体である為に、その重さから大量に持ち歩く事は出来ない。
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